さて、なぜUCDが必要なのでしょう?
UCDはユーザーとシステム・プロダクト・サービスの間にあるギャップをなくすことが可能です。
例として、通常のテレビリモコンにボタンがいくつあるか皆さんご存知ですか?ーー数十個あるのが普通です。でも、皆さんがテレビを見る時、いくつボタンを使いますか?
電源、チャンネル、音量、番組表・予約関連を全部入れても十数個です。それ以外のボタン(例えば、”らくらくアイコン”、”ビエラリンク”、”アクトビラ”、”おもいで”、”かんたんスタート”、”入力3スルー”など)を何に使うのか詳しくご存知ですか?
図2:ボタン数の多いテレビリモコン(出典:Pixabay)
メーカーがユーザーの満足度を上げるため、さまざまな機能をつけてテレビの高機能化を実現してきました。しかし、インタフェースに数多くのボタンをつけても、果たしてユーザーに活用されるでしょうか?
メーカーは市場競争の中で、より豊富な機能を提供してシェアを上げようとすることはよくありますが、機能を充実させようとするあまりにリモコンのボタンがどんどん増え、インタフェースが煩雑な情報で溢れてしまいます。我々ユーザーが求めるのは分かりやすいインタフェースで必要な機能を実現させることです。つまり、メーカーが自社の視点のみでデザインを考えると、作った製品とユーザーの間にギャップが生じてしまうのです。
既存のテレビリモコンは、無駄なボタンが多すぎて使い勝手が良くありません。ユーザーの視点から見た使いやすいリモコンがあったらどんなにいいでしょう。そこで、良いリモコンがあります。
それが、2012年に登場した、LGエレクトロニクスのマジックリモコンAN-MR300です。ボタンの数を10個くらいに減らしたシンプルで個性的な外観で一時話題となりました。
図3:リモコンAN-MR300(出典:LGエレクトロニクス)
そのような点が高く評価されて、レッドドットデザイン賞(Reddot Design Award 2012)、および国際ユニバーサルデザイン賞(Universal Design Award 2012)を受賞しました。
イードが2012年に実施した「スマートテレビに関する利用体験調査」によると、LGエレクトロニクスは比較された4社中の総合評価トップとなり、購入の意向では2位のソニーの倍以上の票を集め1位となっています。
しかも、その続作、プレミアムマジックリモコン AN-MR13Pはレッドドットデザイン賞(Reddot Design Award 2013)を受賞し、なんと2年連続受賞となりました。そのほか、AN-MR13Pとその連動するテレビLA9600はグッドデザイン2013賞も受賞しました。
図4:リモコンAN-MR13P(出典:LGエレクトロニクス)
関連の説明の中にUCDなどの概念は特に強調されていませんが、実物を見ると従来のリモコンと比べて、新しい製品は明らかに利用者の使い勝手に配慮したものになっています。ボタンの数を減らして、見やすさと使い勝手を強調することで、利用者のニーズに答え、満足させることがUCDのメリットだと私は思います。