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宇宙入門: 現代の宇宙開発(国家編)

これまで宇宙を舞台に行われてきたことを簡単にまとめてみました

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雑賀 翔平
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本ガイドは図書館TA(Cuter)として勤務した際に作成したものです。
勤務期間 :2017年4⽉〜2019年3月
作成時⾝分:⼤学院⽣(修⼠課程)
作成時所属:九州⼤学⼤学院工学府航空宇宙工学専攻
分野: A12_工学府

現代の宇宙開発(国家編)

現代の国家主導の宇宙開発は他惑星・衛星の探査が主となっている.太陽系の起源を調査や,地球外生命体の探査などを行っている.今後の人類史に残るようないくつかの主要な宇宙の施設,探査機について紹介しよう.

  1. ボイジャー​1号,2号
    人類史上最も貢献したと言える探査機.惑星の位置関係上,1976-78年の間に打ち上げれば木星・土星・天王星・海王星を連続して観測できるということで計画された.実は,この連続して観測できるのは175年に一度のチャンスであった.ボイジャー1号は 木星・土星を観測後,太陽系を離れ,2号は木星・土星・天王星・海王星を観測後,太陽系を離れた.現在は地球から約200億kmを飛行中で,最も遠い人工物である.
    ボイジャーには「ゴールデンレコード」と呼ばれる,わくわくするレコード盤が搭載されている.このレコードには,地球の言語,自然や動物の音,音楽,人や文明の画像が記録されており,もし,万が一,地球外知的生命体がボイジャーを発見した場合は読み取ってもらえるようになっている.

       
    左がボイジャー,右がゴールデンレコード(Credit: NASA/JPL)

    ちなみに,このゴールデンレコードは長らく公開されてなかったが,Ozma Recordsという会社が一般向けにリリースしている(こちら).
     
  2. ISS
    アメリカ,ロシア,日本,など各国が協力して作り上げた地球周回軌道上の実験設備.現在の宇宙飛行士はに滞在して無重力空間を利用した実験や修理などを行っている.日本の担当した実験モジュールは「きぼう」と呼ばれている.本学の先輩である若田光一宇宙飛行士もISSに滞在した経験を持つ.若田さんチームが水のろ過装置を完成させ,尿を水として飲めるようにした.若田さんたちはその水で乾杯したそうである.


    ISSでの再生水を使った乾杯の様子(Credit: JAXA)
     
  3. スペースシャトル
    NASAの開発した垂直離陸・水平着陸型の再利用可能な有人宇宙船.当初の予測では安く打ち上げることができるとして開発され運用が開始されたが,実際には安全対策や修理で費用がかさみ,1回当たりの打ち上げ費用は通常のロケットよりも高くなってしまった.5機が宇宙飛行用に作られ,合計で135回の飛行を行っている.しかし,5機中2機が事故で失われている.スペースシャトルは多くの技術的功績を残しており,アメリカ空軍は実験機としてスペースシャトル型のX-37Bと呼ばれる宇宙船を使い実験を行っている.


    手前の飛行機のような形をしたのがスペースシャトル,奥のロケットのようなものはブースター(Credit: NASA)
     
  4. オポチュニティ​
    火星上を動き回るローバー型の探査機.当初は90火星日(92地球日)の約3か月間のミッションであったが,非常に長き持ちこたえ,約15年間もの間動き続け,観測を行った.設計では約1kmの走行しかしないはずであったのに,蓋を開けてみれば合計45kmである.その間多くの写真を含むデータを地球に送信しており,火星探査にとても大きな貢献残した.


    オポチュニティのCG画像,上に伸びたカメラが頭みたいでかわいい(Credit: NASA)
     
  5. はやぶさ​
    言わずと知れた日本の小惑星探査機.小惑星「イトカワ」に着陸後,世界で初めてサンプルリターンを行った.「イトカワ」の由来は,日本の宇宙開発の父と呼ばれている糸川英夫にちなんで名付けられた.糸川氏はペンシルロケットの開発を行い,その成果は日本の固体ロケット技術の元になっている.
    はやぶさでのサンプルリターンでは弾丸を発射し砕けた岩石を持ち帰る予定であったが,実際には弾丸が発射されず,微小粒しか持ち帰ることはできなかった.このはやぶさをきっかけに宇宙に興味を持った人が数多く存在し,私の大学同期にも何人か存在する.現在は後継機のはやぶさ2が小惑星「リュウグウ」に滞在中(2019年2月).

         
    左ははやぶさの実物(太陽光パネルが折りたたまれている状態),右は小惑星「イトカワ」(Credit: JAXA)
     
  6. ハッブル宇宙望遠鏡
    史上最も成功を収めたと言われている宇宙望遠鏡.重さ11ton,長さ13.1mもの大きさを持っている.地球上では大気による光のゆがみがでるが,宇宙空間ではそれを考慮する必要がないため作られた.これまで何度も故障しているが,その都度,宇宙飛行士によって修理されてきた.この望遠鏡を使って世界中の研究者が論文を出しており,2011年(計21年間)に1万件を越えたそうである.

       
    左はηカリーナ星雲,右はソンブレロ銀河(Credit: NASA)
    このような数えきれないほどの美しい星雲や銀河の観測を行った