前章で述べた通り、もしボランティア活動のやりがいをある種の価値共創と考えれば、活動をしながら自分も何らかのメリットを得ることで、活動参加するモチベーションを高めることが十分可能です。つまり、活動の参加者にとっては、社会・他人に対して持つ善意がもちろん最初の動機ですが、「ボランティア活動を自分の利益となるように使う」という考え方が継続的な活動とつながります。
それでは、学生がボランティア活動に参加してどんな価値が創造出来るのでしょうか?以下の四点があるのではないかと、僕は思っています(図7)。
図7:ボランティア活動で創造する価値
こころの豊かさとつながる
ボランティアは基本的に無償で行われるため、金銭など直接な利益を得ることはできないかもしれませんが、助けられた人から感謝されたり「ありがとう」と言われる事が多いでしょう。「ありがとう」という言葉を聞くと、嬉しくなりませんか?人間は社会的な動物であるため、社会にとって自分の価値 を明確にすることで生きがいが実感します。そのため、人から必要とされ、感謝されることは、皆さんのこころの豊かさとつながります[注3]。
自分自身が成長する
学生の皆さんは社会に入って壁ににぶち当たることが多いでしょう。その壁を乗り越えるためには、早い段階で自分自身の成長が必要となります。基本的に、ボランティアの活動のフィールドにて さまざまな課題への対応、及び 創造性のある活動 が求められます。こういった地道な活動の成果で何かを達成できれば、皆さんの中で一つ社会に対する考え方が変わって、自分自身が大きく成長することになるでしょう。
人間関係の幅が広がる
多くの大学生には学校とバイト先の仲間しか出会いがなく、自分の人間関係の輪が多少狭く感じるかもしれませんが、ボランティアを通じて同年代の人だけでなく、普段の学生生活では出会う事ができない人たち、例えば年配の方、自分よりずっと幼い子供に出会う機会がたくさんあるかもしれません[注3]。国際ボランティア活動に参加する場合、世界中の人々にでも出会えます。様々な人との繋がりを持つことで、人間関係が広がります。
進学・就職活動に有利
賛否両論の意見がありますが、学生ボランティアの活動として最大のメリットと言っても良いでしょう。例えば、上級学校への進学や就職における自己アピールの材料 として使って、卒業後の進路内定という「対価」を得るための手段とされることがよく見られます。また、実際に社会に出て無償で活動する経験は、金銭を得て働く労働と対照的であり、二つを比べる事で働く意味や意義を考える機会に繋がります。
ボランティアをする人が得られる価値について、様々な説があります。例えば、松瀬氏は「学びの深まりと人間的成長」と強調しており[注4]、森氏では「視野が広がる」と主張しています[注5]。どのような説であっても、数多くの専門家がそれについて論じている事実は、ボランティアをする価値があることを示しています。この観点から、九大生の皆さんがボランティア活動に参加することについて考えてみましょう。ボランティア活動の参加は社会・他人に対して価値を創造することはもちろん、参加者自身にも価値を創造できるわけです。ボランティア活動から得られた嬉しさ、人脈、経験などは学校生活では手に入れることができないので、その意識を持って自分に合うボランティア活動に参加することは九大の皆さんにとっては自分磨きと社会勉強の一環として不可欠なのではないでしょうか。
出典:
[注3]Campus Magazine:大学生がボランテイアに参加する5つのメリット(リンク - http://magazine.campus-web.jp/archives/24862)
[注4]松瀬房子:大学におけるボランティアコーディネーションの課題と展望 〜教育の新しい動向とコーディネーターの役割〜(リンク - https://www.jasso.go.jp/gakusei/publication/__icsFiles/afieldfile/2021/02/19/houkoku_01_H20.pdf)
[注5]森宣:援助する側のメリットとは?(リンク - http://www.jica.go.jp/kyushu/renrakukai/ku57pq00000b2brt-att/oita_kaiho19_02.pdf)