教育学をかじる（1）―学校と教育学の誕生―: 4.　おすすめ文献紹介

初めて「ボラード」という単語を目にする方も多いのではないでしょうか。私のハジメテの「ボラード」との出会いは、本書ではなく、一昔前に「へぇ」といわしめるトリビアの紹介を主題とした某テレビ番組でした。
本作品で描かれる世界観は、そんな平和とは相容れない正反対の世界です。小学校5年生の少女の視点から、周囲の人間の狂気じみた「結び合い」の精神が滑稽さを交えながら淡々と描かれます。町の名前を連呼する「海塚讃歌」を合唱させられる主人公やクラスメートの描写は、教育という営為の危険性にも訴えかけるもので、教育学の参考図書としても使用されるほどです。

日本のスクールカーストの問題を描いた青春ものとして選びました。主人公の五感を通して描き出される、学校を介した人間関係のありようは、決して爽快なものではありません。でも、その暗さの中にあるリアリティは本物です。本作は、2014年に芥川賞を受賞した作品でもあります。

「マクドナルで隣り合わせた男の携帯電話を手に入れてしまった俺は、なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった。そして俺は、気付いたら別の俺になっていた」という現実離れした設定からスタートするおはなしです。増殖する『俺』の襲来に読者である我々も『俺』の一人になってしまうかのような没入感を覚えます。
一見、不思議なストーリー展開のようにみえて社会学や政治思想に繋がる論理性があり、考えさせられる内容でもあります。是非手に取って読まれてみてください。

他人との優劣を初めて意識したのはいつのことでしょうか。大学に進学するまでのともすれば非常に狭い世界の中では、テストの点数として数値化されたものがその人のステータスとして反映されていたような気がするのは私だけでしょうか。
本書では、人種差別を一つのテーマとしながら、科学史が差別に加担してきた事実を痛烈にかつ説得力をもって批判しています。科学を盲目的に信仰することの危うさについて考えさせられます。

「子どもの貧困」という言葉が紙面やネット上のコラムなどで取り上げられるようになってすでにかなりの年月がたちました。今の「私」があるのは、「自分が頑張ったから」でしょうか。「出自によって人生が左右されるようなことがあってはならない」などの言葉で現されてきた理想論と現実とのギャップを私たちはどれだけ認識できているのでしょうか。日本のリアルの一旦をこの本を通して覗きみてください。

本書は、九州大学大学院人間環境学研究院の元兼正浩教授著、監修、編集による、教育原理を探究するためのテキストです。「子どもの権利条約」を手掛かりに、条項ごとの解説に加え、逐条解説と、平易な言葉で今日的なテーマに関する紹介がなされており、教員を志す学生にもおすすめのテキストです。「すべての子どもに権利・人権を保障するとは」どういったことなのか、本書を通して考えることができます。