どんな医療であれ
まず 「診察」 ありきです。
僕たちが普段受ける診察と比べてとてもユニークな 漢方医学の診察 をご紹介いたします。
「証」
とは、ざっくり言うと、患者さん本人の 「自覚症状」 とお医者さんなど本人以外が診た 「所見」 を併せたものです。
もともとは「傷寒論」という、古典に載ってある独自の考えなのですが、現在の漢方薬の処方もこれに基づいております。
前項の繰り返しになりますが、東洋医学的診察は「総合的な診断」と言えるため、
患者さん各人の体力・抵抗力・目に見える症状の個人差も分かることがあります。
すなわち、例としてAさんとBさんで「証」が違うと診断されていれば、
たとえ二人の「自覚症状」が同じであっても、Aさんに効いている薬はBさんには効かないことがある、ということです。
逆もまた然りです。
さらに
西洋医学では同じ病名で同じ処方をされるような場合でも、それぞれの「証」が異なれば、違う治療指針が立てられます。
また、普通の診察では全然違う症状だとしても、「証」が一致すれば、同じ処方を受けることもあります。
これらは、「同病異治(どうびょういち)」「異病同治(いびょうどうち)」と呼ばれ
漢方(東洋)医学の特徴的な部分です。
乱暴な言い方をすると 《証》 の構成要素は 「患者さんからの訴え」 と 「患者さんの見た目」 の二つです。
それならば、《証》 とは診るお医者さんの見方によって変わってくるんじゃないか、という疑問が出てくるかもしれません。
実際、その通りなようです。
漢方薬や東洋医学をテーマにした解説本や新書では、《証》ひとつ取っても、定義や基準が厳密にそろっているわけではありません。
専門薬局や、漢方を専門とするお医者さんの間でも《証》の概念は一定していないのが現状だそうです。
そうは言っても、処方された漢方薬がまったく効かないような診断になることは滅多になく
「診断した結果、この傾向にある患者さんは、これを処方すれば安定して効く」
という、西洋医学的治療には見られない 広いストライクゾーン が存在します。
そんな 「傾向」 を掴むための「患者さんの見方」ともいえる基準も、しっかりあります。
この項目では、そんな 診断基準 について触れます。