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アニメと聖地巡礼――深夜アニメはまちを救う?: 聖地巡礼とアニメツーリズム

近年の深夜アニメとその「聖地化」現象について、まちづくり、まちおこしの観点から事例紹介をしていきます。

Subject Guide

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Hiroto Tai
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本ガイドは図書館TA(Cuter)として勤務した際に作成したものです。 勤務期間 :2014年3月~2019年3月 当時の身分:大学院生(博士課程)
作成者の所属:A04_法学府

はじめに

 

 

近年、特に若年層を中心に、深夜アニメ(注1)が親しまれつつあります。

この頃は年間100本以上もの深夜アニメが地上波等で放映されるようになり、目を通すだけでも一苦労なほどです(図1)。

普段アニメを見ないような方でも、例えば2013年の紅白歌合戦にアニメ「進撃の巨人」の主題歌が流れたことなど記憶にあるのではないでしょうか。

一昔前と比べて、普段の生活の中でアニメの話題を耳にすることも多くなり、もはや単なるサブカルチャーとは言えなくなりつつあるな、などと思ったりする時もあります。

 

そして、アニメファンの中には、ただアニメを見るだけでは飽き足らず、作中の舞台となった地域(いわゆるロケ地)へ訪問する熱心なファンもいます。
こうした彼・彼女らの行動を、俗に「聖地巡礼」などと言ったりします。

 

今回のガイドでは、この「聖地巡礼」をテーマにお話ししようかなと思いますので、少しでも興味をもたれた方は、ぜひお付き合いください。

 

図1

 

出典:筆者作成

 

 

 

注1:放送業界で言われるところの深夜枠(23時から翌午前4時)に放映されるテレビアニメを指す用語。

なぜ今「聖地巡礼」なのか

では次に、なぜそもそも「聖地巡礼」を、今、こうして取り上げるのかについて、説明しておきましょう。

 

上で述べたように、00年代以降、あるアニメの熱心なファンが当該アニメの舞台となった現実の地域を訪れる、いわゆる「聖地巡礼」の現象が現れるようになったわけですが(注1)、一方でこの「聖地巡礼」を、聖地となった地域の視点から見つめてみるとき、そこには大きな意義が認められるのです。

 

このことを簡単にまとめると以下のようになります。

 つまり、現在日本の各地域は、特に地方で顕著ですが、全国的な財政難や少子高齢化に直面し、危機に瀕しています。そこで、各々の地域はこの窮地から脱すべく、自治体を中心に様々な処方箋を考えているわけですが、こうした潮流の中で、地域に存在する資源を掘り起こし、それを活用することでまちおこしをしようという一種の流行が生まれました(注2)。

 しかし、当然ながらあらゆる地域がまちおこしに挑戦・成功できるわけではなく、これといった地域内資源が見つからない地域、あるいは資源はあってもそれをどう活用していくかで悩む地域は多いです。

 こうした中で、「聖地巡礼」は、地域に聖地という新たな資源を生み出し、あるいは既存の資源に付加価値を与えることができるという点で、画期的な現象となるわけです。

 実際に、埼玉県の旧鷲宮町が、2007年に放送されたアニメ「らき☆すた」の聖地となることでまちが活性化したという事例も生まれ、これを皮切りにアニメと「聖地巡礼」を活用した新たなまちおこし手法(以下、アニメツーリズムと呼称します)が、次第に注目されるようになってきました。

 

このように、アニメツーリズムは極めて新しい現象ですが、旧鷲宮町の事例を皮切りに、急速に普及しつつあります。

地域の側も、ただ偶然に任せてアニメファンが訪れるのを待つばかりではなく、積極的にアニメを誘致したりタイアップしたりする動きも増えてきました。

次のページからは、アニメツーリズムの代表的な事例を具体的に紹介していくわけですが、皆さんに理解を深めてもらうために、このページでは最後に、アニメツーリズムを分析する際の基本的な枠組みを紹介しておこうかと思います。


注1:「聖地巡礼」の源流は、90年代から、既に見られている。先行研究で挙げられているものとして、「天地無用シリーズ」や「美少女戦士セーラームーン」などがある。また、00年以降、ファンの間で「聖地巡礼」という言葉が定着し、広く行われたものとして、2002年の「おねがい☆ティーチャー」がその先駆け的存在とされることが多い。参照、岡本健(2009)「アニメ聖地巡礼の誕生と展開」『メディアコンテンツとツーリズム:鷲宮町の経験から考える文化創造型交流の可能性』北海道大学観光学高等研究センター文化資源マネジメント研究チーム。

注2:地域発のまちおこしを扱ったCuterガイドとして、参照:「地域で取り組むまちづくり」(https://guides.lib.kyushu-u.ac.jp/communitydevelopment

アニメツーリズム研究のための分析枠組み


アニメツーリズムを扱う研究が登場したのは比較的最近のことで、未だ統一的な研究戦略やアプローチを確立できているわけではありません。

多くの研究では、観光社会学における、コンテンツツーリズム研究(その多くはドラマや映画のロケ地となった地域を題材とする)の枠組みを援用しています。

そこでは、観光をめぐるアクターとして、「ツーリスト」、「製作者(プロデューサー)」、「地域住民」を設定し、その背景にある社会文化等をも考慮しつつ3者の相互作用の分析を行うという手法が採られています(図2)。


図2:アニメツーリズムの分析枠組み

出典:筆者作成


次頁からの事例紹介では、この中でも特に「地域住民」に注目して記述しつつ、場合に応じて「ツーリスト」や「製作者」にも触れていきます。

事例ごとに既存研究の蓄積に差があるため、統一的な叙述とはなっていないのですが、そこはご容赦ください。


それでは、さっそく事例を見ていきましょう。

まず初めに、聖地巡礼によるまちおこしの代表格といわれる「らき☆すた」と鷲宮町の事例をご紹介します。