ここでは、前ページで紹介した「音の大きさ」について
もう少し見ていきましょう!
次のような波形の「音の大きさ」を考えてみましょう。
この波形は前ページでお見せした波形より複雑な形をしており、
波形の箇所によって、縦軸方向への伸び縮みがばらばらなため、
「この波形が示す音の大きさはどのくらいなのか」はよくわかりません。
そこで、音の大きさの(時間的な)平均値を考えます!!
そのために、まずは(ある一定時間の間に記録された)波形を
横軸に関して折り返してみましょう。
そして、折り返した波形の山の高さ(つまり縦軸方向への伸び)を青点線で示すと、
次のように多数存在することがわかります。
つまり、音の大きさは時刻によってばらばらというわけです。
そこで、これらの山の高さの(ある一定時間内での)平均値を考えます。
すると、たくさんあった山の高さの平均値は、次のように表せます。
この平均値(赤点線)が、複雑な形をした波形の「音の大きさ」です。
もう少し詳しく言うと、複雑な形をした波形の「音の大きさ」は、
以下のような波形の「音の大きさ」と同じだということです。
この方法で算出された平均値は「音圧レベル」と呼ばれ、
「 dB(デシベル)」という単位が用いられます。
たとえば、人の会話は約 60 dB、
飛行機のエンジン音は約 120 dB(近くで聞く場合)と言われています。
(なお、ここでの平均値の計算法や音圧レベルの算出法は正確ではありません。)
音がどれくらいの大きさに「聞こえるか」という問題には、
実は「その音がどのような『高さ』を持っているか」と深い関わりがあります。
その関わりに関係するのが私たちの「耳」です。
私たちの「耳」には、聞こえやすい高さと聞こえにくい高さがあります。
たとえば、男性のダンディな低い声には、
どこか聞き取りにくいところがありませんか?
反対に、子どもの笑い声のような高い音は、
遠くに離れていても聞こえることがありますよね?
もちろん、他にも様々な要因がありますが、
これらには私たちの「耳」が関係しているのです。
この「聞こえやすい」や「聞こえにくい」を「感度」と呼びます。
我々の耳は、高い音に対して「聞こえやすい」、
つまり「感度がよい」わけです。
反対に、低い音に対しては「感度が悪い」のです。
ここでは、私たち人間の「耳の感度」を見てみましょう!
以下の図は、我々の「耳の感度」を表したものになります。
出典:岩宮眞一郎 著,よくわかる 最新 音響の基本と仕組み(第2版)
ここで、この図の横軸は「音の高さ」を表し、
数字が大きいほど、音が高いことを意味します。
横軸の数字の横についている「 k(キロ)」は「×1000」を表します。
(図中の「周波数」や「Hz」の説明は、次のページでお話しします。)
縦軸は、音圧レベルを表します。
そして、図中の曲線は、
同じ大きさに聞こえる「音圧レベル」と「音の高さ」の組み合わせを
つなげたものになります。
曲線の真ん中辺りにある数字は、その曲線に対応する音の大きさを表し、
数字が大きいほど、その音は大きく聞こえることを表します。
(図中の「最小可聴値」は、人間が聞き取れる最小の音の大きさのことです。)
この図を見ると、3000〜4000(3k〜4k) Hzあたりの音は、
小さな音圧レベルでも聞こえやすく、感度がよいことがわかります。
実は、この範囲は言語の音(特に子音)に対応していると言われています。
つまり、同じ音圧レベルを持つ音でも「音の高さ」が異なれば、
聞こえる音の大きさは異なるのです。
このように、我々は音をすべて同じように聞いているのではなく、
音の高さによって聞こえ方が異なるのです。
それでは、「うるさい」音について考えてみましょう!
みなさんは「車のエンジン音」と「飛行機のエンジン音」では、
どちらが「うるさい」と思いますか?
この質問に対しては、多くの方が「飛行機のエンジン音」だと答えると思います。
それは多くの場合、飛行機の方が大きな車体であり、
それを動かすためのエンジンは大きいはずなので、
エンジンから発生する音も大きくなるためです。
それでは、「飛行機のエンジン音」と「赤ちゃんの泣き声」では、
どちらが「うるさい」と感じるでしょうか?
「飛行機のエンジン音」は、とても大きなパワーで音を出します。
一方、「赤ちゃんの泣き声」は、人の耳に聞こえやすい音です。
さて、どちらがうるさいのでしょう?
実は、この質問の答えは人によって異なります。
(と考えられます。)
なぜなら、「うるさい」というのには、
その人のこれまでの経験や音の好みが反映されるためです。
たとえば、飛行機が好きな人は
きっと飛行機のエンジン音はかっこいいものに聞こえるし、
赤ちゃんをかわいいと思う人は泣き声だって愛おしいはずです。
ただただ、音が「大きい」というのだけでは
「うるさい」というのは判定できないのです。
このように、「人がどのように感じるか」というのはいろいろな要因を含むので、
ここまでに紹介したような音の仕組みがわかっても、
それをどのようにコントロールすればいいのかは、
未だによくわかっていないことが多いのです。