『ミスター味っ子 激ウマセレクション(7)鍋・カニ編』
寺沢大介 講談社
主人公味吉陽一は中学生ながらも卓越した料理技術を持ち、次々に出てくる個性的なライバルたちと料理バトルを繰り広げます。
作る作品がほとんど超展開を繰り広げることで有名な今川泰宏監督によってアニメ化された影響か、初期の漫画ではそんなに派手なバトルはなかったのですが、後半に移るにつれ料理を食べた際のリアクションや料理の派手さが目立つようになっています。
この漫画のリアクション芸の派手さは、後の「焼きたてジャぱん」に代表されるような料理漫画に強く影響を与えたと言われています。
『ファッションフード、あります。』
畑中三応子 紀伊国屋書店
中央図書館所蔵
戦後のポップカルチャーとしての食べ物について解説した本です。ミスター味っ子に関する記述はありませんが、同じくグルメブームに大きな影響を与えた「美味しんぼ」について解説しています。
『ひもほうちょうもつかわない平野レミのおりょうりブック』平野レミ 福音館書店福岡市総合図書館所蔵(カーリルHP)
「きょうの料理」などの料理番組でキャベツにキュウリをぶっ刺したりボウルでニンニクを叩き潰すなど、ある意味ミスター味っ子のようにトンデモ展開を繰り広げる平野レミ氏の料理本です。
こどもが危ない道具を使わず簡単に作れるレシピを紹介しています。この本なら簡単においしい料理が作れますので、小さい子に料理の楽しさを知ってもらう導入としてふさわしい本です。
世界各地の昆虫食について解説した本です。一見おいしそうなものから(個人的に)生理的に受け付けないレベルのものまで、様々な昆虫の食べ方と昆虫食を取り巻く文化について論じています。残念ながら冬虫夏草は厳密にいうとキノコなのであまり詳しい記述はありません。
この中で私はイナゴの佃煮を食べたことがありますが、小エビの佃煮のような味と触感で美味しかったです。今後食糧難が予想される中で国際連合食糧農業機関(FAO)はたんぱく質摂取法として昆虫食を推奨しています。きたる食糧難に向けて虫を食べることに慣れてみませんか?
『原色冬虫夏草図鑑』清水大典 誠文堂新光社中央・理系・芸工図書館所蔵(理系・芸工は禁帯出)
冬虫夏草の図鑑です。冬虫夏草と一口に言っても様々な種類があり、カラースケッチで詳しく解説されています。
虫が苦手な人は読まないことをお勧めします。
『体にやさしい具だくさんスープのレシピ』
水谷和生 新星出版社
筑紫図書館所蔵
様々なジャンルのスープが掲載されている本です。冬虫夏草鶏スープほど手間もお金もかからないので、一人暮らしの学生が野菜をたくさん食べるのにもってこいです。
今回は番外編としてマンガ飯を作ります。この料理は通常版10巻(激ウマセレクション7巻)の4話「冬虫夏草」と5話「合作のスープ」に出てきます。父の弟子が中国から来日した際に、主人公陽一は中華スープをふるまうのですが個性がないと一蹴されます。そこで陽一は彼の滞在期間2週間のうちに最高のスープを作ると約束します。陽一は父の料理ノートにヒントを得ようとしたときに、冬虫夏草の存在を知り料理に取り入れることにしたのですが肝心なところが破れていて困る所から始まっています。
「マツコ・有吉の怒り新党」(番組HP)の新三大○○で紹介されるほど超トンデモ展開で有名な本作でも、材料が高級すぎて手に入らないという点で屈指の作りにくさだと 思います。今回は幸運にも冬虫夏草がただで手に入りましたので(所属研究室の先生の中国出張土産でした)、頑張って作ってみようと思います。冬虫夏草を食べたことがある人が周りに一人もいないので、どんな味になるか全然想像つかないです。
漫画から読み取れる表現として、
・韓国料理の参鶏湯を参考にした
・スープは鶏がら、牛すね、ネギ、生姜、その他材料でだしを取っている
・冬虫夏草はスープを作るときに一緒に煮込んでいる
・もち米とシイタケが丸鶏のおなかの中に詰められ、スープで煮込まれている
・スープは深いコクと清涼な味わい
・年寄りにやさしい味
というのがありました。
今回はオレンジページの参鶏湯の作り方と焼き鳥屋さんの鶏がらスープの取り方を参考にしました。
こちらが乾燥させた冬虫夏草です。
冬虫夏草とはガの一種の幼虫に子嚢菌が寄生して育つキノコの一種で、中国では古来より漢方として珍重されてきました。見た目は切り干し大根にしか見 えませんが、超高級食材でAmazonだと50gで73800円でした(ヒェー)。今回は惜しまずたくさん使っちゃいますよー!!
材料
(スープ用)
鶏ガラ 500 g
冬虫夏草 10 g (14700円相当なので無駄にできないですね)
生姜 ひとかけ(今回はチューブで代用しました)
長ネギ 2本(青い部分だけ)
人参 1本
(具材)
骨付き鶏肉 800~1000g(本当は丸鶏なのですが入手できず水炊き用のものを使用しました)
シイタケ 1パック
もち米 大さじ4
長ネギ 2本(スープを取る際に使用しなかった白い部分を使います)
ニンニク ひとかけ(今回はチューブで代用しました)
塩 適量
① スープを作ります。鍋に水を張り沸騰させたら鶏ガラを入れ、吹きこぼれないように10分ほど煮立たせ、流水で鶏ガラをしっかり洗います。
② 長ネギと人参を適度な大きさに切り、埃を払うために冬虫夏草を軽くさっと水で洗います。洗いすぎると健康にいいエキスが流出してしまうので気を付けましょう。
③ 鍋に鶏ガラを戻してスープ用のほかの材料をすべて加えて水を張り、強火で煮立たせます。その後沸騰したら弱火にして2時間煮込みます。この際灰汁が出た ら取り除き、スープの量が少なくなったら水を足しましょう。なんか予想していたよりスープの色が超濃いんですけど・・・。
④ スープを作っている間にシイタケを一口サイズに切り、長ネギを小口切りにし、もち米を洗って10分ほど水に浸してざるにあげます。
⑤ 2時間たったら鶏ガラなど大きな具を取り出し、キッチンタオルやガーゼでスープを濾します。小骨に注意しながら鶏ガラの身の部分を外してほぐします。
⑥ 濾したスープを鍋に戻し、塩で味を調えてから骨付き鶏肉・シイタケ・もち米・にんにく・ほぐした鶏肉を加えふたをし、強火にかけます。煮立ったら灰汁をとって弱めの中火にし、蓋をして30~40分ほど煮立たせます。
⑦ 器に取り分けて、お好みでねぎをのせてください。
ポイント
もち米を入れて炊くのが面倒な人は事前に炊飯器で炊いておじやみたいに後から加えるのもありだと思います。
うーーまーーぁぁあいいいいいぞおおおおおお!!!!!!!
味皇様※なら口からビームを出すレベルです。味付けには塩を少ししか使っていないにもかかわらず、鶏ガラスープのがっつりしたコクと冬虫夏草の深みと清涼感が合わさって絶妙なハーモニーを醸し出しています。鶏ガラスープのくどさを冬虫夏草が消して、互いに互いの良さを引き立て合っています。薬膳が3種類も入っているのでスープを口にした途端体がぽかぽかしてきて、冷え性の人にもぴったりだと思います。この料理ではふつうのうるち米ではなくもち米を使っていますので、もちもちした食感が満腹感につながります。冷やしたら固まるほどこのスープにはコラーゲンがたくさん含まれていて美容にも良いです。
卒業式でこのスープをふるまったところ、おいしいからまた作ってほしいと非常に好評でした。このスープならお父さんのお弟子さんも納得すること間違いなしで すね。
※味皇様:作中の登場人物で味皇料理会のトップ。陽一の才能を発掘したのもこの人。この人がひとたびおいしい料理を食べると、口からビームを出したり海を疾走したりとオーバーリアクションが目立ちます。昨今の料理漫画のリアクションの激しさは大体この人のせいです。