船は世界のどの国で多く作られているのでしょうか?
実は、世界の船の90%以上が、日本・中国・韓国の三カ国で作られています。
順位 | 国名 | 竣工量(千総トン) | シェア(%) |
---|---|---|---|
1 | 中華人民共和国(中国) | 25,703 | 36.6 |
2 | 大韓民国(韓国) | 24,504 | 34.9 |
3 | 日本 | 14,588 | 20.8 |
4 | フィリピン | 1,331 | 1.9 |
5 | ベトナム | 542 | 0.8 |
かつてはイギリス等ヨーロッパ諸国がシェアの多くを占めていましたが、1950年代から日本の造船業は大きく成長し、1956年にはイギリスを追い越し、世界一の造船国となりました。さらに1980年代からは韓国、2000年代からは中国の建造量が増加し、現在のような状況となっています。造船業界は全体的に大型再編の流れがあり、例えば2019年に世界の造船竣工量1位の韓国造船海洋(韓国)は、現代重工業と大宇造船の統合により生まれた持株会社で、2位の中国船舶集団(中国)は、中国の大きな造船企業である中国船舶工業集団と中国船舶重工集団が統合した新会社です。
日本の造船業界のようすも変化しています。2002年に、日立造船と日本鋼管の船舶部門が経営統合しユニバーサル造船が、また石川島播磨重工業(IHI)の船舶海洋部門が分社化しIHI MUが誕生しました。さらに2013年、ユニバーサル造船とIHI MUが経営統合し、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が操業開始しました。
2000年代までは、三菱重工業やIHI、三井造船といった総合重工メーカーが建造量の上位を占めていましたが、現在では、このJMUや、オーナー系の造船専業メーカーが上位を占めています。
例えば2016年のランキングで、日本で最も建造量が多いメーカーの今治造船(世界4位)は、愛媛県今治市に本社を置く造船専業メーカーです。瀬戸内沿岸周辺を中心に工場やグループ造船所を擁し、様々な種類の船を送り出しています。
また、建造する船の種類を絞って特化している造船専業メーカーもあります。大島造船所(建造量国内3位)は、バラ積み貨物船の建造に特化し、最適化された建造工程、設備を整備することで高い生産性を実現しています。
このように、日本には様々な特徴を持った造船企業があります。
船の設計や建造を行うのが、造船技術者の仕事です。現在、国内では8つの大学で造船技術者の育成が行われています。
東京大学、大阪府立大学、横浜国立大学、東海大学、大阪大学、広島大学、九州大学、長崎総合科学大学です。九州大学では、工学部地球環境工学科船舶海洋システム工学コースが該当します。
安全で有用な船舶の設計には、以下の3つのSが重要と言われています。大学の造船コースでは、これらの船舶の設計に重要な科目を系統的に学ぶことができるカリキュラムが整備されています。
1. Speed (速力)
海を進む船は水の抵抗を受けます。速く進むことができる船を作るためには、まず水から受ける力を理解することが必要です。
関連する科目:流体力学、抵抗・推進論など
2. Strength (強度)
十分な強度がなければ安全な船とは言えません。強度計算の基礎を学びます。
関連する科目:材料力学、構造工学など
3. Stability (安定性)
船の安定性, 復原性に関わる科目は、造船系の大学のみに必ず用意されています。
関連する科目:静力学、船舶運動論、船舶算法など
<参考 各大学のホームページ>
東京大学 システム創成学専攻/海洋技術環境学専攻
システム創成学専攻: http://www.sys.t.u-tokyo.ac.jp/
海洋技術環境学専攻: http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/otpe/
大阪府立大学 工学部 海洋システム工学科
http://www.marine.osakafu-u.ac.jp/
横浜国立大学 理工学部 建築都市・環境系学科 海洋空間のシステムデザインEP
東海大学 海洋学部 航海工学科
https://www.u-tokai.ac.jp/academics/undergraduate/marine_science_and_techno/ocean_engineering/
大阪大学 工学部 地球総合工学科 船舶海洋工学科目
http://www.naoe.eng.osaka-u.ac.jp/
広島大学 工学部 第四類 輸送機器環境工学プログラム
http://eng4.hiroshima-u.ac.jp/vesp/
九州大学 工学部地球環境工学科 船舶海洋システム工学コース
http://www.nams.kyushu-u.ac.jp/
長崎総合科学大学 工学部 船舶工学科
このガイド「商船ができるまで-船舶工学入門-」では、貨物や旅客を運ぶための船舶である商船について、設計から製造までを追って紹介しました。また、造船業界ガイドとして、世界や日本の造船業の紹介や、技術者養成について紹介しました。
造船は総合工学であるとも言われ、さまざまな分野の技術が広く関わっています。このガイドで紹介したのは、ほんの一部に過ぎません。
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