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生成AIの学術利用に関する実践的ガイド: 倫理と限界を考慮したアプローチ: 日本の大学はどのようなコメントをしているのか?

本ガイドは、AI、学術応用におけるLLMの発展、国内外の関連法規を簡潔に理解し関連する課題に対処するための示唆を提供します。

九州大学

九州大学は、学生向けに「九州大学の教育における生成AI利活用の注意点」と題した通知を発表し、5つの重要なトピックを取り上げています:

1)個人情報・機密情報の保護

2)著作権の確認と尊重

3)利用許可の確認・利用の明示

4)正確性の確保

5)生成AIを利活用する上での心構え

「生成AIの出力に他人の著作物の内容がそのまま含まれていた場合、これに気付かずに当該出力をレポート等に用いると、意図せずとも剽窃に当たる可能性がある」と剽窃について注意を促しています。

また、「生成AIの出力したものであっても、それを提出物に用いるか否かを判断するのは自分自身です。そして、生成AIの出力結果を提出物に用いる判断をするということは、それが自らの手で作成したものでなくとも、その提出物の内容全体に対し、自分自身が一切の責任を負うことになります」とも付け加えています。

最後に、九州大学の学生が国際的に成長するためには、グローバルな動向を常に把握することが重要であり、生成AIのような高度な技術を使いこなす能力は、これからの社会で必要とされる能力であることを強調しています。しかし、そのような先端技術を利用するためには、適切な知識と倫理観が不可欠であることを学生たちに喚起しています。

 

九州大学 2023年(令和5年)9月

九州大学 未来人材育成機構

参考:https://www.kyushu-u.ac.jp/f/54509/NotesForStudents.pdf

東京大学

東京大学理事・副学長は報告の中で、機密情報や個人情報を安易に生成AIサービスに送信することは、送信した内容を他人が取得できる可能性があり、危険であると述べています。入試問題の原稿や個人情報だけでなく、業務上知り得た機密情報、未公表の発明内容、研究費の申請内容などを含めないように注意し、対策を講じることを提案しています。また、将来的には、生成AIが作成したコンテンツが訴訟の対象になる可能性もあり、著作権から生じる問題にも言及しています。さらに、「学位論文やレポートを提出する際や、学術誌などに論文投稿する際に、生成系AIだけを用いた文書を提出してはならないという規定が出始めています」と続けています。

今回の報告書では、生成AIの利用を有害だとして禁止するだけでは問題は解決せず、問題を未然に防ぐための方向性を見出す行動が重要だと発表しました。

 

東京大学理事・副学長(教育・情報担当) 2023年4月3日

太田 邦史

参考:https://utelecon.adm.u-tokyo.ac.jp/docs/20230403-generative-ai

大阪大学

大阪大学の公式サイトには、「生成AIGenerative AI)の利用について」と題した学生へのメッセージが掲載され、さまざまな情報源を活用して個人の考えを発展させる高等教育の重要性が強調されています。同メッセージでの中で、出版物「生成AIGenerative AI)の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)論点の概観 : 20233月版」が紹介されています。

この出版物の33ページでは、生成AIが医療分野や学術論文に与える影響について論じています。学術出版物に誤りや盗用が含まれる恐れがあるため、生成AIの使用は科学的記録の完全性を損なう可能性があるという懸念について述べています。

 

大阪大学 2023年(令和5年)4月17

大阪大学総長 西尾章治郎

参考:https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2023/04/17001