特徴的な症状は肝臓の障害が進行してから見られるものが多いです。
肝臓が障害を受けている時に最も頻度が高く見られる症状はただの疲労感です。
目に見えて症状が出るのは肝臓の障害が進行してからということもあり、気づいたときには肝臓がぼろぼろといったことが多かったことからも肝臓は”沈黙の臓器” と呼ばれてきました。
しかし現在では肝疾患患者は症状がないままでも、献血時や職場の健診時の採血や診察で見つかることもしばしばあります。
肝機能検査が広く用いられるようになったことで肝障害の存在が比較的簡単にわかるようになり、同時に肝疾患が疑われてもそれを否定できるようにもなりました。
肝臓がやられた時の症状としては、黄疸、暗褐色尿、灰白色便、掻痒、浮腫、出血傾向、振戦、くも状血管腫、女性化乳房などと数えだせばきりがないくらいあります。
では肝臓のどこの機能がやられて、こういった症状が出てくるのでしょうか?
先ほど肝臓は代謝を担当していると書きましたが,ここでは各代謝がやられるとどうなるのかを見てみましょう。
①糖代謝異常
グリコーゲンとしての貯蔵やグルコースとしての供給に障害が出てくるため、耐糖能異常や低血糖といった症状が出てきます。
*耐糖能は血糖値を正常に保とうとする作用のことです。
②タンパク質代謝異常
アルブミンは血中に存在し、水を血中に蓄えるような作用をしているためアルブミンの合成が障害されると、水が細胞の方に漏出していまい浮腫や腹水といった症状が出る一因となります。
血液凝固因子の合成が障害されたことにより出血時間が延長します。
タンパク質の分解の際に生じたアンモニアの無毒化が障害されたことを一因として、意識障害羽ばたき振戦といった多彩な精神・神経症状をきたす肝性脳症が見られるようになります。
③脂質代謝異常
中性脂肪が過度に蓄積した脂肪肝や、逆に脂質吸収不良による白色便が見られたりします。
④ビリルビン代謝障害
ビリルビン代謝が障害されると黄疸やそれにともなう掻痒が見られたり、暗褐色尿、灰白色便などが見られたりします。
⑤ビタミン代謝異常
ビタミンD代謝異常による骨軟化症が起こりえます。
⑥ホルモン代謝異常
エストロゲンの排出が障害されることでエストロゲンが過剰になると、エストロゲンの作用で毛細血管が拡張し、くも状血管腫や手掌紅班が見られるようになります。他には女性化乳房や睾丸萎縮などが見られることもあります。