科学の本質は、仮説の検証を通して知識を得ることにあります。
そのため、動物の行動に対する「なぜ」を科学的に解明する場合、
その「なぜ」に対する答えの「仮のアイデア=仮説」をまず立てます。
「仮説」はあくまでも ”仮の説” にすぎないため、
この「仮説」が正しいかどうかを検証する必要があります。
しかし、「仮説」そのものを検証することはできません。
そこで、「仮説」が正しければ必ず正しくなる「予想」を立てます。
この「予想」を観察や実験によって検証していきます。
「予想」が間違っていれば、仮説は間違っていると考え、切り捨てます。
科学では、この「仮説」の切り捨てを繰り返して真理に近づいていきます。
(ややこしいのですが、「予想」が正しくても「仮説」が正しいとはいえません)
例として、
野外でバッタを捕まえた時に、口から茶色い液体(嘔吐物* )が出る
瞬間を観察したとしましょう。
口から茶色い液体(白矢印の先)を出すトノサマバッタ
この茶色い液体を出す行動にはどのような役割(機能)があるのでしょうか。
この行動はバッタが捕まった時に観察できるので、
という「仮説」を立てることができます。
ただし、この「仮説」を直接検証することはできません。
なぜなら、私たちが確認できるのはある時、ある場所で見つけたバッタと鳥の関係だけで、
地球上に存在するすべてのバッタと捕食者の普遍的な関係を見ることはできないからです。
そこで、「仮説」が正しい時に必ず正しくなる「予想」を立てます。例えば、
という予想を立てることができます。
このように予想を立てたら、次に実験や観察によって確認していきます。
* バッタが口から液体を出すことは英語で regurigation(吐き戻しの意味)と呼ばれています。
これは最近食べた植物、消化液、唾液分泌物から構成されています。
(Chapman 1990. Biology of Grasshoppers より)
<さらに詳しく>
動物の行動に対する「なぜ」や「仮説」は、どのようにして生みだせばよいのでしょうか。
よくある方法は2つあります。
1つは先行研究(本や論文)を読むことです。
本や論文を読んでいて気になった点が研究対象の「なぜ」や「仮説」になります。
もう1つは、野外に実際に出て、生き物を観察することです。
じっくり観察していると、「なぜ」が生じることはよくあります。
この時に大切なのは、その「なぜ」を必ずメモに取っておくことです。
メモがあれば後から見返すことができ、ただの思いつきを「仮説」へと
膨らませる機会がたくさんあります。
また、日ごろからメモをとる習慣を身につけておけば、
実験・観察をする際に、情報を漏らさずに入力しやすくなります。
<さらに詳しく>