石油開発企業とは第2章でもふれましたが、石油業界の上流部門に位置し石油の探鉱・開発・生産をメインに事業展開する企業です。国内において石油開発事業をメインに取り組む代表的な石油開発企業は2社ほど存在していますが、大手石油元売り企業3社も1つの部署単位で、あるいは事業子会社として石油開発に取り組んでいます。日本国内で石油開発事業に取り組む企業が少ない理由としては、個人的に以下の2つが考えられます。
国内で石油開発事業に取り組む企業は少なく、さらにBtoB産業であるため私たち消費者にとって石油開発企業は馴染みの薄い存在になっています。全くの別業界である石油元売り企業と石油開発企業の違いがわからず、就活時一緒くたにそれらを石油企業ととらえる事例が発生してしまうのは「企業の少なさ」と「馴染みの薄さ」にあると考えています。よって本ガイドは飽くまでも就活生に向けたガイドであるため、石油開発企業をよりイメージしやすいよう他業界の例を使いながらもう少しわかりやすく説明します。
就活サイトや就活に関するSNSなどを通じてよく目にする人気業界が不動産デベロッパーです。不動産デベロッパーの仕事は一言でいうと建築物の施工や街づくりに伴う開発策定や完成後の運営です。収入源は主にビルや商業施設の賃料(テナント料)であり、これらは皆さんが普段払っている家賃と同じようなものと考えてください。不動産デベロッパーを突然引き合いに出した理由は、この不動産デベロッパーと石油開発は共通点があり、個人的には石油開発企業を石油業界のデベロッパーととらえているからです。例えば大手の不動産デベロッパーは日本各地の一等地に商業施設やビルを所有している一方、大手石油開発企業も日本、あるいは世界各地に油田の権益を所有しています。収益モデルが似ており、不動産デベロッパーは一部「土地」を貸すことで得られる賃料で、石油開発企業は油田というある意味「土地」から得られる油ガスを石油元売り会社や電力・ガス会社に売ることで収益を得ています。
さらに収益モデルだけでなく、産業の位置づけも少々似ています。不動産デベロッパーはビルや商業施設を所有していますが、それらを施工する技術力を有していないため、ゼネコン企業に発注しビルや商業施設を建ててもらいます。石油開発企業も油田権益は所有していますが、石油を掘る技術力はあまり無いため、掘削コントラクターに発注して石油を掘ってもらわなければなりません。つまり両方とも外販できる技術力にやや乏しいため、不動産あるいは油田の資産価値が下落すると一気に危うい状況へと追い込まれてしまいます。
他にも似た業界として商船会社などがあり、これらの企業を私は発注者側企業ととらえています。昨今多くの就活生にとって総合商社やコンサルよりも、この発注者側企業の人気が高まっているような気がします。しかし、上記のように発注者企業側にも特有のリスクがあるということを念頭に、就職活動を進めてほしいと思います。
就職活動の観点で石油開発企業を見たところで、本コーナーでは石油開発企業のビジネスモデルを説明します。
石油開発事業はおおむね以下の4段階の作業に分かれており、それぞれの段階ではどのようなことをするのかを簡単に解説します。
1. 準備段階 → 2 . 探鉱段階 → 3 . 開発段階 → 4 . 生産段階
まず準備段階とはどの国でどのような鉱区(油田を掘ったり探したりできる場所)を獲得するべきか計画を立てて鉱区を入札し、条件交渉と鉱区契約を結ぶ期間です。2つ目の探鉱段階とは地震探査や試掘井の掘削などの地質評価作業を行い、商業化可能な石油埋蔵量の発見を試みる期間です。探鉱段階において商業量の石油資源を確保できると認められ、3つ目の開発段階で開発移行が決定し、資機材とサービスの調達や石油プラットフォーム(石油を掘ったり生産したりする施設)の建設が行われます。4つ目の生産段階は文字通り石油を生産する期間です。
上記4つの段階が順調に進んだ結果、生産が開始されるまでに通常7~10年ほどかかります。特に探鉱期間は多くの年月を要しますが、この探鉱段階で商業化可能な石油の埋蔵量を発見できない場合もあります。石油開発の第一歩である探鉱段階ですが、一歩も踏み出せずに頓挫してしまうプロジェクトも非常に多いのが現実です。よって石油開発事業はある程度リスクがあることは承知の上で、長い目でビジネスを進めていくことが重要です。
因みに生産期間ですが、日本や欧米諸国の場合経済的に生産可能な限り操業を行うことができます。しかし、中東諸国など石油関連の収入が国家経済の柱となっている国々では、通常一定の生産期間が経過すると鉱区と操業権を返還する取り決めとなっています。