(http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cd/Transtroemer.jpg)
スウェーデンの国民的な詩人、心理学者。1931年にストックホルムで生まれ。1954年に処女詩集『17編の詩』を発表。父はジャーナリスト、母は教師、幼少時に離婚、母とフォルクンガに移り住む。1990年に重い脳卒中に見舞われる。言語発声能力を失うが、試作は続ける。『悲しみのゴンドラ』、『大いなる謎』二詩集で世界的に高い評価を受ける。1993年に自伝『記憶がわたくしを見ている』を発刊。2001年に『航空便』を発刊。彼が日本俳句に出会ったのは1960年代の始め、アメリカで俳句関係の論文を読んだ事がきっかけ。二十世紀のヨーロッパで最後の「詩歌の巨匠」と言われたトランストロンメルは、谷川俊太郎とほぼ同じ詩歴をもっている。同じ1931生まれ、十代後半に詩を書き始め、スウェーデンの叙情詩表現に驚異的な革新をもたらした。現在、北欧の代表的詩人とされる。心理学者としての実務も併行して来た。詩集15冊で、比較的寡作だが、その翻訳はすでに60か国語を超え、内外に傾倒する読者を持つ。文学賞数は25に及ぶ。
(参考文献:『集英社世界文学事典』2002年発行 1103頁/『現代詩手帖』2012年2号 思潮社)
「野うさぎと樫の樹々」 エイコ・デューク訳(『現代詩手帖』2012年02月号)
「野うさぎと樫の樹々」は「俳句詩」と呼ばれる4篇の作品で構成されている。
野うさぎ一匹が消えた
見知らぬ出口を抜け出たものか
野の風景から去った。
*
風吹きすさぶ春の一夜。
なべて 樫の樹々が
空の扉を打つ。
*
遠ざかり行く足音が
床に沈みこんだ
さながら梁に落ちた葉のように。
*
森が空に浮き--
松の枝々は伸び広がり--
そして 森ごと飛び去った。
この曲は当時71歳であった作曲家フランツ・リストが1882年頃、友人であり、娘婿であり、好敵手でもあるワーグナーの死を予感して作った曲。曲名は「悲しみのゴンドラ」。この曲は第一稿と第二稿があり、どちらも暗さを帯びる。詩人トーマスはピアノ演奏に優れ、この二人の偉大な作曲家をモチーフに詩「悲しみのゴンドラ」を作る。