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動物実験の基礎(マウス): マウスの系統

動物をいたわりましょう

様々な系統がある

ある操作の影響を純粋に比較するためには、遺伝子的に統制された動物を用いることが必要です。

実験室では遺伝的にも環境的にも統制されたマウスが複数系統存在しており、それらが実験に用いられます。

一部を紹介します。

 

- 近交系 -

 一般的な近交系

 リコンビナント近交系

 リコンビナントコンジェニック系

 コンジェニック系

 コンソミック系

 セグリゲイティング近交系

- 非近交系 -

 クローズドコロニー

 Advanced intercross lines (AIL)

一般的な近交系

一般的な近交系

①特定の選抜目標を持たない近交系

近交系を育成する際に、特定の形質についての選抜を行うことなく、近親交配を継続することで、最初の集団の中にヘテロで含まれていたすべての遺伝子が無作為にどちらかの遺伝子に固定したもの。

②特定の形質をもつ近交系

出来るだけ遺伝的に多様な基礎集団をもとに、目的とする形質(測定可能な形質)について選抜を行う。毎世代、その形質について、ある基準以上の測定値を示す固体、もしくは集団のなかで上位(下位)の値を示す固体を選抜し、次世代の交配に用いる。その特性が遺伝的な寄与を受けている場合、世代を経るにしたがって集団の平均値が選抜の方向へ引き上げられる。

 

どちらも20世代以上兄弟交配を行い確立された系統です。なぜこんなに沢山の交配を行わなければならないのかは、以下の資料に詳しいです。

http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/Kuramoto/contents/ExpAnimGenet_1_inbred.pdf

 

皆さんご存知の近交系マウスには特徴があります。一部を紹介します。H2はマウス主要組織適合性(MHC)抗原です。

charlse liverさんより)

C57BL/6

毛色;BlackC57BL/6

特徴;小眼・無眼が多い、眼球の白濁や白内障が多い、脱毛が生じやすい、18ヵ月齢以上の自然発生腫瘍および種々の腫瘍の発生頻度が低い、アルコール嗜好性が高い、Th1側の免疫応答が高い、細胞性免疫能の加齢による低下が少ない

H2;b

 

BALB/c

毛色;AlbinoBALB/c

特徴;網内系器官が大きい、放射線感受性が高い、老齢の心臓病変が多い、Th2側の免疫反応が高い

H2;d

 

DBA/2

DBA/2

毛色;Dilute brown

特徴;聴性発作を起こしやすい、クロロホルム・エチレンオキサイドに対する雄の死亡率が高い、赤血球数が多い、比較的低血圧、心臓に石灰沈着が見られる

H2;d

 

C3H

C3H

毛色;Agouti

特徴;発毛周期が比較的はっきりしている、MTV(乳がん因子)の因子は入っていない、雄に高月齢で肝がん高発、遺伝的網膜異常、神経疾患

H2;k

リコンビナント近交系

リコンビナント近交系

異なる2つの近交系(A、B)を交配し、F2の雄・雌の交配を複数組作り、以降は組ごとに独立に近親交配を20世代以上継続することによって育成された系統群。理論上、各系統はAとBのゲノムをホモの状態で50%ずつ保有する。それぞれの系統は各遺伝子座にAとBのゲノムをランダムに持っており、それらの遺伝子型地図をもとに各系統の表現型を比較することで、その表現型に関わる遺伝子座の領域を同定することが可能となる。

リコンビナントコンジェニック系

リコンビナントコンジェニック系

異なる2系統の近交系(A、B)を掛け合わせ、その仔をいずれかの系統(A)に数回戻し交配を行う。以降はリコンビナント近交系と同様、組ごとに独立に近親交配を継続する。リコンビナントコンジェニック系は、リコンビナント近交系よりもB系統のゲノムが占める割合が少ない系統であり、通常2回の戻し交配を行うことでB系統由来のゲノムが12.5%まで減少する。

コンジェニック系

コンジェニック系

①突然変異同定のためのコンジェニック系

特定の突然変異遺伝子を持つ動物を、既存の近交系に何世代も繰り返し戻し交配することで、目的とする突然変異遺伝子以外の殆どの遺伝子組成が既存の近交系と同一になった系統。

②系統間の表現系の違いに関わる遺伝子多型を同定するためのコンジェニック系

異なる表現型を示す2系統(A、B)を掛け合わせ、いずれかの系統(A)に戻し交配を繰り返すことで、興味のある遺伝子座のみをB系統に置き換え、その他の領域は全てA系統のものと同一になった系統。

コンソミック系

コンソミック系

異なる2系統(A、B)を掛け合わせ、いずれかの系統に戻し交配を行い、最終的に1対の染色体がB系統のものと置き換わり、残りすべての遺伝子組成がA系統由来となっている系統。

セグリゲイティング近交系

セグリゲイティング近交系

特定の遺伝子座を強制的にヘテロに保ちながら、近親交配を継続することによって育成された系統。これは、近交系でない固体で発見された突然変異に着目して系統化を行うときによく用いられる。ある目的の突然変異遺伝子をホモにした後で近親交配を行うと、その系統が確立されて実験に用いるときに、コントロール群として同じ遺伝的背景を持つ正常系統を用意することが出来なくなってしまう。そのため、目的遺伝子座のみを強制的にヘテロに保ちながら、その他の遺伝子組成を均一にすることで、テストの際に突然変異群とコントロール群をそこから作出することが可能となる。

クローズドコロニー

クローズドコロニー

近交化されていなく、全ての遺伝子座が出来るだけヘテロであるように維持されている。ただし、5年以上他からの遺伝子の移入が無く、一定集団内でのみ維持されていることが求められる。遺伝的なばらつきは一定の範囲内に抑えられており、かつ、その系統を使用する時期によって固体の遺伝的傾向が大きく変化することが無いように、遺伝子座の頻度がつねに一定に維持されている。ヒトがほぼヘテロな集団であることからヒトのモデルに適している。

Advanced intercross lines (AIL)

Advanced intercross lines (AIL)

異なる2つの近交系を交配してF2世代を作出し、その後、兄弟交配を避けながら、お互いに交配することで作出する。世代数を重ねることによって、2対の染色体間の組換えが複数回生じるため、非常に近接した遺伝子間での組換えが生じる可能性を高めることが可能。

沢山ありますね~

このように実験目的に沿って沢山のマウス系統があるわけです。

自分が行いたい実験にどの系統が必要なのか熟考し、解析に用いましょう。