“あの人がいなかったら私は今ここにいない。十代の私には神様で二十代の私の親友よ。”
友情、好意、憧れ、尊敬、劣等感…人に対して抱く思いは様々です。その中であなたの青春を彩り、今のあなたを形作ったのは誰へのどんな気持ちですか?
私にはあの人がいなかったら、今の私はいないと言える人がいます。
スロウハイツの神様の赤羽環もその一人です。
赤羽環はこんな生き方してみたいなという”憧れ”と言えるかもしれません。負けん気が強く、これでもかというくらい反骨精神にも富んでいる。人の好き嫌いが激しく…ってなんだかまともな人には聞こえませんよね。でも彼女のように気持ちよく激昂し、自身で磨きをかけた才能で人をうならせ、だまらせながら生きていけたらどんな世界が見えてくるのだろうと憧れます。彼女に残る純粋さ、そして複雑さにも魅了されます。
“私にはこんなに嬉しく思えることがある。そのくらい私には好きなものが、好きな人がいる。”
と環が何気なく言葉にするシーンが大好きです。
何気ないセリフ、描写の中にも胸に残る言い回し、表現がしてあって、琴線に触れる言葉に出会えるのも辻村作品の魅力です。