堺雅人主演で「南極料理人」というタイトルの映画にもなりました。海上保安庁に所属する著者がひょんなことから個性のぶつかり合いともいえるメンバーが集まる南極調査隊に料理人として同行して活動するエッセイです。著者がやはりネイビー(海上保安庁の隊員)としてウィットに富んだ人なので、辛かったであろう南極生活も軽妙な語り口で述べているのでげらげら笑えてしまいます。
『海自レシピ お艦の味』小学館出版局 海上自衛隊 小学館福岡市総合図書館所蔵(カーリルHP)
海上保安庁とは違う組織ですが、海上自衛隊のレシピを紹介した本です。長い艦隊勤務では食事だけが楽しみになってきますので、ガッツリとカロリーが高そうなメニューが多いですが非常においしそうなレシピがふんだんにあります。
『実業美術館』赤瀬川原平 山下裕二 文藝春秋中央・理系図書館所蔵
一般的には美術品として価値のない産業界のものを美術品として同じように鑑賞するエッセイです。これまた海上保安庁とは別組織ですが、広島県呉市にある大和ミュージアムについての紹介があります。
旧日本海軍の主計科(食糧や衣類を管理する部署)に所属していた息子の手紙を交え、父親の心情を描いた一冊です。戦時中は食糧難であったにせよ、海軍の前線では比較的豊かな食生活を送っていたことが分かります。
『同行二人 特殊潜航艇異聞』井上雄彦 ユーウ企画出版部福岡市総合図書館所蔵(カーリルHP)
旧日本海軍の特殊潜航艇を舞台としたブロマンス(BLほどではないが男同士の絆の強い作品のこと)です。死が目の前に迫る極限環境の中で、階級差を越え深まる二人の絆が見どころです。
今回はその中でも、「鶏肉入り前日余った煮物中華ドレッシングかけ酢豚風」にチャレンジしてみます。船で南極に到着してからドーム基地に大型雪上車で時間をかけながら移動します。そのなかで、冷凍野菜ミックスで作った煮物の残りを流用して酢豚を作ります。
作中に見られる記述として、
・冷凍の和風煮物野菜ミックスを使っている
・サトイモ、ニンジン、シイタケ、タケノコが入っている
・豚肉ではなく鶏肉を使用
・一度煮物にしたものを再利用している
・味付けは中華ドレッシング
・マイナス50℃の極寒で調理
・調理スペースが狭い
・同行した中国人研究者もうなる味
というのがありました。
検索したところ、味の素冷凍食品株式会社の商品で同名の「和風煮物野菜ミックス」というものがありましたが、近所のスーパーには売られていなかったので、ニチレイの同様の商品「彩る7種の和風野菜」(商品HP)を用意しました。また、刻みにんにくの瓶詰は桃屋が出しているようでしたので、これらを使用して作ってみました。冷凍の野菜ミックスを使った煮物の作り方はニッスイHPを参考にしました。私の家のキッチンも一口コンロの狭いキッチンなので、調理スペースの狭さも再現できていると思います。中華ドレッシングで味付けした煮しめの味が想像できないです。
材料
煮物
和風煮物野菜ミックス 300g
和風だし 小さじ1 1/2
水 300ml
醤油 大さじ1
みりん 大さじ1 1/2
砂糖 小さじ1 1/2
塩 少々
酢豚風
鶏肉 1枚
片栗粉 適量
ごま油 大さじ1
刻みにんにく(瓶詰) 大さじ1
中華ドレッシング 一瓶
① 鍋に水、和風だし、醬油、みりん、砂糖、塩を入れ、沸騰させる。
② 野菜ミックスを鍋に凍ったまま入れ、再び沸騰したら落し蓋をして8分間煮含める。
③ 残り物感を出すために一日冷蔵庫でおいておきます。
④ 鶏肉を一口大に切り、片栗粉をまぶし、油を引いたフライパンで焼く。その後、温めておいた煮物の鍋に焼いた鶏肉を加え、温める。
⑤ 刻みにんにくをゴマ油でいため、そこに中華ドレッシングを一瓶あけて沸騰してきたら水溶き片栗粉を加える。
⑥ ⑤に④を加えてよく混ぜたら出来上がり。
ドレッシングを1瓶も使い、ニンニクもがっつり入って味が濃すぎるのではないかな~?と予想していましたが、そこまでくどい味ではないです。酢豚かと言われると疑問符がつきますが、ドレッシングの酸味も相まって和風の酢豚といった感じでおいしいです。鶏自体は下味をつけていないので、かなり酢豚といった感じが強いですが、野菜は一度煮しめにしたものなので、最初の口当たりは中華ですがかみしめると煮しめの味がします。しかし、中華の味の方がかなり強いと思います。にしめは大量に作るとおいしいといいますが、ずっと続くと飽きるので、目先を変えるアイデアとしてこのアイデアはかなり使えます。鶏肉を焼くときに片栗粉をしっかりまぶしているので、さらっとした餡が好きな人はドレッシングに水溶き片栗粉を入れなくても大丈夫です。Cuterや研究室のメンバーに食べてもらったところ、
・酢豚と遜色ない
・米が欲しい(複数意見でした。用意してなくてごめんなさい)
という感想がありました。
中国人留学生が休みだったので台湾人留学生にこの料理を食べてもらったところ、ご飯がほしくなる美味しさだそうです。やはり日本化された味だそうで、より中国風に近づけるためには、甘さと辛さをプラスした方がいいとのことです。