それでは私が卒業論文を制作し完成までに至った道のりについて詳しく説明しようと思います。
私の卒業論文の研究テーマは「黄鉄鉱含有土壌条件化におけるヨモギの生育に関する研究」でした。鉱山で鉱石を採掘すると、必ず黄鉄鉱土壌というものが地中から発生します。黄鉄鉱土壌は空気や雨水と接触することで強い酸性を示すため、採掘跡地は必ず客土(他の場所から中性の土を持ってくること)や覆土(中性、あるいは中和作用を持つ土を覆いかぶせること)といった作業を行います。その後それらの作業が施された土壌にもともとその場所で自生していた植物を段階的に植えることで緑化を促します。
通常上記のような過程を経て環境修復は行われますが、予算や地理的な側面により東南アジアやアフリカ諸国では覆土や客土が十分に行われていない劣悪な採掘跡地が存在します。そのような場所では植物だけでなく生態系全体が破壊されており、採掘跡地周辺に住んでいる人々にも健康被害が及ぼされています。緑化を行うことで植物が土を固定し土壌流出を防ぐことができるため、汚染された土壌が雨水で流され川に流入するような事態を防ぐことができます。
よって、黄鉄鉱含有土壌に含まれる重金属や酸にある程度耐性のあるヨモギについて研究することで、採掘跡地の緑化に対するヨモギの有用性について検討しました。
卒論の長さですが、表紙や目次もあわせて合計56枚でした。文字数は約3万5千字です。研究室にもよると思いますが、文系理系ともに2万字以上を目安としている場合が多く、理系はグラフや図を多く用いるため枚数が多くなる傾向にあります。
時期 | やったこと |
2022年4月ごろ 2022年9月ごろ 2022年11月ごろ 2022年12月ごろ 2023年1月中旬 |
1回目の実験に取り組む 9月までに実験を3回するがどれも失敗し満足のいく結果が得られない状況 研究も軌道に乗り、卒論で使用できそうな結果が出揃う 卒業論文の作成にとりかかる 見事完成! |
それでは卒業論文提出までのスケジュールについての詳細を説明します。今思い返してみると、大学院試験が免除だったので、他の同級生よりも研究に取り組み始めた時期は早かったように思います。しかし、4月から9月まで行った実験がすべて失敗し、満足のいく実験データを得ることができなかったため、結果的に卒業論文の制作がかなり遅れてしまいました。また、先行研究の事例が少なく、内容も工学ではなく農学の園芸学に近い内容であったため、担当教員の方はもちろんですが、農学部棟の研究室に直接訪問し、その研究室の学生や教員の方々から様々なアドバイスをいただきながら研究を行いました。
先行研究の論文として、研究室にかつて所属していた先輩方の卒業論文や修士論文を参考にしました。私と同じ研究分野を研究されてきた先輩方は少なく、日本でも採掘跡地のリハビリテーションについて研究している人はごくわずかであるため、研究の方針を決める際に苦労しました。その代わり担当教員の方がこの研究分野で博士号を取得された方なので、いつでも研究内容について相談できる環境にあったことは恵まれていたと思います。
卒論を書く際の留意点として3つほど紹介します。
・構成をメモしておく
いきなり卒業論文を書こうとすると気持ちが億劫になり、なかなかやる気が出ないと思います。まずは先輩の卒業論文や自分自身の研究ノートなどを参考に、構成や思いついたことを紙などに書いてまとめることをお勧めします。理由としては、卒業論文作成に取り組む際次々と書きたいことや忘れていたことなどを思いつき、結果的に脈絡のない文章や構成になってしまうことを防ぐためです。
・使いたい写真やデータをあらかじめ整理しておく
卒論に使うための図や写真、表などを事前にまとめておくと書きたいことが明確になり、作業効率も向上するのでお勧めです。
・なるべく早い時期から取り組んでおく
人によって卒業論文に取り組む時期は研究の進捗状況などによってばらばらであるとは思いますが、1月を過ぎると論文に加え試問会の資料作りにも追われることになるため、遅くても11月の中旬頃には取り組み始めることをお勧めします。「まだ実験データや結果がそろっていないから書くことがない」と悩む人もいますが、実験の目的や概要、背景となる緒論などは少なくとも書けると思います。最後に焦ってまとめて書こうとせずコツコツと早めに卒論作成に取り組みましょう。