19世紀数学者たちは、生物学の分野である、「植物界」に特別な数列を見出そうとしました。花を持つ植物の花弁の枚数、茎に沿った葉の並び方、パイナップルや松ぼっくりの構造などです。
離弁花をつける植物の花弁の枚数は、無理のない枚数であればどんな数の花弁でも持つように思われますが、実際はある特定の枚数の花弁をもつようになっています。それは、3枚、5枚、8枚、13枚、・・・といった具合です。例を挙げると、3枚の花弁を持つ植物に単子葉植物のユリ、チューリップがあります。5枚だと双子葉植物のアブラナ、ナデシコがあります。8枚は、クレチマスという植物があります。
茎に沿った葉の並び方は、専門的には葉序と呼ばれます。いくつかの植物では二対の葉が互いに反対方向に並ぶ単純な葉序が知られ、このような並び方を対生と呼びます。例を挙げるとイネ科の植物のコムギや、タケなどです。しかし、多くの植物ではらせん状に並び、茎の上で次の葉は、前の葉に対して特定の角度を開き生えています。それは効率よく光合成をおこなうために、日光が当たった時により広く葉を広げる必要があるためです。高木のブナは120度の開きがあり、食卓に並ぶハクサイは144度、キャベツは135度です。これらの葉の開きを分数であらわすと、対生の植物では1/2、ブナは1/3、ハクサイは2/5、キャベツは3/8となることが分かります。分母に注目すると、2、3、5、8・・・、分子は1、1、2、3・・・といった特定の数列が浮かんできます。
パイナップルは表面が六角形が組み合わさった形をしています。この六角形はそれぞれが元々一個の実で、成長とともにつながったのです。隣り合った六角形同士はたどることができ、3方向のらせんをたどることができます。パイナップルを葉っぱを上にして考えると、右上から左下に向かうらせんAと、左上から右下のらせんB、横断するらせんCとします。らせんA,Bは8もしくは13本たどることができます。そしてらせんCは5本たどれます。松ぼっくりは下からみると三角形が次々と組み合わさってできています。隣り合った三角形同士もやはりたどることができ、3方向のらせんをたどることができます。辺で接する2つのらせんは5本、8本たどれ、頂点で接するらせんは13本みつけられます。パイナップルや松ぼっくりは果実と考えると元は花の構造を引き継いでいるのですから、花弁の数と対応した、5、8、13といった数が出てきて当然といえます。
上で上げたように植物界には、1、1、2、3、5、8、13・・・といった数列を見つけることができます。これはミツバチの話で取り上げたものと同様、フィボナッチ数列です。植物界にはこのように、多々フィボナッチ数列が見られるのです。
参考:イアン・スチュアート 著,水谷淳 訳.数学で生命の謎を解く 、2012年
生きる目的とは何か?
『数学で生命の謎を解く』~第17章:生命とは何か? より
p367
ラングトンはすでに、どんなことが可能であるかを示すために、実際のコンピュータに実装した初の自己複製する「生命体」を発明していた。しかし複製は、生物の謎めいた特徴の一つに過ぎない。進化の可能性を開くのは、増殖-ときにエラーを含む複製-である。その際に必要となるのは、その変化を保持してその変化を破棄するかを決定する選択原理だけだ。
生物はその生涯の中で、ただ単に自己の複製を遺すのではなく、遺伝子という可変性のあるものを受け継ぎ、増殖、進化します。進化は生物に多様性をもたらし、周辺環境に適応したり、他の生物との関係性を変化させます。多くの生物が試行錯誤をし長い年月をかけて進化してきました。それは小さな変化の途方もない集積と言えます。
ヒトは科学技術を進歩させることで、遺伝子の変化とは比べることができないほど速く、周辺環境を克服してきました。これは他のどの生物をとっても成し遂げられないことです。 ヒトとして生まれたということですでに、進化の可能性を他の生物に対して、アドバンテージとして持っているのです。生きる目的は周辺環境に適応しながらただ生を全うすることではなく、生きる目的とはこの世の中になにかしら変化をもたらすことだと私は思いました。