ここでは、音のもう一つの要素である「高さ」について見ていきましょう。
第2ページでは、音の波形が横に縮んでいるほど、
その音は高いのだとお話ししました。
ただ、今のままだとどれくらい伸び縮みがあるのかが表現しづらいですよね。
そこで、少し見方を変えてみましょう!
今、グラフの横軸は時間だということを利用して、
「波形の横方向の伸び縮み」を
「1秒間の波形の繰り返し回数」と捉え直してみましょう。
すると、第2ページの波形は、次のように繰り返し回数を決めることができます。
第2ページで「低い音」と紹介した波形は、1秒間に2回の繰り返しがあり、
反対に「高い音」と紹介した波形は、1秒間に7回繰り返していることがわかります。
この「繰り返し回数」が「音の高さ」に対応するのです。
そして、この「繰り返し回数」のことを「周波数」と呼びます。
ここで、「周波数」には「 Hz(ヘルツ)」という単位を用います。
今の場合、低い音は 2 Hzで、高い音は 7 Hzだと言うことができます。
身近な例として、一般的な成人男性の声は約 100 Hz、
成人女性の声は約 200 Hzと言われています。
なお、ここで出てきた「周波数」の考え方は、
繰り返しがきれいな波形の音に対してのみ使えます。
逆に、でたらめな波形の音(例えば前ページで出てきたようなもの)
に対しては使えないのです。
もう少し言うと、でたらめな波形の音には「高さ」を感じさせるものがないのです。
(ここでの「でたらめな波形の音には『高さ』を感じさせるものがない」という表現は正確ではありません。)
さて、みなさんは「音にはたくさんの『高さ』が含まれている」と言ったら、
信じていただけますか?
多くの方は、なかなか信じることはできないでしょう!
だって、ピアノの「ド」の音を聞いても、それは「ド」にしか聞こえず、
決して「ソ」には聞こえないのですから!!!
では、なぜ聞こえないのでしょうか?
それは「ド」と「ソ」の音が融合しているためです!
融合して一つの音になっているから、一つの高さにしか聞こえないのです。
(ただし、ここでの「ソ」の音は『ド』→レミファソラシドレミファ→『ソ』と、
1オクターブ半だけ上の「ソ」とします。)
それでは、どのように融合しているのでしょうか?
これはグラフで見てみると、わかりやすいと思います。
もちろん、2つの音がまざっているのですから、波形自体は変わってしまいます。
しかし、「ドとソがまざった音」の周波数は、
1秒間の繰り返し回数が2回なので、
結局のところ、「ドの音」と同じ高さである 2 Hzになります。
つまり、普段「ドの音」として聞いている音には、
実は「ソの音」が融合しているのです。
(なお、ここでの「融合」という表現は正確ではありません。)
さて、この「融合の度合い」のことを専門用語で「協和度」と言います。
音楽の「協和音」や「不協和音」は、
この「融合の度合い」で説明することができます。
2つの音が協和しているほど「ハモって」聞こえるわけですね!
それでは、2つの音の「協和度」をグラフで表してみましょう!
出典:岩宮眞一郎 著,よくわかる 最新 音響の基本と仕組み(第2版)
このグラフは、片方の音の周波数を 250 Hzに固定し、
他方の音の周波数を少しずつ変えていったものです。
横軸が「2つ目の音の周波数」で、縦軸が「協和度」を表します。
このグラフを見ると、いくつかの部分で
「協和度」が小さくなっていることがわかります。
(図中の縦軸は、目盛りが上下反転しているの注意!)
つまり、「ある条件に合うように2つの音を上手く組み合わせると
協和して聞こえる」ということです。
そして、ある条件というのが2つの音の「周波数の比」です。
2つの音の「周波数の比」というのは、2つの音の高さの関係を表します。
たとえば、「ドレミファソラシド」の下の「ド」と上の「ド」の周波数比は
「1:2」となります。
また、「ド」と「ソ」の周波数の比は「2:3」と表せます。
音楽の言葉で言うと、1オクターブ(完全8度)や完全5度ことですね。
(ここでは上と異なり、『ド』→レミファ→『ソ』の「ド」と「ソ」になります。)
このグラフを見ると、「協和度」が小さい2つの音は、
その「周波数の比」が、比較的小さな整数の比になっていることがわかります。
(周波数の比は、図中の協和度が小さくなっている付近の吹き出し内に記載)
つまり、2つの音の「周波数の比」が簡単な整数比であるとき、
その「協和度」も高い傾向にあるということです。
結局、「ハモる」とはいったい何なのでしょう?
上の説明では「協和度が高い」ことが「ハモる」と意味していることになります。
おおよその理解としては、それは間違っていません。
それでは、「どのくらい」協和度が高いとハモっていると言えるのでしょうか?
それは、実のところ、わかっていません。
なぜなら、これは状況(音楽の演奏中であれば音楽の曲調やジャンル)や、
価値観によって変化してしまうために評価が難しいからです。
「協和」、「不協和」は歴史的にも変遷してきました。
音楽を説明する言葉には、いろんな言葉があります。
目に見えない音を説明するのですから、たくさんの言葉が生まれるのでしょう。
たとえば、音楽の指導の中で、「協和・不協和」に似た表現として
「音を混ぜる」や「響きを合わせる」などの言葉を聞いたりしますが、
これらの言葉の意味は、未だによくわかっていません。
今言えることは、指導者のイメージを表現したものであるということです。
ただ、これらはどんな指導者や演者にも共通している言葉だったりもするわけで、
やはり何かが隠れているのだろうと思われます。
ですので、これらの表現は決して間違いではありませんが、
音というものが複雑なために、上手く伝えることが難しいのです。