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九大教職課程を履修するあなたに: 4.実習での学びを最大化するために

本ガイドでは、九州大学の教職課程を経て教師になることを目指す学生(主に学部生)にむけて、人間環境学府の一大学院生が、自身の経験則に基づき、大学生活のすすめを紹介します。

①本章の構成

本章では、学部生下半期に差し掛かり、実習などが教職課程にくわわるようになる時期の学生に参考となるような情報として、おもに実習時の筆者の体験談を開示することで、実習のイメージを学生にお伝えすることを目的とします。そこで、少々特異な方法ではありますが、私にとって大きな実習体験となった、介護等体験での回想録としてのエッセーと、教育実習に関して、実習日誌の紹介を行いたいと思います。

②エッセー「障害という個性」

「木村さーん。あの、ひとつ言わせてもらっていいですか」

 

山口さん(40歳、仮名)はいつもこう切り出す。実習2日目の朝、作業所に到着してまもなく山口さんが私を呼び止めた。話を聞くと、私の服装が実習生としてふさわしいものではないので、申し訳ないが明日からはちゃんとした服装にしてほしいということである。ポロシャツに七分丈のズボンだったように思う。夏に近づき暑さが日増しに感じられる頃であったため、動きやすい服装できてもらってもかまわないという話を初日に作業所の職員から説明してもらっていた。
 私は、自分の服装がそれほど不適切な格好だとは思わなかったが、

 

「申し訳ないですけど、教えてもらう立場なんだからそこのところはしっかりとしてほしいです」

 

という言葉に返す言葉もなく、自分が誤っていたとその場で伝え、次の日からは長ズボンで「通学」することを約束した。どこか自分の心のモヤモヤをどのように扱えばよいのかわからないままの応対であった。

 

そんなこともあり、山口さんに対する第一印象は、正直なところあまりよくなかった。「真面目な性格」なためか、口を開けば仕事上の責任について、他の「仲間」(この作業所では、障害を有した従業員のことをそう呼ぶ)のことを指摘してみたり、自分が仕事のことを真面目に考えているのだということを語ってみたりすることが多かった。

 

そんななかで、「おや」と感じたエピソードがある。実習もまだまだ序盤、笛を吹き吹き、リアカーを転がし、お惣菜の販売のため作業所の近所を練り歩いているときの出来事であった。山口さんの質問をうけ、中・高の国語の教師を将来の進路として考えていることを話したときのことだ。山口さんは自分が小学生のころの被教育体験についてポツリ、ポツリとこぼしはじめたのである。

 

内容をまとめると、山口さんの小学生時代は授業が苦痛だったという話である。それはそうだろうと思う。山口さんの有する「障害」は知的障害である。授業についていくのが困難を極めたであろうことはまだ2,3日の交流しかない私であっても、想像に難くはなかった。しかし山口さんのその後の語りは私の予測とは少し異なるものであった。

 

山口さんの当時の担任は、山口さんが授業にまったくついてこれていないことを考慮してか、授業中は絵を描いておくよう山口さんに伝えたそうである。その担任にとっては、授業が苦痛な山口さんを見かねた上での「配慮」であったのかもしれない。しかし、それは山口さんにとってはなんら「配慮」たるものではなかったのだ。山口さんがその時に感じ取っていたのは「配慮」ではなく、自身に対する担任の「あきらめ」のようなものではなかったか。山口さんは、そうした「あきらめ」のにおいに苦痛を感じたのである。

 

山口さんはひとしきり当時のことを追想すると、「木村さんはそんな先生にはならんでね」と締めくくり、何事もなかったかのようにまた仕事の話を始めた。

 

 このエピソード以降、山口さんに対する見方が私の中で180度変わったとまでは言わない。ただ実習の後半において山口さんの発言の背景にあるものを感じようとする姿勢が私の中で次第に強まっていたことは確かである。何が私をそうさせる根本的な要因とであったのかは今となっては分からないが、実習を終えた頃に私の心の中に残っていたのは「そういえば、自分こそが真面目人間なんだっけ」ということであった。私は山口さんに自分に似たものを感じていたのかもしれない。

 

それ以来今の今まで、山口さんとの交流は続いている。朝に夕に、時には目覚まし時計のようにかかってくる電話を取る時も、山口さんとの交流を通して深まっていくのは、「自分もある意味では障害を有しているといえるのではないか」ということである。

 

少々唐突なものいいではある。私がいいたいのはつまりはこうである。私は、目の前の事象にとらわれて近視眼的な思考に支配されていたと感じることがある。たとえば、

 

 

歯を磨こうとする。

洗い物がまだ終わっていなかったことに気がつく。

洗い物をはじめる。

皿を洗いながら、明日のスケジュールはなんだったかと考えはじめる。

皿を洗い終わる。

明日の授業の準備をはじめる。

 

 

といったような具合である。これはあくまでもひとつの例でしかないが、もともとしようとしていたことをいつのまにか忘れさり、他のことに時間をついやしてしまっていたということに少し時間がたってからふと気がつくのである。つまりそれまではそのことに「気がついていない」のだ。

 

このようなことは「程度の差こそあれ」、人の能力に限度がある以上、誰しも経験しうることなのだろうと思う。私が言いたいのは、「程度の差こそあれ」というところである。

 

山口さんが頑なになっていると我々が感じている瞬間、山口さんは「気がついていない」状態なのではないだろうか。それは山口さんにとっては「気がつきにくい」部分なのだろう。そうした特性を「障害」と呼ぶことで認識しようとするならば、大げさにいうと、人はみな「障害」を有しているといえるのではないだろうか。もちろん大げさにいっていることは承知のうえである。私が介護等体験を通して学んだことは、障害の区分でもってその人を理解しようとしている限りにおいては、その人のことを真に理解するまでの道程を歩むことはできないということである。

 

「障害は個性」というのは、そういうことを含意とした言葉なのではないだろうか。

③筆者が介護等体験でお世話になった施設

私が介護等体験でお世話になった施設は、「工房陶友」という障害者支援施設でした。こちらの施設では、陶器や絵葉書、豆腐などの食品販売のほかに陶芸教室なども行っています。

 

実習中は、主に障害のある方々(ここでは「なかま」と呼ばれます)と一緒に、食品販売や絵葉書づくりの仕事をしながら、「なかま」とのかかわり方や障害そのものについて5日間考えました。障害がどのような要因によって生まれるのかといったことなど、職員の方々からのアドバイスや実習中に資料などもいただく中で、様々な視点を持って実習に取り組むことができ、充実した日々を過ごすことができました。

 

今でも介護等体験でお世話になった方々や施設の方とのつながりは続いており、私にとって大変大きな出会いとなりました。

④教育実習と教育実習日誌

  ここでは、教育実習について私の教育実習日誌を参照しながら紹介していきます。教職課程を履修するみなさんにとって、大きな山場の一つとなるのが教育実習でしょう。教育実習の内容は、実習校の方針によって様々で、非常にハードなスケジュールの中で、ひたすら授業の練習に取り組む実習もあれば、文化祭や運動会など、イベント行事の見学などで一週間を過ごすようなものまで多様です。

 

 一方で、すべての教育実習に共通していることがあります。それが教育実習日誌を作成することです。日誌の体裁は、所属している大学によって異なりますが、実習先での学びをその日の最後に振り返り、文章に起こすという作業こそが、実習において最も重要な学習活動となることに違いはありません。ここで、九州大学の教育実習日誌がどのような体裁となっているのかを確認してみましょう。(画像が見にくいので、右クリックから「新しいタブで画像を開く」を選択して、お読みください)

 

(日誌の記入欄の紹介)

  

どの大学の日誌でもおおよそ同じような体裁となっています。右ページを当日の振り返りで埋めようと思うと骨が折れますが、書き続けるなかで、一日の自分の学びを振り返り、明日への改善策を懐に落とし込むよい時間となります。実際に記入をしたものとして、3日目の実習日誌を以下に紹介します。

 

  

(実習3日目の日誌)

 

  

私の場合は、3日目にしてすでに最初の授業に挑戦していたようです。私は高校の国語の免許の取得を目指しておりましたので、2週間の実習となり、14日分の日誌に取り組む中で、教育実習における学びを深めることができました。実習日誌は、最後に「全般的感想」ということで、実習の全日程を振り返る欄があります。また、実習の進み方は、指導してくださる教員や、実習先の学校の方針で大きく変わり、私のように序盤から授業に取り組む場合や、一週間見学のみの場合などもありますし、中学校免許では3週間の実習になりますので、1週目を体育祭など学校行事とかぶせて実習を受け入れることで、最初の一週間は学校行事に入る実習なども往々にしてあるようです。

 

 

(最終報告の紹介)

  

この頃になると、実習初日とは心持ちも、取り組み姿勢も大きく変化しています。学校で働くことの一旦を垣間見る中で、教職の醍醐味を味わい、生徒たちとのつながりが深まるなかで、自分の将来像を思い描いたりもします。また、大学にもどってからの今後の学校生活に向けて気持ちを新たに取り組む熱意が芽生えている事と思います。

 

 

いかがでしたでしょうか。実習での活動内容が少しだけでも伝われば幸いです。