私はこの人と仕事がしたくてアニメ業界に入りました。とそこには一本芯の通った香屋子。その熱意に当てられてついに監督として乗り出す王子。
王子の一挙手一投足に振り回され呆れながらも、ここぞというときの王子の言葉には”ああもうこの人は!”と王子への憧れや、尊敬をあふれさせる香屋子が愛おしいです。それぞれの仕事の流儀や価値観がぶつかりもする中で、今まで見ようとしてこなかった裏にある想いや、日常を知った時彼らはこれまで以上のものを作り出します。
きつくても好きだからこそやっている、だからこそアニメ業界には溢れるとまではいかなくても、確かに愛がある。好きなこと、思い入れがあるものだからこそ打ち込める、出来上がったものに愛着があり、認められなければ悔しい。感情が先に立つ、表に出しやすい仕事ということもあってか、そこには確かな熱量がある。こんな職場で働きたいと思えました。
最近辻村深月は白辻村、黒辻村と作品の雰囲気に合わせて言われることがあるようです。
人の感情のどす黒いところまで迫ってくる、噴出させる黒辻村。
人の心の柔らかいところにそっと寄り添い、触れてくる白辻村。
今回はお仕事小説ということもあって、白辻村の作品でした。
最後には自分もいい仕事がしたい!と爽やかな読後感が得られる一作でした。仕事に疲れた時にもぜひ!