九州大学法学部の教員が新入生におすすめする本2025: な・は・ま

法はそもそも誰のためにあるのか？法は何を守ろうとしているのか？という、法学を学び始めた学生なら誰もが抱く疑問について、古代ギリシャやローマの歴史と古典に遡り考えていく一冊。歴史を学んだり、小説を読んだり、映画を見るのは好きだけど、法学の講義にはちょっとなじめないという学生におすすめ。

ワクチン接種を義務化すべきか？男女別トイレは廃止されるべきか？裁判官はAIで代替できるか？といった日常生活を送ったり法学を学んだりしていると直面する素朴な疑問に真剣に取り組み答えを示そうとする一冊。法哲学者というわけではないのだが、なぜか私も本書でフェイク・ニュースを規制すべきか？という問いに取り組み、私なりの答えを示しているので、疑問をもって読んでほしい。

Google, Apple, Amazon, Metaなどプラットフォームが私たちの生活や社会に大きな影響を及ぼすようになっている中で法やルールのあり方はどのように変わっていくのだろうか？憲法、民法、刑法などさまざまな分野の専門家がプラットフォーム時代のルールの作り方について問題提起し議論している一冊。私も、情報法の立場からプラットフォームの規制のあり方について問題提起している。

最高裁判所の裁判例に関して、いくつかの実例を素材にして、一般市民向けにわかりやすく説明したもの。内容的には大学法学部の授業水準からするとかなり不十分な記述の多いものではあるが、高校生でも読めるぐらいのレベルなので、本格的な法学部の専門科目の授業を受講する前に読み通すぐらいはしておくとよい。

障害者が人間として尊重され、幸福を追求することができるとはどういうことかを考えさせます。映画もよいですが、原作の方がお薦めです。

当時高校３年生で現役アイドル（AKB48メンバー）だった内山奈月さんに、私が、２日間にわたって「憲法とは何か」を講義した記録をまとめたものです。新入生のなかには、憲法と言えば９条や前文くらいしか印象にない人もいるかもしれません。そんな人にもぴったりの一冊で、憲法の難しさと面白さがわかる内容にしたつもりです。新刊はもう売り切れており、手に入らないかもしれませんが、図書館や古本屋さんで手に取ってみてくれると嬉しいです。2014年に単行本が出たときには大変大きな反響があり、発売後すぐに、アマゾンの書籍総合ランキングで１位になりました。こちらはその文庫版です（内容は同じです）。題字を書いたのは誰か、にも注目してください。

福岡・久留米在住の直木賞作家であった葉室麟（はむろ・りん）さん。惜しくも2017年に病気で急逝されてしまいましたが、生前、私は何度か対談させてもらったり、食事や取材を一緒にさせてもらったりしました。この本は、今年の３月に出たばかりですが、そんな葉室さんの生前の対談集です。日本の歴史や文明について関心をもつ新入生は（法学を学ぶ者としてはそういう方面に関心をもってほしいものです！）、是非読んでみてください。一つ一つの対談は長くないのですぐ読めるでしょうし、対談相手には、私のほか、基幹教育院教授の福田千鶴先生、比較社会文化研究院教授の伊藤幸司先生、同じく比較社会文化研究院名誉教授の中野等先生（現・福岡市博物館総館長）も登場されます。福田先生、伊藤先生には、みなさんももしかしたら今後キャンパスで出会う機会があるかもしれませんよ。

私の憲法学の先生でもある樋口陽一先生（東京大学名誉教授）が一般向けに書かれた憲法の本です。いまから45年も前に出版されたものですが、いまだに読むに値する名著だと思います。私もいつかこの本のように長く多くの人に読み続けられる本を書きたいと思っていますが、まだまだ修行が足りません。こちらは新刊も手に入りますし、もちろん、図書館にもあります。読んで気になることなどがあれば、是非質問に来てください！（この本だけでなく、①についてももちろんですし、②についても、私の部分であれば歓迎します。②の他の九大の先生の部分であれば、その先生に質問に行ってみるのも良いかもしれません。大学は出会いの場。知と出会い、人と出会い、豊かな人生を築きあげる第一歩にしてください。応援しています！）

通常の歴史学では物足りない方、或いはそれらに飽きてウンザリしている方、本当の歴史学への登山口はこちらです。

国家と法をめぐる思考を辿っていくとどうしても避けては通れないドイツについて、簡にして要を得た解説を洗練された日本語で読める幸せに浸ってください。

法学部の勉強以外に自分が日頃からどれだけ豊かな読書をしているか（或いはしていないか）、この本が格好のバロメーターになります。

「哲学」と聞くと少し難しそうに感じるかもしれませんが、「どんな政策が正しいのか」について深く考える必要がある点には多くの人が賛同するように思います。この本から、動物実験、ギャンブル、ドラッグなど様々な政策について「どんな政策が正しいのか」を深く考える際のヒントが見つかるかもしれません。

政治について私たちの持つ思い込みを解いてくれるとともに、そのイメージを広げてくれる本です。その意味で、むしろ「政治なんて」と思っている人にこそ、ぜひ手に取って欲しい一冊。

色々な国の色々な人が、それぞれの「夢」を語ってくれます。他の人がどんな「夢」を持っているのかをチラ見してみるだけでも、「へぇー」と思いますよ。

私が現在の分野を研究しようと考えるきっかけになった本。内容についての賛否はともかく、「大学は、法学部はこんなに自由に考えて良い場所なんだ！」と感じて欲しい。

事実は小説より奇なりというが、小説は事実より事実について雄弁であり得ることを忘れてはいけない。小説（フィクション）は事実を理解する上でも世界の可能性を考える上でも、絶えず触れておくべきである。想像力はひとりでに働くものではない。

コロナ禍に日本中のスナックを飛び回ったルポルタージュを中心に、幅広い教養を備えた著者（法哲学者）の分析が冴える。新入生に推薦する本としては相応しくないかもしれないが、社会科学を学び始めるに際して、心に留めておくべき事柄が詰まっているように思う。

人間の、人生の、世界の、「ほんとうのこと」に関する本です。