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実験!モデル生物図鑑: 動物

様々な分野・目的で活躍するモデル生物について紹介します

線虫

 

Caenorhabditis elegans

出典:wikipedia ファイル:Adult Caenorhabditis elegans.jpg
著作権者:Kbradnam  ライセンス:CC BY-SA 2.5

  

 C. elegans はモデル生物として都合のいい特徴をいくつも持っています.C. elegans には僅かに雄が存在しますが,多くが雌雄同体です.雌雄同体は精子と卵子の両方を作り,自家受精を行えます.また,雌雄同体は雄と有性生殖もできます.上の画像を見ても分かるように,体が透明なため細胞の観察が容易です.また,C. elegans は成長が厳密にコントロールされており,体細胞数は雌雄同体で959個,雄は1031個と数が決まっています.この特徴がアポトーシスの解明に繋がりました.他にも,生活環の周期が短いことや寒天培地で発育可能なこと,神経系の存在といった特徴があります.

 

マウス

 

Mus musculus

出典:wikipedia ファイル:PCWmice1.jpg
著作権者:FloNight  ライセンス:パブリック・ドメイン

 

 哺乳類で最も使用されているモデル生物です.マウスの長所は,既に多くの系統が作製されており,研究に適した系統を選べること.次に,精子や卵子,生殖器の保存技術が確立していること.さらに,トランスジェニックマウス(遺伝子解析・疾患モデル)が作製されていることがあげられます.逆に短所は,サイズが小さく(約20g),血液など試料の採取量が限られていることがあげられます.

 

カイコ

Bombyx mori

出典:wikipedia ファイル:Bombyx mori Caterpillar 30days 02.jpg
著作権者:Gerd A. T. Müller  ライセンス:CC BY-SA 3.0

 

 実験動物,特に哺乳類は倫理的問題が多いですが,それに対してカイコは倫理的問題が少なく,哺乳類の代わりとして注目されているモデル生物です.血管と腸管を区別して注射できることや,感染症をはじめ,糖尿病や花粉症などのヒト疾患モデルも作れることが特徴です.

余談ですが,カイコの成虫はすごく気持ち悪いです...(個人的に)
私の友人に寄生虫が好きな人がいましたが,果たしてカイコの成虫が好きな人はいるのでしょうか?と,ふと思いました.あまり見たくないので写真は載せていません.興味があれば是非調べてみてください(^^;) 

 

カタユウレイボヤ

Ciona intestinalis

出典:wikipedia ファイル:Cionaintestinalis.jpg
著作権者:perezoso  ライセンス:CC BY-SA 3.0

 

 成体のカタユウレイボヤは,岩などに付着して育つ無脊椎動物ですが,変態前は尾部に脊索を有する尾索動物です.脊索動物の生命現象を解明するモデル生物として利用されています.カタユウレイボヤは,受精後18時間でオタマジャクシ型幼生になります.さらに,約3か月という比較的短い期間で成体になり,かつ,雌雄同体で人為的に自家受精できるため,扱いやすいです.

 
 

メダカ

Oryzias latipes メス

出典:wikipedia

 

ファイル:Oryzias latipes

(Hamamatsu,Shizuoka,Japan,2007)-1.jpg

著作権者:Seotaro  ライセンス:CC 表示-継承 3.0

  

Oryzias latipes オス

出典:wikipedia ファイル:Nihonmedaka.jpg
著作権者:NOZO  ライセンス:CC 表示 3.0

  

メダカは飼育が簡単で,1年中毎日採卵できるという利点があります.さらに,2,3か月で成熟できること,体外受精,卵が透明,小さなサイズなどの特徴があり,その利用は発生学,遺伝学,生理学,放射線生物学など多岐にわたります.

 

アフリカツメガエル

アフリカツメガエル

 Xenopus laevis

出典:Wikipedia ファイル:Xenopus_laevis_02.jpg

著作権者:Brian Gratwicke ライセンス:CC 表示 2.0

  

体軸形成、四肢形成、変態、初期発生、減数分裂(卵成熟)など、発生生物学における様々な課題の研究に用いられます.

さらに、未受精卵から調製される卵抽出液は、細胞周期の進行、ゲノムDNAの複製と分配の分子メカニズム理解に大きく貢献しています.

キイロショウジョウバエ

Drosophila melanogaster

出典:wikipedia  ファイル:Drosophila melanogaster - side (aka).jpg
著作権者:Aka ライセンス:CC 表示-継承 2.5

 

 キイロショウジョウバエは短期間の胚期,幼虫期,蛹期を経て,約10日間で成虫になる完全変態する昆虫です.ショウジョウハエは遺伝子の命名法が面白く,有名な例としては,目を赤くする遺伝子は欠失させると目が白い表現型になるので"white"というように,変異型に因んだ名前が命名されます.

 唾液腺の染色体は細胞分裂を行わずにDNAの複製が起こるため,DNAが束になった多糸染色体が観察されます.また,生育に必須な遺伝子の70%以上がヒト遺伝子と相同性があり,ヒトの疾病遺伝子の機能解明や生命維持の基本的メカニズム解明のために用いられています.

 

ラット

 

Rattus norvegicus

出典:wikipedia ファイル:Wistar rat.jpg
著作権者:Janet Stephens  ライセンス:Public Domain

 

  ラットはドブネズミと呼ばれる大型のネズミに由来するため,小型なマウスと比較して,外科的処置や生体試料を採取するのに都合がいい(体重は数100g).マウスと比較して,人間に慣れやすく温厚なため,初心者に向いているらしい.

 

プラナリア

 Schmidtea mediterranea

出典:wikipedia ファイル:Smed.jpg
著作権者:Alejandro64  ライセンス:CC BY-SA 2.5

  

 小学生の理科ででも取り上げられるほど有名な,再生力をもったモデル生物です.プラナリアはどんなに切断しても再生して,切断した数の個体になります.頭部を切断すれば頭部が再生され,尾部を切断すれば尾部が再生されるのは,前後軸に沿ったある物質の濃度勾配によるものらしいです.プラナリアは言うまでもなく,再生生物学のモデル生物として使用されています.

 

ゼブラフィッシュ

Danio rerio

出典:wikipedia  ファイル:Zebrafisch.jpg
著作権者:Azul ライセンス:Copyrighted free use

 

 ゼブラフィッシュは,稚魚は体が透明,卵が透明,体外受精・体外発生,人の遺伝子や組織と相同性が高いといった研究にとても適した特徴を持ちます.繁殖力の高さや,世代時間の短さ,コストの低さという利点もあり,マウスやラットに次ぐ,ヒトのモデル生物になると言われています.卵が透明であり,卵中の胎児の観察が容易であるため,発生・形態形成の研究分野で使用されてきたモデル生物です.

 

ウニ

Strongylocentrotus purpuratus

出典:wikipedia ファイル:Strongylocentrotus purpuratus 1.jpg
著作権者:Taollan82  ライセンス:CC BY 3.0

 

発生学の研究をウニで行うことは様々な利点があり,発生学におけるモデル生物として古くから用いられています.ウニの代表的な特徴は,胚が透明で扱いやすいこと,ショウジョウバエや線虫よりも脊椎動物に近縁,Strongylocentrotus purpuratusのゲノム配列が既に決定されていることがあげられます.

 

ウズラ

 

Coturnix japonica

出典:wikipedia ファイル:Japanese Quail.jpg
著作権者:Ingrid Taylar  ライセンス:CC BY 2.0

 

中華料理でよく目にする鶏卵より小さな,あの卵は,この鳥(ウズラ)の卵です.120g程度の体重で,世代交代が2ヶ月と短く,卵を多く産むという利点があります.

ネッタイツメガエル

Xenopus (Silurana) tropicalis ??

出典:バイオリソースニュースレター 9(6)  ファイル:201306_1L.gif

著作権者:国立遺伝学研究所 生物遺伝資源センター ライセンス:

 

本種の正式な属名については未解決のままで、以前はツメガエル属(Xenopus)の一種とされていましたが、形態計測の結果、別系統とみなしてネッタイツメガエル属(Silurana)を設けることが提案されました.一方、rDNA塩基配列からは、ネッタイツメガエルはツメガエル属のカエルと近縁であることがわかっています.したがって、本種の学名を Xenopus (Silurana) tropicalis と表記する研究者が多くなっています.

ネッタイツメガエルは、両生類で唯一全ゲノムが解読されており、ポストゲノム時代におけるモデル動物として注目されています.順・逆遺伝学の複合課題、生体のもつ分子情報の網羅的解析、化学物質による内分泌かく乱作用機構の解明、などの研究に好材料といわれています.