要旨
多くの食われるもの(被食者)は食うもの(捕食者)が接近してきたとき、
生存のために逃避する。その際、被食者の中には様々な逃げ方で逃避する場合がある。
バッタの仲間では、翅を羽ばたかせて逃げる飛翔と、翅は使わずに脚で跳ねるのみで逃げる
跳躍の、2つの逃げ方が確認される。
飛翔 跳躍
そこで、被食者が周囲の環境や性別などの様々な要因に応じて逃げ方を変化させているかを
調べるために、野外においてバッタ(コバネイナゴ)に3回連続で接近し、飛翔と跳躍の
どちらの逃げ方で逃避したのかを調べた。
コバネイナゴ。秋に、日本各地の湿った草地でよくみられる。
結果、バッタの性や翅の長さといった身体的特徴に加え、気温や草丈などの周囲の環境にも
応じて、異なる逃げ方で逃避していた。
長さ
本文12650字(A4で17枚分)+図表8つ
テーマ決定まで
理学部生物学科では、学部3年の後期から研究室への仮配属が行われます。
仮配属時に行うことは研究室によって様々で、セミナーへの参加だけのところがあれば、
4年生になって正式に配属されたらすぐに実験を始められるよう、実験の操作を練習するところも
あるようです。
私はこの仮配属時に今の指導教員となる方に出会い、以前から気になっていたことを
テーマとして提案してみました。すると、誰もやっていそうになく、かつ1年間でデータが
とれそうだったので、OKサインを出していただきました。
その後は4年生になるまでに何度か関連する文献をいただき、それらを読んでいました。
研究計画の立案
研究室配属後は、まず研究計画を立てるところから始まります。
私は研究計画を立てる上で特に大切なことは、
研究の意義と年間計画をはっきりとさせることだと思います。
研究は「誰もやっていないから」という理由だけでは、やる価値がありません。
(個人的な趣味とすれば別ですが…)
それは、誰もやっていない研究には「やっても意味がないから誰もやっていない」場合と、
「誰もできなかった(または思いつかなかった)から誰もやっていない」場合の2種類が
あるからです。
もし前者のような「やっても意味がないから誰もやっていない」のであれば、私たちが改めて
時間をかけて研究する必要も無いでしょう。研究を行う際には、なぜその研究を行うのかを
論理的に納得させられるよう、研究の意義を説明する必要があります。
研究の意義を説明するためには、関連する文献を読んで、自分が行おうとしている研究の
立ち位置を明らかにしておく必要があります。
そのため、研究計画を立てるためには、まず類似する研究内容の文献、その分野の教科書的な
文献を読み込む必要があります。
年間計画では、卒論提出という〆切に間に合わせるために、どのように研究を進めていくのかを
大まかに記します。私の場合、月ごとの予定(目標)を決めていました。
ただし、計画はあくまでも計画であり、また研究は計画通りに進まないのが基本なので、
はじめに立てた計画通りに進まなくても、心配する必要はありません。
実験の開始
研究は思ったようには進まないことが多いと思います。
私も当初の計画通りには進まず、試行錯誤を経てようやくデータをとれるようになりました。
私の場合、指導教員が毎月一回、進歩状況の報告の機会を設けてくださったので、
先月は何をやったのか、今月は何をやるのかを見直すことができました。
この、先月やったことと今月やることの再確認はとても有益で、私は年間計画と
対応させながら、卒業論文に間に合わせるには今月どのように進めればよいのかを考え、
毎月1回、週単位の目標を決めた予定表を作っていました。
学部3年生までと違って決まった時間割の無い研究室生活では、自分で予定を立てておかないと
あっという間に時間が過ぎてしまいます。
卒論執筆
卒論(論文)は、学部の頃のレポートとは全く別物の存在です。
特に卒論がレポートと違う点は、何度も文章を推敲する点だと思います。
レポートの提出といえば、提出してしまえばそれで終了、というイメージをもつ方が多いのでは
ないでしょうか。しかし、自分が最初に作った文章、というのは、読み手から見ると
分かりにくい部分が含まれていることがほとんどです。
再現性を重んじる科学では、読み手に誤解なく、内容を正しく伝える文章が求められます。
しかし、読み手に伝わらない部分や誤解を招く部分は、その文章の書き手自身では
なかなか気づくことが出来ません。
したがって、卒論は指導教員や先輩、同期などに何度も添削してもらい、文章を可能な限り
推敲していきます。
これにはかなりの時間がかかるため、少なくとも1ヶ月は見積もっておいた方が良いと思います。
時期 | やったこと |
2015年10月ごろ 2016年4-5月 2016年6-8月 2016年9月 2016年10-12月 2017年1月 2017年2月 2017年3月 |
研究室訪問で訪れた研究室の先生から、関連する文献をいただき、読む。 研究計画の作成、発表。 計画にしたがって少しずつ実験を行う。教育実習、院試勉強で研究に専念できず。 当初の計画通りには実験がうまくいかなかったので、方法を少し変える。 11月中旬までは実験。以降は年末までビデオ映像の解析。中間報告が2回。 データ解析と卒論執筆。 卒論執筆と提出。提出期限の30分前に提出。 卒論発表(15分のプレゼン)。 |
英語力
研究をする上で、英語は避けて通れません。
私は元々英語が嫌いでした。
学部3年のとき、自分の知りたいことを知るためには英語の文献を読むしかない場面に
何度も遭遇したため、なんとか抵抗感を減らすことはできました。
しかし、勉強不足のために英語力は低いまま4年生になり、研究生活が始まってしまいました。
研究を行う際は、英語でしか情報を得られないことが多く(日本語の文献は稀)、
研究結果を発表するための論文は英語で書かなければなりません。
(ちなみに、九大では生物学科の卒論は和文、シス生の修論は英文。)
研究室配属後、英語力が重要であることを何度も痛感しました。
(今でも痛感しています。)