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九大教職課程を履修するあなたに: 2.九大の教職課程について

本ガイドでは、九州大学の教職課程を経て教師になることを目指す学生(主に学部生)にむけて、人間環境学府の一大学院生が、自身の経験則に基づき、大学生活のすすめを紹介します。

①九大で教員を目指すということについて

さきほど私の自己紹をするなかで、教員になることだけを志して九大の教育学部に入学したわけではないというお話をしました。つまり私は、教員の養成を第一の目的としているわけではない教育学部にあえて入学したことになります。そのような大学・学部で教職課程を取り、教師になることを志すことは、教員養成を目的とした大学・学部で学ぶことと比べてどのような点が異なるのでしょうか。ここでは、以上の問題について、各大学・学部が入試において求める学生像などに着目しながら若干の考察を加えてみようと思います。

  

結論から述べるならば、九大で教師になる事を目指す学生が目指すべき具体的な目標はありません。拍子抜けされた人もいるかもしれませんが、逆に大学がそのような目標を設定しないことに制度的な狙いがあると考えられるのではないでしょうか。

  

九州大学を含め、単位を余分にとることで教員免許を取りに行くことができる大学で教職を目指すことができるようになったのは戦後間もない頃だったそうです。当時の教員養成を担っていた大学である師範大学以外にも、一定の課程を修了することで教員になる機会を開く、開放制の原則の基、方針の転換が図られた背景があります。そこには、大学での自由な学問探究のなかで、一般教養と専門教養を身に付けた専門職にふさわしい教員を育てようという狙いがありました。それでは、九州大学では、どのような学生を人材として求めているのでしょうか。学内で最も規模の大きい工学部が求める人材像を参考までに参照してみようと思います。以下は、工学部の教育理念です(※太字と下線による協調は筆者によるものです)。

 

 

 工学部においては,工学の基礎知識に加えて,幅広い教養と倫理観及び国際的視野を併せ持ち,「人類の持続的発展」を究極の基本理念としながら,工業・科学技術を先導し,産業・研究・教育・行政などの分野で社会に貢献できる技術者・教育者などの人材の育成を目的としています
 そのために,工学部では,上記の基本理念にそって国内のみならずグローバルな視点から工学・科学技術の種々の分野でその発展に貢献したいという強い意欲と適性を持った学生を受け入れます。

九州大学HP「アドミッションポリシー」より)

 

 

次に、九州大学と同様、大規模で文理合わせ多様な学部を有した総合大学であり、私立大学の福岡大学工学部の人材養成の目的を参照してみます。

 

 

工学部は、人材養成の目的を達成するために、

1.安心して暮らせる安全な社会を工学・技術で実現したい人
2.環境・エネルギ-問題の解決に取り組みたい人
3.ものづくりに興味をもち、実験・実習が好きな人
4.工学を学ぶに十分な基礎的学力(数学、物理、化学、英語、国語など)を有する人
5.情報処理とコミュニケ-ションの基本的スキルを有する人
6.他人の意見を辛抱強く聞ける人

で、意欲のある活発で元気な人を求めています。

福岡大学HP教育研究上の目的/工学部 三つのポリシー「アドミッションポリシー」より)

 

 

教員養成を第一の目標としているわけではないので、必ずしも教師となることを前提とした項目が整理されているわけではないようですね。では、教員養成を目的とした大学では、こうした記述がどのように変わるのでしょうか。ここでは、その一例として、福岡教育大学のアドミッションポリシー(入学者受け入れの方針)を参照してみたいと思います。

 

 福岡教育大学は,教員養成の広域拠点大学として,これからの学校教育において率先して取り組むことのできる教員の養成を使命としています。学士課程においては,学校教育現場において求められる,1)幅広い視野と豊かな教養,2)各学校の教員として必要とされる幅広く専門的な知識や技能,3)多様な教育活動における実践的力量,4)自らの責任を積極的に果たしていく社会性や協調性,5)将来にわたって自らの課題を解決できる力量等の資質・能力を培い,各学校で活躍できる人材を育てることを目標にしています。そのために本学では,各学校の教員に求められる専門性と実践的指導力を確実に習得するカリキュラムを編成しています

「福岡教育大学教育学部のアドミッション・ポリシー」より)

 

教育大学にもなると、教師になることを前提に学生を受けいれ、大学が社会的に果たす役割として、教師を育てることを意識していることがよくわかります。当然のことではありますが、やはり九州大学や福岡大学では、その大学・学部で学ぶ専門的な学問領域についてしっかりと習得することを前提としているわけです。最後に、九州大学が制作している「教職課程の手引き」から、本学における教職課程の位置づけを確認してみたいと思いますが、そこには以下のようなことが明記されています。

 

 

 学ぶ者の側に立った場合,各専門学部において,それぞれの「正規の課程」を十分に修得しつつ,「教職課程」で要求される学習や実習をマスターしていくためには,大きな困難を克服しなければならないことが十分に予想されるところである。

(「平成27年度教職課程の手引き」p.1)

 

 

自分が所属する学部の勉強に加えて、さらに教師になるために研鑽をつむことは簡単ではないこと。そして、そうした負荷に耐えうる人材をこそ教師としての素養とし、そうした素養を備えた教師を大学は輩出しようとしていると考えることもできそうですね。確かに、学部の授業での学びをしっかりと修めることは楽ではないでしょう。演習科目での報告や、実験、学期末のレポート課題やテストなどこれらの課題に対処しながら、アルバイトや部活動・サークル活動など自身の関心に基づいた活動なども充実させることは至難の業ではあります。これらの教育理念を見比べることで、様々な活動に従事するなかで自分の性格や特性を振り返りつつ、自分の周りにある資源を有効に活用しながら学修し、成長してゆこうとする姿勢が九大で教師を志ざす学生求められていることなのだと理解することができました。みなさんは、自分の学部や教職課程が求める理念をどのような解釈できそうですか?

②教職課程を履修するという選択

先ほどは、九州大学で教職選択することの困難さについて触れました。教職課程を履修するかどうかという選択は、その後の学生生活に大きな影響を与えるものとなるため、入学をして間もなく、また十分な情報を持たない学生にとっては非常に悩ましい問題です。ここでは、教職課程の履修を決断するための情報として、学部ごとの教職課程の履修状況などのデータをみなさんに紹介する事で、少しでも納得感を持って教職課程の道に進んでもらえるようなお話を進めていきたいと思います。

   

  

 さて教職課程を履修するかどうかの決断を行う際に皆さんが気になるのはどのような点でしょうか。そもそも、九州大学ではどのような教職科目が履修できるのかという前提も確認しておかなければならないでしょう。その他にも、実際問題として教職をとるとどのくらい忙しくなるのか、学習内容はどれほど難しいのか、保険で教員免許をとるというのは賢い選択なのか、といった点も気になるところでしょう。九州大学で取得可能な免許については、「九州大学教職員免許状授与資格の取得に関する規則」にまとめられているので、こちらから確認をしてみてください。意外と、教員免許の種類はたくさんあるものですね。教育課程の忙しさや難しさは人それぞれ感じ方が異なるので、これらの疑問に正確な回答をお示しすることはできませんが(教職課程は各学部の授業と時間が重ならないように設定されているため、ほとんどの授業が1限と5限に行われます。汗)、ここでは、本学で教職課程を開設している7つ学部(文、教育、法、経済、理、工、農)について、教職課程を履修した学生の割合や、その中でどれほどの人が教師として社会に出ているのかといった点について、入手することが出来たデータの中から可能な限りご紹介したいと思います。教職課程に関する事務を担当している教育学部の学生第二係に問い合わせを行ったところ、平成25年度前期・後期における教職関連の情報を開示頂けましたので、下記表に整理してみました。

 

 

表 「学部別教職履修者に関する情報」 

 

(※「平成25年度前期・後期『教職に関する科目』の履修状況」、「教員免許状取得状況(平成25年度)」、「教員就職状況(平成25年度)」より筆者作成)

 

  

 

いかがでしょうか。ご自分の学部のまわりの友人はどれほど教職課程を履修していますか。この表の見方としては、まず、生徒指導論という授業に着目してください。生徒指導論とは、教職課程で必修の科目とであり、その学部で教職課程を受講している学生のおおよその人数を知るための指標としてここにお示ししています。また高一種と中一種は同時に取得が可能なので、ここでの数字は重なっている場合があると考えてください。例えば、教育学部では、21名の学生が平成25年度前期の生徒指導論を受講していたようです。そして、この年度の度卒業生が57名であることを考えると半数より少ない学生が教職課程を履修していたと考えられそうです。そして、この年度に教師として社会に出たのは2名ということになります。57名も教育学部から卒業しているのに、教師になったのはたったの2名ということに驚かれる人もいるかもしれませんが、それだけ九州大学で教師を目指し実際に教師となるという選択がメジャーな選択ではないということがよくわかります。これは、教員採用試験のハードルが低くないこと、採用されない場合は、非正規雇用の教員として働くことになる可能性が高いことなど様々な要因が複合的に重なっていることもその理由として挙げられると思います。