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狩野亨吉と九州大学: 朝鮮本

近代日本を代表する思想家・教育家・蒐書家である狩野亨吉が、九州大学にもたらした貴重な図書の紹介

狩野文庫朝鮮本

 朝鮮本(韓本)とは、李氏朝鮮時代以前に朝鮮半島で作られた刊本・写本のことをいい、一般に唐本・和本と比べて判型が大きく、糸の綴じ目が五つあるのが特徴である。現存する数が少ないため、稀覯本とされることが多い。
 中央図書館に所蔵される狩野文庫の朝鮮本は、総計79部286冊を数え、九州大学所蔵の朝鮮本の中核となっている。箱崎の九州帝国大学の近くに在住し、附属図書館司書の田中鉄三とも交流があった朝鮮学者前間恭作(1868~1942)の著書『朝鮮の板本』において、狩野文庫の朝鮮本がいくつか紹介されており
、本項目もその解説によるところが大きい。

奎章閣志―下賜された「奎章之宝」―

    


『奎章閣志』 2巻1冊 中央図書館所蔵 622/ケ/2

 奎章閣は、内閣とも呼ばれ、李氏朝鮮の歴代国王の文書・記録等を収蔵管理する、王立図書館に相当する機関であり、専任の文臣が学問を研究して王の諮問に応じる機能、国政の運営資料や参考資料としての国内外の典籍を収集・保管する機能、書籍を出版する機能も担っていた。『奎章閣志』は奎章閣設置の沿革、制度、規定を整理したもので、正祖8年(1784)に奎章閣所蔵の銅活字により出版された。本書は、「奎章之宝」の印と、見返しに道光7年=純祖27年(1827)に奎章閣直閣であった李景在(1800~1873)に下賜された旨の記録がある。臣下へは新しく印刷した書が下賜されるため、この記録から、正祖8年に出版された『奎章閣志』が純祖27年に改めて出版され、臣下に下賜されたことがわかる

参考:大阪府立中之島図書館所蔵『奎章閣志』(おおさかeコレクション)

耽羅志―済州島の地誌―

   李元鎭『耽羅志』 3巻1冊 中央図書館所蔵 663/タ/9

 耽羅は朝鮮半島西南の済州島に15世紀初め頃まで独立していた王国で、本書は1653年に李元鎭(号太湖、1594~1665)が著した済州島の地誌である。その当時、李元鎭は済州島の長官である済州牧使であり、その教化、開発に尽くした。同年7月に、台湾から長崎に向かう途中のオランダ船が難破して船員が済州島に漂着するという事件が起こる。その中の一人、オランダ東インド会社のヘンドリック・ハメルによって後年著された『朝鮮幽囚記』によれば、李元鎭は貧弱な食事を改善する等オランダ人を厚遇し、必ず本国に帰還できると励まし続けたという。しかし李元鎭転任後、オランダ人たちは12年間におよぶ貧窮と苦役の幽囚生活を送ることになる。
 李元鎭は、本草暦算に精通し、壬辰兵火を免れた済州の板木四十餘種を記録している等、本書の随所にその見識の高さを窺うことができる。

参考:大阪府立中之島図書館所蔵『耽羅志』(おおさかeコレクション)
参考文献:ヘンドリック・ハメル著、生田滋訳
朝鮮幽囚記』(平凡社東洋文庫、1969)