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★薬とあなたに相性がある理由: 遺伝子型と効きの個人差

同じくすりでも良く効く人とそんなに効かない人がいるってマジ?マジです。遺伝子に注目してご説明します。

用法用量を守って正しくお使いいただく条件

 

くすりの添付文書に書かれる「用法・用量」というのは、一般的に

SNPを持ってて、通常と違う動きをするような、薬物代謝酵素・トランスポーターの存在を気にしていません

 

そのため、SNP持ちの各酵素を持っていた場合、それに合わせて用法用量を変えていく必要があります

目的地に着く薬物が、少なすぎても効きが悪いだろうし、多すぎても、効きすぎ ≒ 副作用の危険があるからです

 

こういった背景で、SNPの有無などは、遺伝子診断により、あらかじめ把握できたら素敵ですね。という考えがあります


 

では、くすりとSNPの関係で、よく研究されている例を3つ、見ていきましょう

 

「*「スター」と読みます。例えば*3」「スタースリー」と読んでください

 

高脂血症治療薬とOATP1B1

 

OATP1B1(オーエーティーピーワンビーワン)は、肝臓の表面に居ます

大切な化合物などを肝臓内に取り込む「取り込みトランスポーター」で、高脂血症治療薬であるスタチン系薬剤などが担当になります

 

OATP1B1は2種類のSNPが重要と考えられ

1つは、とある場所の「A」「G」に代わる変異で、これを「OATP1B1*1b」と言います

このSNPは、OATP1B1の活性を上げることがあります

もう1つは、別の場所の「T」「C」に代わる変異で、これを「OATP1B1*5と言います

このとき、OATP1B1*1b の変異も同じ遺伝子に持っていた場合、特別に「OATP1B1*15と呼ばれます

*5*15 を持っていると、OATP1B1の活性が著しく下がってしまいます

 

日本人の半分は、OATP1B1*1b 保有者で、15%くらいが OATP1B1*15 保有者といわれています

 

もし自分が血中コレステロールが多いことに悩み、スタチン系のくすりを飲んでるとして

OATP1B1の活性が弱いSNPを持っていたならば、くすりが予想よりも取り込まれず、十分な薬効が示されないかもしれません

そのときは、もっと飲む量を増やすか、OATP1B1が途中で絡まないようなくすりに切り替える、などが案に上がってきます

 

抗てんかん薬とCYP2C9

 

CYP2C9(シップツーシーナイン)は、薬物代謝酵素で、抗てんかん薬であるフェニトインなどを担当しております

 

CYP2C9で日本人にとって重要とされるSNPは

とある場所の「A」「C」に代わる変異で、これを「CYP2C9*3」と言います

パパママ由来のどちらかが持ってると、活性はガタ落ちし、両方が持ってると、活性が消失してしまいます

 

日本人の2%は、この変異を持ってるとされます

 

てんかんは、発作のコントロールが非常に大事な疾病なので、ちょっとでも「効かない/効きすぎる」ことは命取りになりかねません

そのため、慎重な治療設計(投与量・投与間隔の設定)がカギとなります

上のような特徴を持っているかどうかを知ることは、治療設計の上での重要な要素と言えます

 

胃酸抑制薬とCYP2C19

 

CYP2C19(シップツーシーナインティーン)薬物代謝酵素で、

胃酸の分泌を抑える薬であるオメプラゾールなどを担当しております

 

CYP2C19は2種類のSNPが重要と考えられ

1つは、とある場所の「G」「A」に代わる変異で、これを「CYP2C19*2」言います

もう1つは、別の場所の、これもまた「G」「A」に代わる変異で、これを「CYP2C19*3」と言います

どっちのSNPを持ってても活性の消失が伴います

 

パパママ由来の組み合わせにおいて、*2/*2」「*2/*3」「*3/*3」を持つ人は、CYP2C19が働かない人です

日本人の20%は、CYP2C19が全く働かない人だと言われています

この場合オメプラゾールは、別の薬物代謝酵素で、担当がカブってるCYP3A4が、主な代わりとして代謝してくれます

しかしこのとき、一般量のくすりを投与すると、

通常の仕上がりのCYP2C19を持つ人に比べたら、SNPアリの人の体内には、生き残り薬物が予想より多くなりえます(代謝係が通常より少ないため)

くすりが多いことは、薬効がちゃんと現れる反面、効きすぎ(副作用)の危険が出てきます

こういうときは注意して、くすりの量は減らした方が良いかもしれません

 

一方でオメプラゾールは、ピロリ菌除菌にも用いられますが、このとき、*2*3 保有者では

通常の場合と比べ12倍の効率で、体内のピロリ菌を除去してくれます

活性消失が悪いことばかりではない、ということになるでしょうか

 

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