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私の卒論ができるまで: 佐藤由菜(九州大学工学部・2023年卒): できるまでの道のり

九州大学の図書館でティーチングアシスタントとして働く院生が学部時代に卒業論文にどのように取り組んだか紹介します。

目次

初めに

  • 私の卒論シリーズ
  • 今回の先輩は佐藤由菜さん

 

できるまでの道のり

  • 卒論の内容と長さ
  • 最終提出までのスケジュール
  • ここがポイント

 

Q&A

  • 普段の生活との両立
  • 活用したツール
  • 研究は就活に役立つのか

 

終わりに

  • オススメ本
  • 後輩へのメッセージ

 

おまけ

  • 卒論の内容をもっと詳しく

このガイドの作成者

Profile Photo
佐藤 由菜
連絡先:
本ガイドは図書館TA(Cuter)として勤務した際に作成したものです。

勤務期間 :2024年4月~
作成時身分:大学院生(修士課程)
作成時所属:九州大学大学院工学府土木工学専攻

卒論の内容と長さ

卒論の概要

皆さん、天神や博多に遊びに行く際、どの交通手段を利用して移動しますか?ちなみに私は、1人で遊びに行く時は電車派なのですが、家族でお出かけする際は車で移動します。理由は簡単で、家族全員分の電車代はかなり高いから。。。1日遊びに行くのに移動だけで5000円近くかかるなんて正直やってられません。でも車で移動すると絶対についてまわる問題がありますよね?そう、「渋滞」です。天神一帯っていつ行っても渋滞していませんか?渋滞にはまると、遅刻しないか心配だし、トイレにも行けないし、しかもなんだかイライラしますよね。私はこの「渋滞」という問題を解決するための方法について研究をしました。

すごく分かりやすい言い方をすると、私の研究テーマは、「都心部での交通量を減らし、渋滞・大気汚染を改善することで、住民の効用(少し違いますが、ニュアンスは幸福度に近いものだと思ってもらえれば)を最大化したい!その条件として、最適なパーキングの利用料金はいくらなのか求めよう」というものです。下図は、試しに都心部の駐車場の利用料金を値上げしたらどうなるのかを示した図です。↓↓↓

 

上図のように、駐車料金を変動させると、それにともなって交通量も変動します。(天神の駐車料金があまりにも高かったら、途中で電車に乗り換えた方がマシだな~と思いますよね?)この仕組みを活かして、車利用から公共交通機関の利用へと住民の移動手段をシフトさせるための最適な駐車料金を導出しました。

 

卒論の分量

表紙~謝辞まで全て含めて43ページです。おそらく理系の卒論にしてはかなり少ない方です。私の研究の場合、グラフや表、写真がほぼ無く、大半が数式とそれを説明するための文章なので、ページを消費しなかったのだと思います。

最終提出までのスケジュール

卒論完成に向けての流れ

時期 やったこと 

学部4年 4~6月上旬

 

 

     6月中旬~7月中旬

 

     7月下旬~8月中旬

 

     8月下旬~10月

 

     11月~12月

 

 

     1月~2月上旬

 

 

     2月中旬

4月頭に研究室配属。

全員が国家公務員(総合職)試験を受けなければならない、とても変わった研究室なので、試験が終わるまで研究は免除。

 

どんな研究をやりたいか、助教の先生と話したり、論文を読んだりして探る。

 

院試勉強のため、研究は免除。

 

「教授にテーマを提案」→「却下される」→「修正する」→「もう一度提案する」の繰り返し

 

10月の終わり頃にテーマが決定。

モデル式の作成と卒論の導入部分(背景、目的、先行研究など)の執筆を進める。

 

12月終わりに中間発表(モデル式作成・データ収集が終わったくらい)

数値計算と論文執筆の残り。(かなり時間的にぎりぎりで、なんとか終わらせた感じでした。。。)

 

最終発表(試問会)

スケジュール表の中でも、特に自分の中で大きな決断になった「研究室配属」と「研究テーマ決定」について、ピックアップして詳しく説明します↓↓↓

 

 

研究室配属

私が研究室を選ぶ際に重要視していたのは、「自由度」「先生との相性」です。(もちろん、「興味のある分野に絞ったうえで」ですよ。最後にいくつかの研究室で迷ったときは、こんな基準で選ぶ人もいるんだ~くらいの軽い気持ちで読んでください!)

 

【自由度】

正直なところ、私は学部3年の時点では就きたい職業や研究したい内容が定まっていませんでした。なので、時間に融通が利き、就職活動や研究を自分のペースで進められる環境を重視しました。(今振り返ってみると、これが結構大事な視点だったと思っています。)結果として、かなり時間をかけて就職活動を進めたり、平日に趣味や講義の予定を沢山入れたりしたので、毎日の実験や企業との共同研究の予定が入りにくいような研究室を選んで正解だったと思います。ですが、企業と連携した研究を進めて推薦をもらい就職したいと思う学生にとっては、私のような研究室はベストとは言えません。ここに関しては各々の考え方があると思うので、自分の理想とする進路や時間の使い方に合った制度の研究室選ぶのが良いかなと思います。

  

 

【先生との相性】

興味や自由度で絞り込んだ研究室の中から、私は研究室にいる先生を基準に最後の1つを決めました。簡単に言うと、授業で知り合って仲良くなった先生がいる研究室を選びました。先生によって研究の方針(進め方やそこにかける熱量など)がだいぶ違うのはもちろんなのですが、「きちんとコミュニケーションがとれて相談がしやすい先生か」という視点はかなり大事だと思います。皆さんは、何もわからない状況で卒業研究に取りかかるわけなので、必ず周囲の人に報連相しながら進めていく必要があります。そういった時に、学生の声にしっかり耳を傾けて親身に相談に乗ってくれる先生であれば、こまめなやりとりに基づいて研究の質も上がっていくでしょう。同じ分野でも色々な先生がいますから、迷った時は研究についての相談にしっかり乗ってくれる先生がいる研究室を選ぶことをおすすめします!先生自身の研究の実績と、学生の研究に対する面倒見の良さはまた別の話です。研究室のHPだけでは分からない雰囲気をつかむために、事前に研究室を訪問しておくのも良いと思います。)

 

 

テーマ決定

テーマ決定までの流れは三段階に分かれると思います。

①大きな分野として、解決したいと思う社会課題を決める

②対象の社会課題に関する先行研究を読み、その分野でどのような研究が行われてきたか調査する

新規性・社会貢献性がどこにあるのかを説明できるようにテーマを決定する

 

【①大きな分野として、解決したいと思う社会課題を決める】

大枠を決めるときは、一旦自分の専門分野という枠を取っ払って、興味のある題材・改善すればいいなと思っている社会課題思い浮かべて、そこから話を広げていきます。(本当に興味のある題材を選ぶことができれば、研究が上手くいかない時にもモチベーション高く取り組めたり、就職活動の面接で熱を込めて話せるので、面接官に学業にきちんと打ち込んできた学生だなと思ってもらえたりと、様々なメリットがあります!)また、何も思いつかない時は、新聞やテレビのニュースから着想を得るのも1つの手です。今話題の社会課題や、それに対して企業や研究機関がどうアプローチしているのか、最新の情報が得られますからね。

これは卒業研究の過程すべてにおいて言えることですが、先生や先輩にこまめに報連相しながら進めることが本当に本当に重要です。

テーマも、自分一人で生み出すのは限界があるので、行き詰まったらすぐ相談、思いついたらすぐ報告を意識してください!最後に何もできていない状態になることが一番困るので、迷惑かもしれないと思わずに、ゼミの日以外でも遠慮なく相談しに行って良いと思います。

 

【②対象の社会課題に関する先行研究を読み、その分野でどのような研究が行われてきたか調査する】

興味のある社会課題を解決するために、今までどういった方法・内容の研究が行われてきたのか調べます。1つの課題に対して様々なアプローチがされているはずです。調査する際のポイントとしては、「まだやられていないアプローチ方法ややり残してある部分」「自分の研究に取り入れられる部分」(例えば、同じ手法で行う研究でも対象地域を変えれば異なる見解が得られないか、分析を行う際に用いるパラメータに新たな要素を組み込めないか、複数の研究で行っている内容を上手く組み合わせられないか等)です。

 

【③新規性・社会貢献性がどこにあるのかを説明できるようにテーマを決定する】

最終的には、新規性と社会貢献性が兼ね備えられているテーマでないと、研究として成り立ちません。特に新規性が難しいポイントだと思いますが、「こんな研究まるっきり見たことがない!」というテーマである必要はありません。というか、そんなテーマを思いつくのは、たかが学生の私たちには不可能です。先行研究との差は、手法や対象範囲、分析する際に考慮する項目など、ちょっとしたことで良いんです。ただ、その研究をなぜやる必要があるのか、どういう点で世の中に貢献できるのかを説明可能な状態にすることが大切です。

 

 

いかがでしょうか?研究室や研究テーマを決めることは、その後の進路や生活そのものに直結するかなり大きな決断ですが、考えることは意外とシンプルですよね。何にせよ、1人で考えると考えるだけよく分からなくなってくるので、誰かに相談したり何日かおいて考え直してみたりしてみることが大切だと思います。

ここがポイント

「専門分野」にとらわれない

テーマ設定の際、土木所属なので、初めは漠然と災害に関する研究をやろうかな~と思いながら先行研究を探していました。でもやっぱり、「なんとなく」ではなく、自分が本当に興味の持てるテーマでないと長期間モチベーションを保つのは難しい気がします。私はその初期段階で時間を使ってしまい、後から少し焦ったので、始めからもっと広い視野で考えていれば良かったなと思います。結局、交通と経済の中間のような研究をすることになりましたが、色々な分野を融合させたような研究の方が出せる学会の種類も多岐にわたるので、そういう意味でも柔軟に考えてみることをオススメします。

 

とにもかくにも報連相

何度も言いますが、先生や先輩、同期など、絶対に周囲とコミュニケーションをとりながら進めてください。向こうから声をかけてもらうのを待つのではなく、自分から積極的に頼るよう努めてください。研究は、長期間かけて取り組むものなので、最後の最後で思うように進んでいなかったらもう取り返しがつきません。自分のためにも相手のためにも、余裕があるうちからこまめに進捗報告をしたり、ちょっとしたことでも相談したりして周りを頼ってください!

  

 

中身だけでなく見せ方も大事

良い提案をしていても、スライドがごちゃごちゃしていて見づらかったり説明が回りくどかったりすると、先生方は見る気を失ってしまいます。また、良い研究内容なのにポスター作りが下手で学会で賞を取り逃がすなんてこともあるかもしれません。そんなしょうもないことで損をしないように、成果物が完成した際は複数人に見せてみるのが良いと思います。実際、私もテーマを教授に提案する際にきちんと伝わる内容になっているのか、ゼミの前日に同期同士で発表を見合ってスライドや言い回しを修正してからゼミ当日にのぞんでいました。

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普段の生活との両立

活用したツール

研究は就活に役立つのか