2015年3月18日NEWS
秋田県乳頭温泉で、源泉から温泉を送る配管を修理していた作業員3名が死亡する事故がありました。
硫化水素(H2S)を吸ったんだと思いますが…。火山ガスには硫化水素や二酸化炭素、塩化水素などマグマに含まれる気体成分が多く含まれています。
硫化水素の何が危ないかというと、濃度100ppm(0.01%)くらいになると嗅覚が麻痺してしまうことです。身体に影響を及ぼす濃度(200ppmくらいで中毒になります)に上がっても気づかないのです。たぶん今回の件もそういうことなんだと思います。
温泉は、地下に浸み込んでまた湧出するまでに岩石と反応したり火山ガスを溶かしたりするのでいろいろな物質を溶かします。
泉質は温泉が出る場所ごとに様々で、僕の研究室でも研究しています。
まず、温泉は2つに分けることができます。
①単純泉:温泉1kg中に溶けている物質の総量が1,000mg未満
②塩類泉:温泉1kg中に溶けている物質の総量が1,000mg以上
さらに、温度・pH・凝固点によって細分化することができます。
●泉温
1 冷鉱泉:25°C未満
2 微温泉:25°C以上34°C未満
3 温泉 :34°C以上42°C未満
4 高温泉:42°C以上
●pH
1 酸性:pH3未満
2 弱酸性:pH3以上6未満
3 中性:pH6以上7.5未満
4 弱アルカリ性:pH7.5以上8.5未満
5 アルカリ性:pH8.5以上
●浸透圧(溶けている物質のトータルと凝固点)
1 低張性:溶存物質総量 8g/kg未満、氷点-0.55°C以上
2 等張性:溶存物質総量 8g/kg以上10g/kg未満、氷点-0.55°C未満-0.58°C以上
3 高張性:溶存物質総量 10g/kg以上、氷点-0.58°C未満
まあ、これらは覚え切れないし、そんな重要でもないので…。百聞は一見に如かずということで、次に例を出してみます。
詳しくは→日本温泉協会
ある温泉に観光に行って、脱衣所に以下のような掲示がありました。
ナトリウム-塩化物泉(弱アルカリ低張性高温泉)
この表記は前にダラダラと説明した大きな2つの分類と3つの要素、計4つのファクターからできています(色分けをしました)。
青色は塩化物泉であること示していて、ナトリウムというのは塩化物イオン(Cl-)と結合している主な陽イオンがナトリウムということです。なので多くはNaClの形で溶けているといえます。NaClは食塩のことですね。
オレンジ色はpHを示していて、弱アルカリ(pH7.5~8.5)とわかります。
緑色は低張性ですから、温泉1kg中に溶存している物質が8g以下で、凝固点(氷点)が-0.55°C以上です。物質が多く溶けるとそのものが固体になる温度が下がります(凝固点降下といいます)。水は冷凍庫で凍りますが、コーラは冷凍庫に入れてもちゃんと凍らないのは凝固点降下のせいです。
赤色は文字通り水温を表しています。42°C以上で噴出していたようです。
このような泉質の掲示は温泉施設に必ず掲示するように義務付けられています。目につく場所に掲げられてますので入る前に見るといいことがあったりもします。例えば、シルバーのネックレスをつけたまま塩化物泉に入ると、ネックレスが真っ黒に変色してしまうかもしれません。AgはたやすくClイオンと反応するからです。