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イスラーム科学の発展の背景: イスラーム科学が発展した理由

クルアーンにおける科学的奇跡

 「イスラーム科学の発展」の部分でクルアーンとハディースにおける知識への要求に対する奨励について簡単に知ることができたのではないかと思います。それがイスラーム科学が発展した理由の一つです。もう一つの理由はクルアーンの内容と関係しています。クルアーンは宗教的な内容を持っただけのものではありません。現代科学がクルアーンの内容から読み取れる奇跡がたくさんあるといわれています。「イスラーム理解の図解付ガイド・第1章イスラームの真実の証し」に基づいていくつか紹介します。

①胎児の発育の2つの段階

①人間の胎児の発育について

 これについてクルアーンの中に以下の言葉があります。

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 「われは泥の精髄から人間を創った。そしてわれは彼を一滴の精液として、堅固な住みかに納めた。それからわれは、その精滴から一個のアラカを創り、そのアラカからムドゥガを創り...(以下略)(クルアーン 23:12-14)

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 上記の中に胎児の発育は2つの段階に分けられています。

 第1段階は「アラカ(العلق‎)」です。アラビア語で「アラカ」には3つの意味(①ヒル、②釣り下がったもの、③血の塊)があります。アラカの段階にある胎児をヒルと比較すると、図1に示されるように両者に形状の点での類似性が見られます。またこの段階にある胎児は母親の血液から栄養を摂取するが、ヒルも同じように他の生物の血を吸って生きる糧としています。

図1

図1。ヒルとアラカの段階における人間の胎児の形状の類似性。(ヒルの図の出典:Human Development as Described in the Quran & Sunnah(クルアーンとスンナの中で描かれている人間の発育),Moore & others, p.37及びIntegrated Principles of Zoology(動物学における完全な法則),Hickman & othersから一部修正。胎児の図の出典:The Developing Human(邦訳「ムーア人体発生学」), Moore & Persaud,5th ed., p.73)

 アラカという言葉の2つ目の意味は「釣り下がったもの」です。図2と図3に示されるように、アラカの段階にある胎児は母親の子宮内で釣り下がった状態にあります。

図2  (ここをクリックして拡大する) 

図2。胎児はアラカの段階にあるとき、母親の子宮内で釣り下がった状態にあります。(TheDeveloping Human(邦訳「ムーア人体発生学」), Moore & Persaud, 5th ed., p.66)

図3

図3。アラカの段階にある胎児(約15日目、Bの矢印)が母親の胎内で釣り下がった状態にあることを示す顕微鏡写真です。胎児の実際の大きさは約 0.6 mmです。(The Developing Human(邦訳「ムーア人体発学」,Moore,3rded.,p.66,from Histology, Leeson & Leeson)

 

 そしてアラカの3つ目の意味は「血の塊」です。アラカの段階での胎児の外観とその胎嚢は血の塊と酷似しています。それはこの段階の胎児には、相対的に見て多量の血液が存在しているためです(図4を参照)。またこの段階においては胎児の中の血液は循環せず、その状態は第3週目終盤まで継続します。このような理由からも、この段階での胎児は血の塊に類似していると言えます。

図4  (ここをクリックすると拡大する)

図4。ムドゥガの段階(28日目)にある胎児の写真。この段階の胎児は何か噛み潰した物体のように見えるが、それは胎児の後背部にある体節が歯形と若干似ているからである。胎児の実際の大きさは 4 mm。(The Developing Human(邦訳「ムーア人体発生学」),Moore & Persaud,5th ed.,p. 82,写真は京都大学西村秀雄教授より転用)

 

 第2段階はムドゥガ」です。アラビア語の ムドゥガ は、「噛んだもの」を意味します。口の中に入れて噛んだガムとムドゥガの段階にある胎児の形状を比較してみると、両者の間に外観上の類似性が認められるでしょう。これは胎児の後背部の体節の形状が 、噛み潰したものに付いた歯形と若干似ていることによるためです(図5と図6を参照)。

図5

図5。ムドゥガの段階(28日目)にある胎児の写真です。この段階の胎児は何か噛み潰した物体のように見えますが、それは胎児の後背部にある体節が歯形と若干似ているからです。胎児の実際の大きさは 4 mmです。(The Developing Human(邦訳「ムーア人体発生学」),Moore & Persaud,5th ed.,p. 82,写真は京都大学西村秀雄教授より転用)

図6  (ここをクリックすると拡大する)

図6。ムドゥガの段階にある胎児の外観と噛み潰したガムを比べると、両者に類似点があることが分かります。 A)ムドゥガの段階にある胎児の図で、胎児の後背部の体節が歯形のように見えます。(TheDeveloping Human(邦訳「ムーア人体発生学」),Moore&Persaud,5thed.,P.79) B)噛み潰したガムの写真です。

 

  キース・ムーア(Keith Moore)名誉教授は解剖学と発生学の分野で世界的に最も高名な科学者であり、The Developing Human (邦訳「ムーア人体発生学」医師薬出版)の著者です。1981年、サウジアラビアのダンマーンで開催された第7回医学会議でムーア教授は次のように述べました。  

 「人間の発育に関してクルアーンの中で述べられていることを解明する手助けをすることは、大変喜ばしいことだ。これらの言葉が神からムハンマドに伝達されたということは、明白であると思う。これらの知識は全て、何世紀も後になって初めて発見されたものなのだ。私はこの事実が、ムハンマドが神の使徒であったに違いないことを示していると思う。」

 また、別の会議で、

 「…人間の胎児の発育段階区分は、そこにおいて変化する過程が連続しているため複雑なのである。それゆえクルアーンとスンナ(ムハンマドの言行、及び彼が承認したこと)の中で示されている用語を使って、新しい区分体系を開発するのはいかがだろうか?そこで提案された区分体系はシンプルかつ包括的であり、現代の発生学の知識と適合している。過去4年間クルアーンとハディース(預言者ムハンマドの教友たちが彼の言行や承認したことを伝えた伝承録)を徹底的に研究した結果、人間の胎児の発達段階を分類する体系が明らかになったが、それが既に7世紀の昔に記録されたことは驚くべき事実である。発生学の創始者であるアリストテレスは、紀元前4世紀に鶏の卵の研究を通じてヒヨコの胚が段階的に発育することを知っていたが、その段階の詳細にまでは触れなかった。発生学の歴史で知られていることに限れば。人間の胎児の発達段階とその分類は、20世紀になるまでは殆ど解明されていなかったのだ。このことから、人間の胎児に関するクルアーンの説明は7世紀当時の科学的知識に基づいていたとは考えられない。唯一理にかなった結論は。これらのメッセージが神からムハンマドに啓示されたということだけである。彼は科学的な教育を全く受けたことのない文盲であり、このように詳しいことまで知りえたはずがなかったのだ。」

 彼の胎児の発育についての発表のビデオをYouTubeで視聴できます。ぜひ視聴してみてください。

 Quran on Embryology - Professor Keith L. Moore(https://www.youtube.com/watch?v=J_Dllu42eEA&t=262s)

②宇宙の起源について

 現代宇宙科学では、観測上および理論上のいずれの点においても、宇宙全体が過去のある時点において「煙」(不透明で高密度、高温のガス混合物)状であったことを解明しています。これは現代宇宙学の基本原則です。今日の科学者たちはこの煙状体の残留物から新しい星が形成される様子を観察しています(図10と図11を参照)。

図10

 図10 。 ガスと塵から成る雲状の物体(星雲)から新しい星が形成される様子。この物体は全宇宙の発生源である「煙」の残留物の一部です。(The Space Atlas(宇宙アトラス), Heather and Henbest, p.50.)

図11 (ここをクリックして拡大する)
 図11。ラグーン星雲はガスと塵から成る雲状の形態で、その直径は約60光年。この星雲はその塊の中で最近形成された高温の星の紫外線放射によって励起されました。(Horizons, Exploring the Universe(ホライズン、宇宙探検), Seeds, plate 9, from Association of Universities for Research in Astronomy, Inc.)

 

 夜空に輝く星は、全宇宙が以前そうであったように「煙」状の物質の中にあります。クルアーンにはこう述べられています。

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 「それからかれはまだ煙であった天に転じられた...」(クルアーン41:11)

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 天体(太陽、月、星、惑星、星雲など)と地球はこの同じ「煙」から形成されているため、天体と地球はそもそも一つの連結した存在であったと結論付けられます。そして、この同質の「煙」から、これらは形成され、やがてお互いに分離していったのです。クルアーンには次のように述べられています。

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 「不信仰者たちには分からないのか。天と地は互いに連結していたのだが、われがそれを引き分けたのだ...」(クルアーン21:30)

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 世界的に著名な地質学者で、ドイツのマインツにあるヨハネス・グーテンベルグ大学地球科学研究所地質学部長の任にあるアルフレッド・クロネル(Alfred Kroner)博士は次のように述べています。

 「ムハンマドの素性を考えると...、彼が宇宙の共通の起源について知りえたとは到底考えられない。このことは、科学者達が非常に複雑で高性能な技術方法を駆使することによって、ここ数年になって初めて発見した事実なのである。」と述べています。

 彼のこの発表をYouTubeで視聴できます。ぜひ視聴してみてください。

 This is the truth UNCUT - Alfred Kröner (What scientists really think of the Quran)

イスラム教義と科学の発展

 上記において、クルアーンの中の近代科学によって発見された奇跡について2点を挙げて紹介しました。

 クルアーンが啓示され始めた段階の教友たちから現在までのイスラム教徒はこのクルアーンを日常において朗読し、その内容を繰り返し考え続けてきています。イスラム科学が発展した段階の教徒たちはクルアーンの朗読だけでなく、現実世界との結びつきを考えようとしていたと思われます。イスラーム科学が発展した理由のもう一つ、また重要な点はそこにあると思います。

 「イスラムの宗教的な教義は、物質世界とは、すべて神の動きの徴、神が創造し、支えている世界であるという概念を発達させ」「神を理解しようとすれば、神の創造のすべての側面、つまり、動物、植物、鉱物など人々の生活に必要とされる環境世界に存在している網羅万象を研究しなければなら」ず、「伝統的なイスラム教徒の信仰においては、物事を理解しようとするそうした努力は」「現世における人間の目的である公正と神の道に則った正しい生活を送る上で本質的な意味を持って」いたと述べられています。

 また、もう一つの重要な要素としての「好奇心」もイスラーム科学発展の要因でした。「好奇心という駆動力は、新たな文明の信仰、コーランに開示されている世界についての教義、次第に表現力を広げていったアラビア語と相俟って、イスラム教徒をあらゆる分野の知識の探求へと突き動かし」ました。「イスラム教徒たちは、自らの世界に意味を付与する驚くべき感覚に恵まれており、そうした営みを、イタリア・ルネサンスの最盛期、啓蒙の時代、産業革命の初期以外には匹敵するものがないほどの情熱とエネルギーをもって遂行し」ました。

③山について

 ここで述べるのはクルアーンにおける「山の基底」と「山の重要な役割」についてです。

 

 ①山の基底

 クルアーン78:67において、次のことが書かれています。

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 「われは大地を臥所(ベッド)とし、また山々を、杭としたではないか。」

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 フランク・プレス(Frank Press)名誉教授は彼の著書「Earth」の中で、山には基礎を形成する基底が存在すると述べています。これらの基底は地中深くにくい込んでおり、それゆえ山はちょうど杭のような形をしていると言われています(図1、2、3)。

図7

図1。山の地面下方には深い基底があります(Earth(地球), Press and Siever, p. 413.)。

 

図8 (ここをクリックして拡大する)

図2。断面図。山にはちょうど杭のように地中深くにくい込んだ基底があります(Anatomy of the Earth(地球の構造), p.220.)。

 

図9 (ここを拡大してクリックする)

図3。この図は山に深い基底があり、杭のような形になっていることを示しています(Earth Science(地球の科学),Tarbuck and Lutgens, p.158.)。

 現代の地球科学は、山の地中に深い根があり(図9)、これらの基底の長さが地上に出ている部分の数倍にまで及ぶことを証明しています 。この事実から山を描写する上で最も適した言葉が「杭」なのであると言われています。

 なお、山の地中に基底があることは1865年にはじめて地質学者ジョージ・アイリー卿によって理論的に提唱されたと言われています。

 

②山の重要な役割

 クルアーンの16:15において、

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「またかれは、地上に山々を堅固に据えられた。これはあなたがたを揺れ動かさないためである...」

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と書かれています。山は地球の震動を妨げ、地殻を安定させるために重要な役割を果たしていると言われています。地球を安定させる山の機能に関するこの知識は地質構造学界においては1960年代後半以降になって理解されてきたと述べられています。