Q. 隕石ってどこから飛んでくるの?
→ ほとんどが小惑星帯(火星と木星軌道の間)
前の章で、「隕石は小惑星の破片」であると述べました。では、小惑星とはいったい何者なのでしょうか?
私たちの住んでいる地球は、太陽を中心とした惑星系(=太陽系)に存在しています。もちろん、太陽系には地球以外にも様々な天体が存在しています。特に、8つの惑星(水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星)とその周りを公転する「衛星」(月、エウロパ、ガニメデ、etc)が有名だと思います。「小惑星」は、惑星や衛星と同じ太陽系天体の1つで、火星と木星の公転軌道の間にある「小惑星帯」と呼ばれる領域に多く存在しています(図2-1)。
太陽系が誕生したとき、太陽の周りには「チリ(正確には鉱物や有機物、氷の塊)」が多量に存在していました。太陽の進化とともに、チリはお互いに衝突・合体を繰り返し、最終的に惑星や衛星のような巨大な天体を形成しました。小惑星は、その成長過程で惑星ほどは大きくなれなかった、もしくは天体同士の衝突で小さく砕けてしまった天体です。そして、ほとんどの隕石は小惑星の破片であると考えられています。
隕石のふるさとが小惑星帯であると考えられている理由は2つあります。1つ目の理由は、隕石が落下する際にその速度や角度を観測しコンピュータを使って軌道計算をすると、小惑星帯に行き着くことです。2つ目の理由は、隕石の表面が反射する光のスペクトルと小惑星のそれが非常に似ているということです。小惑星は隕石の生みの親であることから、「隕石の母天体(ぼてんたい)」とも呼ばれています。隕石は地球からおよそ4億kmも離れた小惑星帯から、宇宙を旅して地球へやってくるのです。
図2-1 太陽系の概略図。左から 太陽、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星。火星と木星軌道の間に小惑星帯が存在している。
画像:NASA
Q. 小惑星って、なに?
→ 惑星ほど大きくはなれなかった天体
前項にも書いてありますが、小惑星は惑星や衛星ほどは大きく成長できなかった天体です。基本的には太陽系が現在の姿になる前に存在していた「チリ」が集積したものです。小惑星帯には数十万を超える小惑星が存在していて、様々な種類の隕石が存在することから、その母天体である小惑星も多様であることが容易に想像できます。
最も一般的である「小惑星表面の反射スペクトル」を用いた分類法では、10以上の種類が存在します。「はやぶさ」で有名となった 「小惑星イトカワ」はタイプSに分類されます。この「S」は「Sotny(石っぽい)」もしくは「Silicate(ケイ酸塩鉱物)」に由来していて、石質隕石の母天体の1つと考えられています。また、「はやぶさ2」が現在(2016年)向かっている「小惑星リュウグウ」はタイプCに分類され、有機物に富むと推測されています(図2-2)。
このように小惑星帯には多様な小惑星が存在していますが、ほかにも小惑星が存在しているところが太陽系内にはあります。惑星と同じような公転軌道に存在している「トロヤ群」がその1つで、火星や木星、海王星の軌道上に存在していることがわかっています。特に、木星トロヤ群に存在する小惑星は、小惑星帯よりも太陽から遠いところで形成したと考えられているため、小惑星帯に存在する小惑星と物理・化学的に異なっていることが予想されています。このため、近年になって注目を浴びつつあり、木星トロヤ群小惑星からのサンプルリターンを計画している研究チームも存在します(木星のトロヤ群小惑星からサンプルリターン JAXA)。今後の探査計画の発展次第では、小惑星の種類もさらに増えるかもしれません。
Q. 全ての隕石が小惑星由来?
→ 衛星や惑星由来の隕石も存在します
ほとんどの隕石は小惑星由来ですが、衛星や惑星からやってくる隕石も存在します。現在、公式に惑星もしくは衛星由来と認められているのは、「火星隕石(別称:SNC隕石)」と「月隕石」だけです(図2-3)。
火星隕石は「Shergottite ・ Nakhlite ・ Chassignite」に分類され、その頭文字をとってSNC隕石と呼ばれます。専門の研究機関で火星由来の隕石であることが明らかとなりましたが、火星大気と同じ成分のガスが検出されたことが最も重要な手がかりだったようです。また、火星隕石の一つである「ALH84001」から微生物に似た構造が発見され火星に生物がいた証拠であると話題を呼びました。しかし、これが生物の痕跡なのか、はたまた無生物的に形成された構造なのかということに関しては、いまだに議論がなされており明らかになっていません。
月隕石は、1982年に南極で初めて発見されました。アポロ計画で持ち帰られた「月の石」と化学・鉱物組成などが似ていることから、月が起源であることが明らかとなりました。月隕石は、月面にほかの隕石が衝突したときに宇宙空間に飛び出した月面の物質です。アポロ計画では探査船の着陸した地域の試料しか得ることができませんでしたが、この月隕石は探査船が行くことのできないような場所からでもやってくるので、月全体の姿を明らかにする重要な手がかりとなっています。
「水 金 地 火 木 土 天 海 冥」
太陽系の中で、水星から冥王星までは知っている方も多いと思います。では、さらにその先には何があるのでしょうか?
その先には、「カイパーベルト(Kuiper belt)」や「オールトの雲(Oort cloud)」と呼ばれる、主に「彗星」が存在する領域があります(下図)。彗星は、小惑星と同様に惑星ほどは大きくなれなかった天体です。しかし、小惑星が主に鉱物から構成されるのに対し、彗星は氷がその大部分を占めます。そのため、太陽に近づくと「彗星の尾っぽ」が発生するのです(下図)。オールトの雲は、太陽から約「10万天文単位」まで広がっていると考えられていて、「1天文単位」は太陽から地球までの距離で1億5千万kmです。10万天文単位を光年にすると、1光年ほど。太陽系の端まで行くのに光でも一年かかるんですね!いや~、太陽系って思ったより広い!
太陽系とその外側の外観図。海王星の先には、カイパーベルト(エッジワース・カイパーベルトとも呼ばれる)が存在し、さらにその先にはオールトの雲が存在してると考えられています。
画像:自然科学研究機構 国立天文台「彗星」 (2017/2/18) http://www.nao.ac.jp/astro/comet/ ※現在リンク切れ
彗星とその尾の写真(ヘールポップ彗星)。明るく光っている丸い部分が「彗星」で、その後ろは「彗星の尾」。
画像:自然科学研究機構 国立天文台「彗星」 (2017/2/18) http://www.nao.ac.jp/astro/comet/ ※現在リンク切れ
図2-2 左から:小惑星「リュウグウ」、スカイツリー、小惑星「イトカワ」、東京タワー。
画像:JAXA「小惑星リュウグウとは?」 (2017/2/19) http://www.hayabusa2.jaxa.jp/mission/ju3/
図2-3 上が火星隕石(ALH84001)、下が月隕石(MAH88105)。
画像 上:NASA「Carbon Compounds from Mars Found Inside Meteorites」 (2017/2/19) https://www.nasa.gov/mission_pages/mars/multimedia/pia00289.html ※現在リンク切れ
画像 下:ワシントン大学「Lunar Meteorites」(2017/2/19) http://meteorites.wustl.edu/lunar/moon_meteorites.htm