インターネットが普及した現在、我々大学生をはじめとした若い世代で、「テレビなんて見ない」「新聞も読まない」という人が増加しました。
しかし、見ないからといって、テレビをはじめとしたマスメディアに関する知見が全く役に立たなくなったかといえば、そうとも限りません。
例えば、インターネットにおいてどのように情報が拡散していくのか、その負の側面である、「炎上」はなぜ起こるのかという疑問を解決する糸口は、マスメディアの影響力を調査し、メディアと人間との関係について議論を重ねた、マス・コミュニケーション研究によって生まれた概念に隠れています。そしてその疑問にアプローチすることで、我々人間とメディアのあり方という根本的な問いへと思考をつなげることができると筆者は考えます。
以下ではマス・コミュニケーション研究の中から、「オピニオン・リーダー」および「沈黙の螺旋仮説」の概念とその概念が生まれた経緯を紹介し、インターネット時代といえる現代においても役に立つマス・コミュニケーション研究について紹介します。
古い学問だと思われるかもしれませんが、過去の研究成果から現代の問題について考えるのもまた学問です。少しの間、お付き合いください。
マス・コミュニケーション研究は両大戦間期から始まり、1940年代以降アメリカを中心に興隆した学問です。新聞やラジオなど、一度に不特定多数へ情報を伝達するマスメディアが戦争に利用された時代背景があり、そこから”マスメディアは人々にどのような影響を与えるのか”という大きな問いに実証的な調査を通して挑んだのが、マス・コミュニケーション効果研究と呼ばれる学問領域です。
一般にマス・コミュニケーション効果研究の潮流は3つの時代に分けられています。
1.20世紀初め~1930年代末―強力効果説
2.1940~1960年代初頭―限定効果説
3.1960年代後半~―新強力効果説
「〇〇効果説」というのは、その時代に主流となったマスメディアの効果に関する見解です。簡単にそれぞれの研究背景と見解について紹介すると、こんな感じになります。
1.ローズヴェルト(アメリカ)の炉辺談話やヒトラー(ナチスドイツ)の演説をラジオ放送で流すことによって、人々が戦争に自ら協力するようになったことに関する研究
→マスメディアの効果って人々を操作できるほどすごい!
2.強力効果説を実証するつもりで調査したが、思ったような調査結果は得られなかった
→あれ?マスメディアの効果ってそんなに強くない…なら実際その効果ってどんなもの?
3.限定効果説は短期的な効果についての研究が主だったが、長期的にみた効果についての研究がなされるようになった
→確かにマスメディアには短期的に人々の意見を変える力はないが、でも長期的にみたら人々の意見を決定するほど強力な効果を持ってるんじゃないの?
そのなかで今回紹介するのは2の時代に提唱された「オピニオン・リーダー」と、3の時代に提唱された「沈黙の螺旋仮説」という2つの概念です。これらの概念とそれが生まれた背景について少し詳しくみていきましょう。