Cuter本棚～九大図書館で読めるオススメの一冊～: 見方によっては、ファンタジー

「江戸は極楽である、しかし失われる運命にあった極楽である」――福沢諭吉
「士農工商」や「切り捨て御免」に象徴されるように、江戸期の日本は窮屈でどこか暗い時代だったと連想される方がいるかもしれません。近年は、江戸時代の再評価が進み、こうしたイメージは随分と影をひそめつつありますが、本書はその嚆矢のひとつです。
現代の私たちの目からは、江戸時代の“自由な庶民”の生活は、ファンタジックなユートピアに映る、かも？

新幹線で食う弁当は「駅弁」、飛行機で食う弁当は「空弁」。
ではしんかい6500で食う弁当はなんでしょうか？
研究船でみんなの活力を支える司厨員に目を向けた一作です。

これは読んで終わるだけの童話系短編集ではない。
固定テクストとして作者が書いているのは途中までで、読者はノベルゲームのように三つの選択肢の中から各短編の結末を自由に選べ、気に入る選択肢が無ければ自分で結末を考えてしまってもいいときた。
本書のファンタジー群の読み方は上から押し付けられるものではない。読者自身が創ってよいものだ。
空想することの楽しさを思い出せる一冊。

「広大な大地で繰り広げられる怒涛の戦と阿弖流為の人生は、史実にもとづいたファンタジー」
時は宝亀十一年（780年）。
陸奥の地で繰り広げられる蝦夷たちと朝廷軍の戦いは、阿弖流為の壮絶な人生とともに劇的に展開してゆきます。教科書に数行で閉じられてしまう史実には、学校の授業だけでは語りつくせぬ、男たちの血と涙の大迫力ストーリーが閉じ込められています。

機能不全家族を描いた作品です。
あんなに心が離れてしまった家族が居心地が悪いながらも元さやに戻っていく様は、お話として面白いとはいえ今を生きる私たちにとっては“ファンタジー”だと感じました。
ドラマの名手を呼ばれた著者の、大どんでん返しを味わってみてはいかがでしょうか。

優柔不断な放蕩息子としっかり者の芸者が駆け落ちをし、生活を成り立たせていくために苦労する物語です。
駆け落ちという部分が九大生にとってはある意味体験することが少なそうな“ファンタジー”だと思い、この本を選びました。
周りの人々に後ろ指をさされたり支えられたりしながら、なんとかその日を生きていこうとする様は滑稽ながらもいとおしく感じます。