実験を進めると、ある遺伝子の配列を調べなければいけないことが多々あります。そんな時に役に立つのがNCBIのwebページです。ここで興味のある遺伝子について検索すると、様々な情報を得ることができます。私は遺伝子の配列として、RefSeq(NCBI Reference Sequence)を使用することが多いので、そちらを紹介します。
まずはじめに、検索窓の左側にあるタブから”Gene”を選択し、興味のある遺伝子名を入力します。ここでは、例として著名ながん抑制遺伝子の1つであるp53を扱います。
“Search”をクリックすると、様々な生物のp53遺伝子情報が表示されるので、自分の扱っている生物の遺伝子名をクリックしてください。(ここではマウス(house mouse)のデータを使用します)
新たに表示されたページには染色体位置、相互作用するタンパク質などの情報が記載されていますが、下にスクロールしていくと以下のような欄が出てきます。
ここから、遺伝子の配列やアミノ酸の配列を調べることができます。今回は遺伝子配列を調べたいので、”NM”から始まる数字をクリックしましょう。
(調べたい遺伝子に複数のバリアントが存在する場合、どれを選ぶかは”Description”の欄を参考にするといいと思います。非翻訳領域に一部配列の違いがあるなど。)
1番下までスクロールすると、遺伝子配列が表示されます(図左)。もし、ATGから始まる翻訳領域のみに着目する場合は、少し上に戻って”CDS”をクリックすると(図中)、タンパク質へと翻訳される領域のみを強調表示させることができます(図右)。
p53はがんに関連する遺伝子の中で最も有名な遺伝子の1つです。p53はアポトーシス(細胞死)を引き起こし、人体に害を及ぼすがん細胞を排除することが知られています。もしp53遺伝子に変異が入り正常に機能できなくなれば、がん細胞を排除できなくなり、がんの進行を止められなくなります。このような理由からがん抑制遺伝子とされています。実際に、p53の変異は肝がん、乳がん、肺がん、大腸がんなど、様々ながん種で確認されています。さらには、「リ・フラウメニ症候群」という遺伝性疾患があるのですが、この家系の人は小児から30代という若さで脳腫瘍や白血病など様々ながんを発症し、生殖細胞系譜にp53の変異が存在することが確認されています。
p53は転写因子として機能することがこれまでに明らかになっています。転写因子とはDNAに結合することができるタンパク質で、標的遺伝子の発現量を調節することができます。p53はがん細胞の増殖や、血管新生に関わる遺伝子が発現しないようにブレーキをかける役割を担っています。上述のアポトーシスを誘導する機能や、ブレーキとしての機能が失われることでがんが発症します。