土木業界において、災害の対策は大きく二種類に分かれます。ソフト対策とハード対策です。
ソフト対策とは、防波堤のように直接災害による被害を抑える構造物を用いない災害対策です。災害発生時に、情報を速やかに発信するなどして被害を軽減する方法です。
(ハード対策については、次ページの水害の対策②をご覧ください)
皆さんはハザードマップというものをご存知でしょうか?
簡単に説明しますと、自分の住む地域に自然災害が発生した際の、被害範囲を想定して書き記した地図のことです。
種類としては、浸水ハザードマップや高潮ハザードマップ、他にも津波、土砂災害、火山のハザードマップがあります。
地震の場合、断層の走る真上の地域と断層と離れている地域では前者の方が危険度は高いですし、海や川のすぐそばの地域と、水辺から離れた地域でも、やはり前者の方が危険度は高い場合が多いです。ハザードマップは、そのように場所より異なる危険度を色分けして地図上で示しており、日本全国の市町村毎に作製されています。
まだハザードマップが公開されていない市町村も存在しますが、今自分が住んでいる場所の危険度は、必ず確認しておくことをオススメします…!
一例として、福岡市の浸水ハザードマップ、糸島市のハザードマップを是非ご確認下さい!
台風が来た時などに、大雨洪水警報という言葉を聞いたことはありませんか?
これは気象警報・注意報の一種で、気象庁から発表されているものです。大雨や洪水の他にも、暴風、波浪といったような種類もあり、気象状況が悪化し、災害発生の恐れがある場合に発表されます。
気象警報・注意報は、危険度によって
特別警報
警報
注意報
の3種類に分けられます。危険度が高い程、災害発生の可能性が高く、規模が大きくなると考えて差し支えありません。大雨、や暴風、高潮、といった災害名の後に、これら3つのどれかが続き、「暴風警報」のような名称で発表されます。 危険度の低いものから順にご紹介します!
注意報
災害が起こる恐れがある時に、注意を呼びかける目的で発表される情報です。注意報が発表された時点では大きな災害はまだ起きていないとは思いますが、今後のニュースには気を払って、最新情報を得るようにしましょう。
警報
重大な災害が起こる恐れのある時に、警戒を呼びかける目的で発表される情報です。警報が発表されたとき、もう周りは雨が降っていたり風が吹いていることが多いかと思います。不要な外出は避けたりしましょう。
特別警報
特別警報は、平成23年の東日本大震災など、近年の大災害をうけて、平成25年から新たに設けられた警報です。これは、数十年に一度の大災害が起こる恐れのある時に、対象地域の住民に対して最大限の警戒を呼びかける目的で発表される情報です。特別警報が発表されたら、命を守ることを最優先に行動してください!
特別警報が発表されたら、まずは落ち着いて周囲の状況を確認しましょう。そして市町村から避難勧告が発令されていれば、おとなしく従いましょう。避難するために外に出る方が危険、と思った場合は自宅の2階など、今いる場所の中でもより安全な場所へ退避してください。
これらの気象警報・注意報は、情報が市町村や住民に伝わってから、避難行動等が取られるまでに必要な時間を考慮して発令されています。そして、気象警報・注意報を基にして、市町村から発令されるものが、次に紹介する避難情報です。
避難情報にも、避難勧告や避難指示等の種類はありますが、内容はお分かりでしょうか?
避難情報は、気象庁からの警報や注意報、気象情報等を基にして、市町村から住民に対して発令されるものです。その地域の住民に危険が迫り、いま居る場所から安全な場所へ移動すべき、と市町村が判断した場合に発令されます。
ここでは、内容があやふやなまま知られているであろう避難情報について整理します。
まず、避難情報には、避難準備情報、避難勧告、避難指示、警戒区域の設定 の4種類があります。
避難準備情報
今後、避難勧告が発令される可能性が高い時に、避難の準備を促す情報です。家族等に連絡を取ったり、非常用持出品の用意をし始めたりしましょう。
またこれが重要なのですが、お年寄りや身体障害者など、移動に時間がかかる方は、避難準備情報が発令された段階で避難をし始めましょう。周囲の方は避難を手伝ってあげてください。
避難勧告
災害が発生する可能性がある場合に、避難のため立ち退きを勧める情報です。自分の住む地域に避難勧告が発令されても自宅に籠るだけ、という行動を取ったことのある方もいるでしょう。
避難勧告に法的な拘束力はないので避難しないからといって罰せられることはありませんが、可能なら避難所に避難しましょう。難しいようでしたら、今いる場所から近くの避難所までのルートを確認して、そこまで行けるかは考えておくべきだと思います。
避難指示
災害が発生している、もしくは発生する可能性が非常に高いとき、避難勧告よりも危険が切迫し、避難のため立ち退きさせるための情報です。
避難指示も、法的拘束力はありませんが、これが発令される状況はかなり危険なので、なりふり構わず安全な場所へ避難しましょう。
警戒区域の設定
避難指示の次の段階として、避難命令があると思うかもしれませんが、日本に避難命令の法律はなく、この「警戒区域の設定」が次の段階としてあります。実質、避難命令だと考えて差し支えありません。これには法的拘束力も存在し、警戒区域内に無許可の人が入ると、懲役や罰金が科されることもあります。
しかし、これらの避難情報は、各市町村がその時その時の状況を判断して発令するため、発令の基準が明確ではありません。なので、もっと早く発令するべきだった、と後から分かる場合も多々あります。
現に台風などの影響により大きな被害が出た地域は、被害の原因が避難情報を聞かなかったため安全だと思い、避難が間に合わなかった、というケースも少なくありません。
防災の知識として、これら避難情報の意味は知っておかねばなりませんが、理想としては、気象庁から発令される気象情報から自己判断して動けるようになることです。これを次に説明します。
河川のはん濫等に対する、水防活動や住民の避難の参考となるように、気象庁は国土交通省、または都道府県と共同で、指定した河川について区間を決めて、水位または流量を示した洪水予報を行っています。これを「指定河川洪水予報」と呼んでいます。
洪水予報には、はん濫注意情報、はん濫警戒情報、はん濫危険情報、はん濫発生情報の4つがあります。
河川名を付して「○○川はん濫注意情報」「△△川はん濫警戒情報」のように発表されます。
それぞれの予報の内容には、予報発信の目安となる水位が定められています。下の画像をご覧ください。
(図は執筆者が作成)