落し穴各論③ 「自己免疫疾患」
自己免疫疾患、例えば、リウマチ、バセドウ病などの患者さんは自己抗体が血中に存在します。
自己抗体が測定系に影響し、非特異反応が起こり、偽陽性となる可能性があります。
この場合は、ガッツリ陽性とはならず、ギリギリ陽性の判定となることが多かったです。
分かりやすく図になっているHPがあったのでこちらもご覧ください。
MBLライフサイエンス、非特異反応の主な要因https://ruo.mbl.co.jp/bio/support/method/nonspecific-reaction.html
~対処~
後日、再検査を行なうか、遺伝子検査などの精密検査を依頼することで確認します。
真は陰性であるが、測定を行なった検査法では、何らかの反応性を有するモノの存在で陽性判定となってしまう患者さん、と解釈します。
能書には、、「非特異的反応が起こりうるので測定結果に基づく診断は他の検査や臨床症状等を考慮して総合的に判断すること」
と記載されていました。 他の結果と合わせて、総合的に判断することが必要ですね。
落し穴各論④ 「ウインドウピリオド」
感染初期には、ウイルス量・抗体量がごく微量な時期があり、この時期に検査を行っても、本当に感染しているのに検出できないことがあります。
日本赤十字が行っている輸血用血液に用いているNAT(核酸増幅検査)でも、感染後、HBV 34日、HCV 23日、HIV 11日以内は検出できないとされています(図中赤)。
参考文献:日本赤十字社 東京都赤十字血液センターHP, https://www.bs.jrc.or.jp/ktks/tokyo/index.html
検査室で行なっている検査法(血清学的検査)はこの方法より感度が劣るので、これ以上に、感染後しばらくは陽性と判定されません(図中青)。
図のとおり、時間が経たなければ検査で検出できません。
参考文献:日本赤十字社 北海道ブロック血液センターHP,https://www.hokkaido.bc.jrc.or.jp/hotnews/detail/00000138.html
また、血清学的検査の場合は、免疫機能の低下により抗体産生能が低下することでウインドウピリオドが伸びたり、検出できないことも考えられます。
〜対処〜
感染が疑わしい患者さんは、後日、再検査、または高感度な精密検査を行うべきです。
落し穴各論⑤ 「検体間汚染」
検査の迅速化が求められている昨今、自動開栓装置へ接続していたり、他の検査項目と採血管の一本化がなされていたり、検体間汚染を考慮しない運用が行なわれている場合があります。
多数の検体を集めて同時に処理をすると、蓋を開けた瞬間などに細かな粒子(エアロゾル)が舞い、周囲の検体を汚染してしまう可能性があります。強陽性の検体が少しでもコンタミすると、判定が変わってしまうと言われています。
検査室の努力になりますが、検体間汚染を防止する工夫が必要となります。
参考文献: 出口 松夫・鍵田 正智・吉岡 範.臨床検査のピットフォール.感染症検査における採血管開栓時の検体間汚染.検査と技術.2015年04月号 Vol.43 No.4.
〜対処〜
汚染の場合、同じ検体で再検査しても意味が無いので、採血し直しです。同時に採血していた他の採血管が代用できれば、それを検査に用いることが可能かもしれません。
しかし、実際、コレが汚染された検体である!と、すぐに判断することは難しいです、前回値と合わせて考えなければなりません。
検体搬送ラインの動画がありました。 動画の最初のほうに出てきます。 この様に検体は運ばれ、検査されてゆきます。
蛇足ですが、ISO15189認定を受けるのも維持するのも大変です。
ここまで、落し穴がたくさん掘ってありましたが、他にも「偽」判定となる要因が存在します。
臨床検査技師は精確/正確な結果を提供するために、日々、
異常値の検出、機器のメンテナンス、精度管理、精度管理サーベイへの参加、試薬の検討などを行なっています。結構大変です
臨床検査技師の皆さんありがとう~!!!
そして、このガイドと同じような内容がネットに落ちておりました。
やはり、皆さんこの様な経験をされているんですね。検査結果が正しいかどうかを判断する力を養わなければなりませんね。
生物化学分析検査研究班研究会、免疫検査のピットフォール: http://www.aichi-amt.or.jp/labo/chem/reikaisuraido/2013.9okamoto.pdf