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隕石学入門: 1. 隕石の「いろは」

 宇宙から降ってくる隕石について、解説しているガイドです。なるべく専門外の方でもわかるように説明してあるので、興味のある方はぜひ読んでみてください!

隕石とは

 Q. そもそも隕石って、なに? 

→ 宇宙空間から地球に飛来した固体物質

 

  一言で表すと宇宙空間から地球に飛来した固体物質のことです。今までに発見されてきた隕石のほとんどは、「小惑星」と呼ばれる直径数百kmくらいの天体の破片だと考えられています(詳しくは次章)。大きさはさまざまで、顕微鏡で観察するμmサイズから、地表に巨大クレーターを残したkmサイズのものまで存在します。最もよく採取される隕石は「石質隕石(せきしついんせき)」と呼ばれ、見た目は地球の石ころとあまり変わりません。しかし、中にはほとんど金属からなる隕石も存在します。

 多くの隕石に共通する特徴として、地球大気圏との摩擦で表面が溶けて形成される溶融殻(ようゆうかく)」と呼ばれる構造が存在します図1-1)。しかし、この構造はすべての隕石に存在するわけではありません。多くの隕石は落下時に高温になって、上空で爆発してしまいます。このため、もともと外側だった破片には溶融殻が存在しますが、内側だった破片には存在しません。溶融殻は隕石を発見する良い目印になりますが、より正確に隕石かどうか判別するためには、専門の研究機関や大学に特別な分析を依頼する必要があります。日本やアメリカ、ヨーロッパにはそれぞれ隕石研究所が存在し、自国の隕石探査プログラム(時には合同で行います)で隕石を集めて保管しています。

 しかし、隕石を集めているのは研究機関だけではありません。一般に「隕石コレクター」と呼ばれる人たちは、自費で隕石を探してコレクションにしたり、一般人や研究者に売ったりします。少し前にNHK宇宙チャンネルコスミックフロントという番組で隕石ハンターの特集が放送されたほどです(密着!隕石ハンターを追え ※現在リンク切れ)。そういった一般のコレクターたちには、一目で隕石とわかる溶融殻付き隕石の方が人気があるみたいです。

 NHKの特集番組や2013年にロシアに落下した隕石など、近年になって一般の人が隕石を目にする機会が増え、「隕石が宇宙から降ってくる石ってことくらい知ってるよ!」という人が多くなってきたかもしれません。しかし、隕石の種類隕石の起源などのことについてはあまり知られていないと思います。それでは、これから「隕石のいろは」について説明していきましょう!

隕石の分類 その1

Q. どんな隕石が存在するの?

大きく分けて「石質・鉄・石鉄」の3つ 

 

 隕石にはたくさんの種類が存在します。隕石が地球で発見されるようになってから、いくつかの分類法が考案されてきました。「石質・鉄・石鉄」は最も簡単な分類です(図1-2)

―石質隕石 

 見た目は道端に転がっている地球の石ころとほとんど変わりません。また、中身も地球の岩石と同じ「ケイ酸塩鉱物」から主に構成されています。しかし、化学組成や組織観察などの詳しい分析を行うと、地球の岩石とは異なることがわかります。今まで発見されている隕石の大部分はこのタイプの隕石です。

―鉄隕石

 名前の通り、99%以上が「鉄とニッケルの合金」からなる隕石です。詳しい起源は明らかになっていませんが、おそらく地球のコアのような部分の破片であると考えられています(詳しくは次章を参照)。石質隕石と違って見た目で隕石と判断できます。人工物かと思ってしまうほどの鉄々しさです

―石鉄隕石

 石質や鉄隕石と比べて非常に稀で、その見た目はとても自然のものとは思えません。写真(図1-2)の黒ずんで見える部分がケイ酸塩鉱物でその周り光沢がある部分が金属鉄です。つまり、石質と鉄隕石が混ざり合った構造をしています。ケイ酸塩鉱物の部分がペリドット(カンラン石)と呼ばれる宝石であることがあり、とても高値で売買される隕石のひとつです。

隕石の分類 その2

Q. 隕石の種類って、たった3つだけ?

実はもっと細かく分類されます

 

 隕石は、大まかに3種類(石・鉄・石鉄)に分類されることを前項で学びました。しかし、この分類は隕石を見た目で分類してるので、専門家たちはあまり使いません。重複する部分もありますが、専門家たちは隕石の化学組成や組織観察などに基づいた別の分類を用います。この項では、様々な隕石のさらに細かい特徴に基づく分類について説明します。

 専門家たちがよく用いる分類法では、全ての隕石は

「Chondrites と Non chondrites」

の2つに分けられます(図1-3

 

 ーChondrites(コンドライト)

 地球に落下してくる隕石のうち9割近くはコンドライトと呼ばれる隕石で、「分類その1」では石質隕石に分類されます。この隕石の最大の特徴は、「コンドルール」と呼ばれる岩石学的組織が隕石中に存在していることです(図1-4)コンドルールは、太陽系の中で最も古い物質の一つで、ほとんどの隕石に形成当初は存在していたと考えられています。つまり、コンドルールを今なお含んでいる隕石(コンドライト)は、太陽系が形成された当時からほとんど姿を変えることなく、宇宙空間に存在していたことになります。このような始原的な隕石のことをコンドライトと呼びます。ただし弱い変成作用は受けており、形成当時の状態を100%保持しているわけではありません。細かい分類として、コンドライトは3つのClassに分類され、さらに15のGroupに分けられます。また変成作用の度合いを表す1 ~ 6までの数字が存在し、それらを合わせるとコンドライトは約40の異なる隕石に分類されます(図1-3)

 

ーNon chondrites(非コンドライト)

  コンドルールを含まない隕石は非コンドライトに分類され、隕石形成後に激しい変成作用を受けてコンドルールが消失してしまったと考えられています。そのなかでも比較的弱い変成を受けた隕石は”Primitive(始原的)”と呼ばれ、非常に激しい変成によって一度完全に溶けて地球内部のように分化した隕石は”Differentiated(分化した)”に分類されます。「分類その1」の石鉄隕石と鉄隕石はすべて非コンドライトに、また石質隕石の一部も非コンドライトに分類されます。コンドライトと同様にClassやGroupなどの細かな分類があり、例えば Irons(分類その1の鉄隕石)のClassには12のGroupが存在します(図1-3)

図1-1 隕石と溶融殻(Fusion crust)

図1-1 サハラ砂漠で発見された石質隕石。黒く光沢がある部分が溶融殻。

画像:ワシントン大学「METEORITE OR METEORITE-WRONG? fusion crust」  (2017/2/18)  http://meteorites.wustl.edu/id/fusioncrust.htm

図1-2 様々な隕石

図1-2 上から:石質隕石(Chelyabinsk隕石)、鉄隕石(Canyon Diablo隕石)、石鉄隕石(Conception Junction隕石)。

画像 上:岐阜大学教育学部 理科教育講座 地学教室「隕石図鑑」 (2017/2/18)  http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/kyo/chisitsu/inse/che/index.html

画像 中 & 下:ワシントン大学「METEORITE OR METEORITE- WRONG? metal, iron, & nikel (Photo by Randy Krotev)」 (2017/2/18)  http://meteorites.wustl.edu/id/metal.htm

図1-3 隕石の分類 その2

図1-3 隕石の分類図(その2)。

出典:Krot et al., 2003 Treatise on Geochemistry Vol.1. pp. 83-128.

図1-4 コンドルール

図1-4 コンドルールの顕微鏡写真。大きさは数百μmから1mm程度で、組織の違いによっていくつかのタイプに分類されます(上がBarred Olivine(BO)で、下がRadial Pyroxene(RP)と呼ばれるタイプ)。

画像:上椙ら 2006 日本惑星科学会誌 Vol.15(1) pp.12-19