ポスト構造主義以降の思想の中心的な人物にジャック・デリダがいます。
デリダの思想は人文科学全体にかなりの影響を与えており、現代思想でもとくに重要です。
そしてデリダ以降の思想には、どのようなものがあるのでしょうか。
デリダの思想の代名詞となっているのが「脱構築」です。
それは、構造主義の言う「構造」を内部から破壊するための方法のことです。
例えば、男性/女性という二項対立があり、男性のほうが社会の中で強い位置にあったとします。
この二項対立を脱構築するためには、「男性」という概念そのものが「女性」なしでは、成り立たないことを指摘すればよいのです。
あるシステムにおいて、排除されたり、抑圧されたりするものがあったとしても、その抑圧されるものなくしては、システムが成り立たないことを示すことで、システムを内部から自壊に追い込むのです。
つまり、あるシステムの矛盾を突くことで、システムを破壊するのですが、それだけでは脱構築にはなりません。
脱構築とは、システムによって否定されたものを「肯定」する思想なのです。
社会の中で抑圧されたものを肯定することで、あり得るかもしれない「もう一つの可能性」を提示すること。
それは、男性中心主義的な社会が抑圧した、男女平等の可能性を提示することです。
東浩紀『存在論的、郵便的』には、この思想が詳しく論じられています。
このような脱構築の思想が、日本では柄谷行人、浅田彰らニュー・アカデミズムによって導入されました。
柄谷行人はカントやマルクス、サルトル、デリダらから影響を受けながら、資本=ネーション=国家に対抗する思想を練り上げました。
柄谷の思想は他者を自由な主体として扱うというカント的、実存主義的なものです。
哲学や思想とは、現実の社会を変えるためのものです。
他者の自由と複数性を肯定する方向へと社会を変えていくために、根本的にすべてを「疑う」ことが必要なのです。