動物実験を行うためにはいくつかのステップを経ることが必要です。
こんな感じになります。九州大学の動物実験の詳細はコチラ。
ステップ① まず、実験計画を立案します。動物実験が必要となった場合は、各施設で実施される動物実験教育訓練を受講し、動物実験従事者登録を行わなければなりません。
ステップ② 実験計画書を作成し、審査へと回します。
ステップ③ 実験計画書が委員会により審査され、問題があれば修正を要求されます。
ステップ④ 実験計画に問題がないと判断されれば承認が下り、動物実験を行うことが可能となります。
ステップ⑤ 動物実験の経過報告書や自己点検報告書などを提出し、適正に動物実験が実施されていることを確認します。
そう、すぐには動物実験を行えません。
それは、動物愛護の観点からガイドラインや規制が設けられているからです。
日本では2005年に「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正され、動物実験の国際原則である「3R」
Replacement
Reduction
Refinement
に基づいて動物実験を計画し実施することが義務付けられています。
3Rは、1959年にイギリスの研究者RussellとBurchによって提唱された、世界的な動物実験の基準理念です。
Replacement
他手段への転換。
マウスなどの動物を使った実験ではなく、in vitroでの系や、ショウジョウバエなどの系統発生学的に低位のモデル動物を用いた系に変更できないかを検討する。また、in silicoで代用できないかを検討する。
Reduction
使用数の削減。
動物実験を必要以上に繰り返していないか、目的の結果を得るために統計的に適切な数の動物を使用しているかを検討する。
Refinement
苦痛の軽減。
動物に不要な苦痛を与えていないかを検討し、必要に応じて麻酔などを用いて苦痛の軽減に努める。また、実験技術の向上に努め、未熟な手技が原因となる実験の失敗や不要な苦痛を動物に与えることを排除するようにする。
これらは動物倫理の観点からも研究者が守らなければならない理念です。
2005年の法改正を受けて、文部科学省の指針「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本方針」が作成されました。
この指針中で、動物実験を実施するには大学や研究機関が自ら組織する動物実験委員会による動物実験計画の審査を受け、それを基に大学や研究機関の責任者から承認を得ることが必要となっています。(ステップ③)
また、動物実験を行う者は、所属機関の動物実験委員会が実施する講習会を受講することが必要となっています。(ステップ①)
これらが守られていない場合は、法律上罰則が定められています。(動物の愛護及び管理に関する法律)
動物実験計画書に加えて、遺伝子組換え実験計画書というものがあります。
遺伝子組換え動物(生物)を用いる場合には、遺伝子組換え実験計画書を提出し、動物実験計画書と同様に審査を受ける必要があります。
これは、「遺伝子組換え生物等の使用等の規則による生物の多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法)に基づくものです。
カルタヘナ法の概要は、「国際的に協力して生物の多様性の確保を図るため、遺伝子組換え生物等の使用等の規制に関する措置を講ずることにより、カルタヘナ議定書の的確かつ円滑な実施を確保」することです。
遺伝子組換え生物等とは、「細胞外において核酸を加工する技術、異なる分類学上の科に属する生物の細胞を融合する技術によって得られた核酸又はその複製物を有する生物」と定義されています。対象となる生物は、ウイルス、ウイロイド、細菌、真菌、動植物の個体・配偶子・胚、種子などで、ヒト、さらに、培養細胞、DNA断片など、生物ではないものは対象外です。
また、遺伝子組換え生物等の使用形態により必要な手続きが異なります。
機関内承認で実験ができるものと、大臣の承認が無ければ実験が行えないものがあります。
「研究第二種省令別表第一に該当する生物等に係る組換え実験を行う場合及び細胞融合実験を行う場合、拡散防止の大臣確認を要する。」とあります。詳しくは文部科学省カルタヘナ法についてを熟読してください。なかなか難しい内容ですが守らなければならないものです。
実験者自身でどのような承認が必要であるかを調査し、機関の担当者(倫理委員会など)にも確認するなど、必要な手続きが執られるよう注意しなければなりません。
実験に用いる動物は、遺伝子組換え生物が含まれている場合が多いかと思われます。
遺伝子組換え実験計画書が承認されなければ、遺伝子組換え動物を用いた実験は行えません!
九州大学での手続きの詳細はコチラ。