書評(本の紹介文)を読んだことはあっても、書評を書いたことがある人って中々いないのではないでしょうか。
そもそも、書評をする人は、(それが仕事である場合はのぞいて)どんな動機で書いているのだろうと
不思議に思う人も多いはずです。
私の場合、ひとつは、自分用の読書メモとして、簡単な書評らしきものを書き残しておくという意味があります。
ですが、やはり「メモ」ではなく「書評」であれば、人に読んでもらうことが目的だと思います。
自分が読んで面白かった、感心した、勉強になった本を、
他の人に伝えたい・共有したいという思いが書評をする際の大きな動機でしょう。
しかし、インターネットが未発達であった時代は、書評をするといっても、それを発表する場がかなり限られていました。
そのため、書評をするという行為はかなりハードルの高いものであったと考えられます。
それに対して、昨今では、ブログや各種SNSを通じて個人が手軽に書評を発表することができるようになりました
(他には、某大手通販サイトのレビュー欄に書評を載せる人とかもいますよね)。
「読書メーター」や「ブクログ」など、本の紹介(≒書評!)に専門化したサービスも登場しています。
ずいぶんと便利な時代になったものです。
書評っぽいことをやったのは、中学時代の読書感想文が最後だよ!という方も、
このガイドを読んだのを機に、書評、はじめてみませんか?
少しでも興味を持っていただいた方は、上記サービスや、SNS、あるいはブログ上で、
それこそ140文字(Twitter)くらいの簡単な書評から始めてみるのが良いと思います。
案外に楽しくて習慣になってしまうかもしれませんよ!
ところで、大学生の皆さんが書評をする(せざるをえない)機会と言えば、
講義で書評型のレポート課題(小論文)が出された時だと思います。
一冊ないし数冊の本を読んだうえで、それを論評せよ、という形式の課題ですね。
対象となる書籍はあらかじめ指定されている場合もありますし、
おおまかなテーマだけが決められてその枠内で自由に選ぶ場合もあります。
しかし、おそらく大半の講義では、どうやってレポートを書けばいいのかを、丁寧に教えてもらえることはありません。
余談ですが、大学院生や研究者になれば、「書評論文」*なるものを
(特に人文社会科学系の人たちであれば)一度は書くことになります。
ある一冊の本(多くは新刊本)について、同じ専門分野の研究者の視点からそれを論評するわけです。
しかし、通常の論文指導は丁寧な研究室やゼミでも、
書評論文のハウツーをしっかりと訓練するような機会はほとんどないのが実情だと思います。
以下で述べるように、多くの書評論文で(多分、なんとなく)共有されているテンプレート**があるので、
あとはそれを参考に頑張れということでしょうか。
* 書評は英語でbook reviewですが、ここで言う「書評論文」は、特定分野の先行研究を総括するいわゆる「レビュー論文」ではありません。念のため付言しておきます。
** 以下で述べる書き方の例は、あくまで学部生のレポート課題を念頭に置いています。
当然、アカデミックな書評論文に求められる要素はかなりの程度省略されているか簡略化されています。これも念のため。
本題に戻って、では、皆さんが書評課題に遭遇したときに、どう対処していけばいいのでしょうか?
ここでは、書評課題を書く際の、基本的な構成の仕方を紹介しましょう。
学部のレポート課題なんかですと、次の3つのパートに沿って構成されることが多いです。
(あくまでテンプレート、つまり「よくある書き方」なので、参考にするか否かは自己責任でお願いします)
また、各部分の文章量については、特に決まりはありませんが、①+②:③=1:2くらいが適切ではないでしょうか。
つまり、3000字のレポート課題が出された場合は、導入+紹介で1000字、論評2000字となります。
書き方次第で前半がもう少し長くなる時もありますが、それでも1:1くらいまでに抑えておくのが安全です。
あまりに論評部分が薄くなると、それだけで(先生の)評価を下げる可能性があります。
加えて、課題レポート特有の事情として、講義の中で先生が触れたポイントについては、
あなたの文章中でもできるだけ取り上げるようにしましょう。
これは別に先生のご機嫌を取れということではなく、それがおそらく重要なポイントだからです。
特に課題書籍が指定されるような場合は、なるべく意識してみてください。
なお、ここでは、「ある本を読んでそれを論評せよ」といった比較的素直な書評課題を念頭に置いていますが、
それ以外にも、「○○というテーマに関して、本を読んだうえで論じなさい」といった課題が出る場合があります。
この場合は、本それ自体というよりは、それを「たたき台」にしてあなた自身の見解を述べることが重視されていますので、
当然ながら、③の部分(特に著者の見解に対するあなたの評価・姿勢)をより分厚く書くべきでしょう。
複数冊の本を対比しながら書く場合もあり、その際はそれぞれの著者を対決させながら、
あなた自身の見解を主張することになります(通常の論文スタイルに近くなっていきます)。
如何でしたでしょうか?
少しは皆さんのお役に立つ情報を提供できていれば幸いです。
よろしければ、レポート・論文の書き方に関する次のガイドも併せてご参照ください。
本を使った戦い、すなわち知的書評合戦。それが「ビブリオバトル」です。
参加者は、自らの選んだ本がいかに面白く興味深いのかを口頭でプレゼンするよう求められます。
書評は文章を書くこと、という観念はもう古いのかもしれません。
近年、このビブリオバトルなるものが、にわかに注目を集めつつあります。
ビブリオバトルとは、一言でいえば「本の紹介ゲーム」です。
2007年の京都大学、壁一面が本棚で埋められたとある理系研究室で誕生しました。
当初は、一冊の本を選んでみんなで輪読して意見を交わすという、
オーソドックスな勉強会スタイルとは異なる学びの手法として開発されたようです。
その後、ネットメディアやmixiなどのSNSを通じて徐々にその存在が知られるようになり、
また2010年に紀伊国屋書店の主催で大会が開催されるようになると、ビブリオバトルは急速に普及していきました*。
* ここまでの記述は、谷口(2013)に依拠しています。
ビブリオバトルはゲームなので、そのやり方にはルールがあります。
公式ホームページによれば、ビブリオバトルは次の4つのステップで進められます。
結構、簡単にできそうですね。
複雑な事前準備や特殊な道具も必要ないので、人さえ集まれば、
「大学、高校、中学校、小学校、書店、図書館、一般企業、地域イベント、就職活動イベント、商店街、留学生との交流、
語学教育、そして一般家庭(家族内!)」まで(谷口2013:17)、様々な場でビブリオバトルに触れる機会がありそうです。
ここ九州大学でも、現在までビブリオバトルが公式・非公式を問わずに開催されています(参考→九州大学ビブリオバトル)。
皆さんも、この機会にぜひチャレンジしてみてください。