早速、臨床検査の落とし穴にはまってしまいました。。。 こんなことが起きるなんて
検査結果を見ようとカルテを開くと、、、
~検査結果~ | ||||
2015.03.10 | 2015.11.20 | 2016.05.12 | 2016.12.12 | |
HBsAg | 陰性 (0.1) | 陰性 (0.0) | 陰性 (0.2) | 陽性 (1.0) |
HBs抗原がこんな検査結果だったら、HBVに感染したか or 再発か!? と思ってしまいますよね。
正しくない数値・判定であったら、無意味な処置を患者さんに施してしまう可能性もあります。
検査技師は正しい検査結果を返さなければなりません。
箱を開けてポイポイ捨ててしまいがちな試薬能書の注意点をよく見てみると、
「著しく溶血した検体は使用しない。」 「検体中の泡、フィブリン、赤血球、その他不溶物を除去する。」
「正確な測定結果を得るため、血清および血漿検体にはフィブリン、赤血球、その他の不溶物が含まれていないことを確認すること。」
などの記載がありました。 ポイポイ捨ててしまうのは良くないです。
試薬能書に大事なことが書いてあるようです。これらによって、検査結果にどの様な影響が出るのでしょうか???
落し穴① 「フィブリン」
フィブリンはフィブリノゲンからできる血中タンパク質で、血小板とともに網目状の膜を形成することで止血・血栓の形成に重要な役割を果たしています。
しかし、検査に用いる検体においては
血清;凝固不十分 血漿;抗凝固剤との混和不十分、長時間の保存
によって、粘性のあるフィブリンが析出してしまうと、検体中に抗原(または抗体)がなくとも試薬成分(抗体)が結合してしまい、偽陽性となることがあります(非特異反応)。
これはよく起こります。1日に数件あったような。ぎりぎり陽性(カットオフ値付近)と判定された検体に対して、怪しいなと思い、以下の処理をすると、陰性化することがあります(非特異反応、真は陰性)。
~対処~
検体をエッペンチューブに分注し遠心を行うことでフィブリンをスピンダウンします。
すると判定が変わることが。 陽性と判定させていたものは、検査目的物質(抗原・抗体)ではなくフィブリンでした。
本当に陽性である検体は遠心操作により判定が変わることはありません。 検査結果の時系列を見て判断することも大切です。
時系列で前回値が陰性であり、今回値が陽性となったときは要遠心です。
落し穴② 「赤血球」
赤血球はご存知の通り血液に大量に含まれている赤いドーナツです。
検査に用いる検体においては
血清、血漿 ; 遠心不十分、分離剤の不良
によって、血清または血漿中に赤血球が含まれてしまうと、フィブリンと同様、非特異反応によって偽陽性となることがあります。
これもよくあります。 遠心で分離が出来ているか、検体を確認することが大事ですね。
~対処~
検体をエッペンチューブに分注し、遠心でスピンダウンさせ、きれいな血清・血漿を分析に用います。
明らかに検体が赤い場合は要遠心です。 一見きれいに見える血清・血漿でも再遠心してみると、赤血球がチューブの底に目で確認できるほど落ちてきます。
強溶血の検体は検査不可と能書に記載されています。同時に何本か採血を行っている場合が多いので、強溶血であった場合は他の採血管をチェックし、使用出来る場合は代用します。しかし、既に他の検査で使用済みの検体を利用する場合は、コンタミの可能性が否定出来ないので、結果が陽性となった場合には注意が必要です。再採血を依頼するのが一番良いと思われます。または、次回の採血時に同じ検査オーダーを出してもらい、今回は検査オーダーの削除を医師に依頼することもあります。