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私の卒論ができるまで: 大坪悠介(九州大学工学部・2018年卒): できるまでの道のり

九州大学の図書館でティーチングアシスタントとして働く院生が学部時代に卒業論文にどのように取り組んだか紹介します。

目次

初めに

  • 私の卒論シリーズ
  • 今回の先輩は大坪悠介さん

 

できるまでの道のり

  • 卒論の内容と長さ
  • 最終提出までのスケジュール
  • ここがポイント

 

Q&A

  • 普段の生活との両立
  • 活用したツール

 

終わりに

  • オススメ本
  • 後輩へのメッセージ

 

おまけ

  • 卒論の内容をもっと詳しく

このガイドの作成者

Profile Photo
大坪 悠介
連絡先:
本ガイドは図書館学習サポーター/図書館TA(Cuter)として勤務した際に作成したものです。

勤務期間 :2018年4月~2020年3月
当時の身分:大学院生(修士課程)
当時の所属:九州⼤学⼤学院システム情報科学府情報学専攻

卒論の内容と長さ

私の卒論のタイトルは

「代表組み合わせ分配関数を用いたディープビリーフネットに基づく欠落モダリティからの特徴抽出」

です。

 

うーん、何のことやらですよね。でもやることは簡単です。

複数のセンサーをうまく統合して、センサーを個別に処理するより役に立つ情報を得よう

というものです。

 

以下、具体的なまとめです。読み飛ばしても次の章以降を読むのに支障はありません。


卒論の中身 ~ざっくりと~

世の中にはたくさんのセンサーがありますがそれらは近年のIoT化の流れを受けて互いにつながり,統合されてきています.例えば次世代のスマートハウスはたくさんのセンサーで人体を計測します.一例として寝ているときは体温を熱センサーで計測し,姿勢を骨格センサーで計測しそれらを統合して睡眠状態を判断できれば,目覚めの最適なタイミングで起こすことができそうです.

しかしセンサーの統合はそう簡単ではなく特に実世界ではあるセンサー情報が欠けてしまうことが多々あります。例えばあるセンサーが一定期間故障したり、たまたま人が計測できない位置にいたり、そもそもセンサー毎に計測するタイミングがずれていたりします。

そこで私はセンサー情報の一部が欠損していても統合後の精度低下を抑える手法を考え、その効果を実験で実証しました。


↑ 実験に使っているコンピュータ。得意な問題に対しては普通のPCの約4000倍速く計算できます。

 

 

各章のタイトルは次の通りです。

これだけ聞いてもわけわからんと思いますが雰囲気だけ感じてください!

第1章 序論

第2章 ディープビリーフネットによる欠落モーダルデータからの表現学習

第3章 分配関数の代表近似を用いたディープビリーフネットによる欠落モーダルデータからの表現学習

第4章 人工データによる実験

第5章 結論

詳しく知りたいかたはおまけページへGo!

 

 

ちなみに長さはA4で20ページでした。

しかし論文は長ければよいというものでもないので

ページ数は気にせず

書くべきことを書くことに集中してよいと思います。

最終提出までのスケジュール

完成までのスケジュールはこんな感じでした。

 

時期   やったこと

4月

5月ごろから

7月下旬

8月中旬

9月

1月下旬

2月

2月下旬

研究室に配属!やる気MAX! 機械学習とプログラミングの勉強

研究室ミーティング 開始

院試の勉強を始める

院試

研究テーマ決定,手法を練る

手法完成,実験始める、試行錯誤

実験結果出る,卒論書き始める

卒論提出

 

...お気づきでしょうか。

実験結果が出てから卒論完成まで1か月もありません

断っておきますがこれは相当ヤバい部類です。その1か月は本当にキツく、生きた心地がしませんでした。

こんなことになってしまった原因は私が

「開発」と「研究」の違いが分かっていなかった

からです。

次節で詳しく説明するのでみなさんはこうならないよう気を付けてくださいね。

 

↑ 研究の傍ら、専門分野の勉強もします。私の場合は「統計的機械学習」。

 

ここがポイント ~卒業研究は研究であって開発ではない~

工学系の研究とは

「先人たちの手法の問題点を解決する独自のアプローチを考え、それを実験で検証すること」。。。

このノリを体得するまで私はさまようことに。。。

 

研究室に配属され、最初に機械学習について勉強した後、私は公開されている方法の中から自分のデータに最も合っているであろう方法を適用しました。

 

「じゃじゃーん、犬と猫を70%の精度で分類!(ドヤァ これで卒業できるっしょ)」    

 

早速教授に結果を持っていくと

教授「うーん、君のやっていることは開発であって研究ではないんですよ」         

と。

「どういうことですか?」

教授「既にある方法を自分のデータに適用すること(=開発)なら、わざわざ大学で学ばなくてもプログラミングが得意なら誰でもできるでしょ。そうじゃなくて君のデータに適用したときどういう問題があって、それを今まで学んできたことを活かして君独自のアプローチで解決する、それこそが君のアカデミアへの貢献であり、研究というものですよ」

というわけで私は片方のセンサーが欠けているデータに対しては既存の方法で著しく精度が下がってしまう問題を、組み合わせ計算の仕方を工夫することで解決したのでした。そしてその部分こそが新規性であり、私の生み出した価値なのでした。

これから(工学系の)研究を始める皆さんも、

先人たちの手法の欠点は何で、それを自分はどう解決するか

を早めに意識すると良いかもしれません。

 

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普段の生活との両立

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