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私の卒論ができるまで: 丹生谷颯人(九州大学農学部・2018年卒): できるまでの道のり

九州大学の図書館でティーチングアシスタントとして働く院生が学部時代に卒業論文にどのように取り組んだか紹介します。

目次

初めに

  • 私の卒論シリーズ
  • 今回の先輩は丹生谷颯人さん

できるまでの道のり

  • 卒論の内容と長さ
  • 最終提出までのスケジュール
  • ここがポイント

Q&A

  • 普段の生活との両立
  • 活用したツール

終わりに

  • オススメ本
  • 後輩へのメッセージ

おまけ

  • 卒論の内容をもっと詳しく

このガイドの作成者

Profile Photo
丹生谷 颯人
連絡先:
本ガイドは図書館学習サポーター/図書館TA(Cuter)として勤務した際に作成したものです。

勤務期間 :2018年4月~
作成時身分:大学院生
作成時所属:九州大学大学院
      生物資源環境科学府
      生命機能科学専攻
      海洋資源化学分野

 こんにちは、生物資源環境科学府、海洋資源化学研究室所属の丹生谷(にゅうのや)颯人です。海に生息する魚や微生物の脂質を主な研究対象としています。
 Cuterのカウンターにも、研究室にも、気軽に遊びに来てください。
研究室URL: http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/kaishika/
↓リンク
Website

卒論の内容と長さ

私の卒論のテーマは 「ラビリンチュラ類の新規中性脂質代謝関連遺伝子の探索」 です。

ラビリンチュラって何? 中性脂質ってコレステロールなの?体に悪いやつ? 等々疑問が浮かぶでしょう。

これからご説明いたします。

(2017年12月 撮影)

 ラビリンチュラ類は海洋性の真核単細胞生物で、世界中の海に生息していることがわかっています。(なんと南極海にも生息しています!)彼らは藻の仲間ですが光合成をせず、外から栄養を吸収して生活しています

 彼らが注目を集める理由はその細胞内構造にあります。上の写真でもわかるように、彼らは細胞内に「油滴」と呼ばれる球状の構造をいくつも持っています。代表的なラビリンチュラ類であるAurantiochytrium属の油滴には、ドコサヘキサエン酸(DHA)やパルミチン酸といった脂肪酸がトリアシルグリセロールという中性脂質の形で蓄積されています。みなさんが普段魚から摂取しているDHAは、実はその多くがラビリンチュラのような微生物由来だと考えられています。

 細胞の中に油を大量に溜め込み、属種によって蓄積する油の種類が異なることから、ラビリンチュラ類は医薬品やジェット燃料の新たな供給源になることを現在期待されています。

 しかしラビリンチュラ類が実際に油滴の中に油をどのように蓄積しているのか、そしてどの遺伝子がその役割を担っているのかについてはほとんど分かっていません。私はラビリンチュラ類の遺伝子をランダムに破壊し、油の量や種類に影響を及ぼした細胞を評価して原因遺伝子を特定することで、ラビリンチュラ類の中性脂質代謝機構の謎を解明することを目的としました。

 私の場合、卒業論文はこのように書きましたが、研究分野によってそのページ数は大きく異なると思います。

 私の卒業論文は 26 ページ 10,107 文字 でした。数枚の写真や表を一つの図としてまとめ、私の卒論には 8個の図 を入れました。

 

(2022年10月18日追記)

こちらの研究は最終的に学術論文としてBioscience, Biotechnology, and Biochemistry誌に掲載されました。興味がある方はチラッと見てみてください。

https://doi.org/10.1093/bbb/zbac141

最終提出までのスケジュール

◯テーマの選択

 農学部は分野によって研究室への配属時期が異なりますが、水産科学分野では3年生の1月から研究室に仮配属、4年生の4月から正式に配属されます。分野によっては3年生の後期から配属されるところもあります。

 私は応用科学系の研究室が多い農学部の中で基礎科学研究をしたいという思いを3年生当時から持っており、加えて教授の講義を受けてその人柄に惹かれ、海洋資源化学研究室を選択しました。(研究室選択では教員との人間関係は非常に重要な要素の一つ)

 私の研究室では3年生の1月から3月まで研究室全体の研究内容に関わる総説などを読んで勉強していました。私は当時同期が僕を含めて5人いたため、4年生に進級する際に5つの研究テーマを提示され、その中から自分の興味を踏まえてテーマを選びました。

◯研究の進め方

 私の研究室には研究の進捗報告会として、3週間に1回程度行う小グループでのミーティングと3ヶ月に1回程度研究室のメンバー全員の前で発表するプログレスレポート(PR)の2つがあります。そのため、短い間隔でやってくるミーティングに向けて日々実験に励んでいました。

 しかし生物を扱う研究のスケジュールは対象とする生物種、あるいは生物の成長具合次第で大きく変わってきます。結果が出なかった時は正直に進言して、改善策を提案すれば問題ありません。気まぐれな生物に左右される研究には、時に辛抱強さが求められます。

 卒業研究では、ほとんどの学生が人生で初めての研究に取り組むことになります。勉強しても知識が追いつかない、実験に何度も失敗して挫折しそうになる人もいると思います。実験に失敗はつきものです。気持ちの浮き沈みはあると思いますが、あなたも卒論を執筆する頃にはきっと成長しています。気持ちが潰れてしまいそうな時は、指導教員だけでなく、先輩や同期も良き相談相手となるはずです。

◯卒論執筆方法

 農学部は〆切が設定されている分野と各研究室に〆切を委ねている分野があります。後者の分野では卒業論文が卒業要件に含まれていません。私の研究室は修士課程に進学する場合、実質的な〆切は翌年度に持ち越されます。卒論自体は3月の頭から書き始めるため、長めの執筆期間となります。研究室によっては短期間で書き上げなければならないところもあるでしょう。その場合も、執筆中に適宜指導教員と議論・相談して大きな失敗は避けるようにしましょう。

 

時期   やったこと

2017年1月

2017年4月

2017年7月           

2017年8月

2018年3月初頭

2018年3月

2018年4月上旬

海洋資源化学研究室に仮配属された。

研究室に正式に配属された。研究テーマを選択して実験を開始した。

研究室内で中間発表が実施された。進捗状況を確認して卒論発表会までの実験計画を設定した。​

大学院入学試験を受験した。

農学部水産科学分野卒業論文発表会が実施された。

指導教員と日々議論しながら卒業論文を執筆した。

教授に卒業論文の完成版を提出した。

ここがポイント

 私の場合、卒論提出〆切が卒論発表会 (※)直後に提示され、わずか10日後の仮〆切に向けて卒論を執筆することになりました。幸いにも卒論発表会で卒業研究の内容は自分の中である程度まとまっていたため、〆切前に草稿を提出することができました。

 卒業論文は身構えていなくても、毎日執筆する時間をしっかり取れば1週間程度で書ける場合が多いと思います。しかし、いざ直前になって焦らないように、指導教員と卒論の執筆スケジュールについては相談しておきましょう。

 卒業論文の原稿は早めに指導教員に見てもらうようにしましょう。教員は同じ研究室の卒論生・修論生を同時に指導するため、早めに提出すると訂正指導などの作業が非常にスムーズに進みます。

 

※ 卒論発表会は自分の1年間の研究成果を先生方や先輩後輩の前で発表する貴重な機会です。自分が取り組んできた研究がいかに面白いテーマなのかをアピールすることを軸に作りましょう。卒論発表会で失敗したからといって卒業できない、ということはまずありません。ただ準備は怠らずに、練習を繰り返して自信をつけておきましょう。

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普段の生活との両立

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