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商船ができるまでー船舶海洋工学入門: 3. 商船ができるまで① 引き合い~設計

このガイドは、船舶海洋工学入門として、物流を支える商船について説明します。

このガイドの作成者

犬塚 秀世's picture
犬塚 秀世
Contact:
本ガイドは図書館学習サポーター/図書館TA(Cuter)として勤務した際に作成したものです。
勤務期間:2017年4月〜現在
当時の身分:大学院生(博士後期課程)
当時の所属:九州大学大学院工学府都市環境システム専攻

造船の流れ

商船ができるまでの大まかな流れは、以下の通りです。

これからひとつひとつ、詳しい内容を見ていきましょう。

設計①引き合いから契約まで

①引き合い, 仕様決定

まず、船を作って欲しい人(船主)が、造船所に対して見積もりを依頼します。

船主から造船所への打診から、実際に契約にいたるまでの過程を引き合いといいます。

引き合いのときには、船主から以下のような要求項目が提示されます。

・船の種類

・船速

・載貨重量などの積載能力

・航続距離

・航行区域

・港湾の制限や、パナマ運河の航行可否

パナマ運河を航行できる船のサイズは決まっており、パナマ運河を通行できるかによって航路が大きく変わってきますので、パナマ運河の通航可否は重要な要素です。ちなみに、パナマ運河を航行できる最大のサイズをパナマックスといい、多くの船がこのパナマックスぎりぎりのサイズで造られています。

 

②引き合い設計・見積もり設計

要求項目をもとに、設計者は船主に提案するための船型を検討しはじめます。船の設計の特徴として、1隻1隻が注文生産であり、1隻ごとに設計をしなくてはならないという点があります。また、実際に作ってみて具合が悪いといったことが許されません。例えば契約の際、船速や積載重量といったものを契約事項として取り決めるのですが、もしそれを満足できなかった場合、多大な違約金を支払う必要があり、場合によっては契約解除もありえるのです。そのため、図面の段階で、できた設計の検証を精度良く行う必要があります。性能の優れた船型の開発には、模型を使った水槽試験が実施されます。

船の形の検討の後は、出力推定計算です。指定の重量の貨物を積載し、要求される船速を出すために必要なエンジンの出力を、各造船所独自の推定式等を用いて計算によって推定します。

また、どのような構造の船にして、どのぐらいの厚さの鋼板を使うのかを検討し、船の重さを推定します。これを構造設計といいます。

さらに、船にはエンジンや発電機、居住区、クレーンといったいろいろな設備や装置が必要です。これら各種機器の仕様・要目を決め、配管・配線を設計していきます。これを艤装設計(ぎそうせっけい)といいます。

これらの設計から、船のコストを計算します。船の値段のことを船価といいます。

 

③応札・内示・詳細検討・契約

造船所の営業部門から船主に対して、応札が行われます。営業部門は船価と引渡し時期を提示し、それから要目表や概略配置図といった技術資料を添えて船主にオファーを出します。下に、要目表の例を示します。これは実際には存在しない船です。船の寸法や適用規則、最大搭載人員、さらにここには記載していませんが、エンジンの形式や燃料消費率等が要目表に記載されます。

 

船主は応札を受けて、内容を技術面とコスト面から検討し、さらに候補の造船所の仕事ぶりや財政状態を調査します。場合によっては追加の技術資料の要求や、直接訪問などが行われます。このような評価のあと、最適と判断した造船所に対して、船主は発注を内示します。

内示にあたっては確約書あるいは確認書が作成され、契約が確約されることになります。

内示を受けた造船所は、応札前の検討内容の見直しと、より詳細な検討に着手します。このとき、応札のときに提示した要目表を守ることが絶対条件となります。検討内容としては、

・仕様書の作成

・一般配置および居住区配置の検討

・機関室配置の検討

・船体構造の検討

・線図の検討

・性能確認計算

等が行われます。

造船所による検討がまとまり、船主との打ち合わせののち、いよいよ契約が締結されます。

設計②基本設計と詳細設計

契約後の基本設計では、契約前の検討内容の見直しや、より細かな性能確認計算、船殻構造基本図の作成等が行われます。また、建造にあたっては、国土交通省の建造許可が必要なので、その申請も行われます。

一連の基本設計が終了後、詳細設計部門への引き継ぎが行われます。詳細設計では、基本設計では表しきれないより詳細な部分の設計が行われていきます。引合・基本設計よりさらに多くの設計者が同時並行的に以下のような設計作業を進めていきます。

 

・構造設計

構造設計では、基本設計で作成した図面をもとに、より詳細にどのような部品(部材)を組み合わせて船の形を造るのかを決めていきます。また、部材を一枚の鋼板からどのように切り出すのかを決めて、鋼板の切断図を作成します。

 

・鉄艤装設計

鉄艤装設計では、貨物を積み下ろしするための荷役装置や、錨、舵取機、救命艇といった装備品の配置の計画や取付要領の検討等が行われます。例えば、自動車運搬船には、ランプウェイ(自動車が自走して船に入るための橋)が装備されますが、これも鉄艤装品の一つです。このランプウェイは、1基あたり数10トンから数100トンにもなるほどの重量物ですので、慎重で綿密な設計が要求されます。

 

・管艤装設計

管艤装設計では、船体の各種タンクにつながる配管、消火装置配管、貨物倉の通風、居住区の配管や空調などの設計を行います。まず、管の曲がりによる圧力損失などを考慮し、所定の流量が確保できることを確認したのちに、より詳細にどのように管を通すのかといった設計が行われます。

 

・木艤装設計

木艤装設計では、居住区の詳細な設計を行います。船の居住区画には、操舵室、乗組員室、食堂、厨房といった部屋が配置されており。それぞれの部屋内部の家具や照明、空調などの配置を検討します。

また、一般的に、船の居住区の騒音基準も、契約の段階で定められていますので、騒音対策も重要です。各部屋の騒音を計算で推定し、基準を満たせないと予想される場合は、壁や天井に遮音材を使用したり、床を浮床にしたりといった騒音対策がとられます。

 

・塗装設計

塗装設計では、船体を塗装するときの塗料の種類、厚さ、色、といったものをまとめます。また、注意を要する部分には、色と塗装範囲を指示する図面を作成します。

 

・機関艤装設計

機関艤装設計では、機関室の主機関や補機(主機関を運転するために必要なポンプや発電機といった様々な装置のことです)や機関室内の配管や通風ダクトの設計、またスクリュープロペラやプロペラ軸の配置の検討が行われます。一般的に、機関室内は船体部から独立して基本設計から詳細設計までが行われます。

 

・電気艤装設計

電気艤装設計では、発電機、配電、動力、照明などを扱う電気設計と、航海、通信、無線装置などを扱う電子設計が行われます。まず、船内で使用される電力を調査し、発電機の負荷が適切になっているかの確認が行われたのち、電気系統の設計や、具体的にどのように電線を通すのかという設計が行われます。