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素粒子物理学入門: 素粒子の世界へ

一番小さい物って何だろう?素粒子物理学はそんな素朴な問から始まる学問です。目に見えないミクロの世界にご招待。

素粒子の世界へ

イントロで原子は最小構成単位かという問いを投げかけましたが、ある意味で答えは出ています。

答えは「NO」、原子は物質を構成する根源的な存在ではありません。

物理によると、この世の最も小さな構成単位は素粒子と呼ばれています。

素粒子とは「最も根源的(素)な粒子」という意味の言葉です。

原子もこの素粒子が何個か集まってできた存在です。

では、その大きさはどのぐらいでしょうか。

Fig1. 大きさ比較

(『ひっぐすたん HiggsTan』https://higgstan.com/ より)

最も軽い水素原子の大きさはおよそ1×10^(-10) mです。

一円玉の大きさが2cmですからその2億分の1程度の大きさになります。

このレベルで既に、私達が学校で使うような光学顕微鏡では観察することができません。

この大きさを見るには電子顕微鏡という装置が必要になります。

これをさらに拡大していくと原子核が見えてきます。原子核の大きさはおよそ10^(-14) mから10^(-15) mのオーダーです。

オーダーというのは物理や工学の分野でよく使われる言葉で、「大体このぐらいの桁の大きさ」という意味です。

さらにこれを拡大してみると、陽子と中性子が見えてきます。歴史的にはこれらが素粒子ではないかと考えられたこともあります。

陽子、中性子の大きさはおよそ10^(-15) mのオーダーです。

一般的に聞き馴染みがあるのはこの辺りまででしょうか。

これをさらにさらに拡大すると、クォークという点状粒子が"見えて"きます。

 

クォークの大きさは定かではなく、少なくとも10^(-15) mよりも小さいということしか分かっていません。

この数字は人間の観測技術の限界を反映しています。

ここではクォークのことを"点状粒子"と表現しましたが、実際に誰かが直接見て観測したわけではありません。

クォークの大きさには深淵な問題が内在しており、今も盛んに研究されています。

現在、クォークよりも小さな構成単位は確認されておらず、素粒子であると考えられています。

しかし、素粒子に含まれるのはクォークだけではありません。他にもレプトンゲージ粒子と呼ばれる物もあります。

素粒子の仲間たち

さて、素粒子がとてつもなく小さい粒子であることはわかりましたが、現在確認されている素粒子にはどんなメンツがいるのでしょうか?

ここでは標準模型[注1]にのっとって紹介していきたいと思います。

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Fig2. 標準模型の基本粒子 (『ひっぐすたん HiggsTan』https://higgstan.com/standerd-model/ より引用)

まずはクォーク、クォークにはアップチャームトップダウンストレンジボトムの6種類があります。

アップ、チャーム、トップクォークの電荷は2/3で、ダウン、ストレンジ、ボトムクォークの電荷は-1/3です。

よく見るとクォークはそれぞれの種類で3人づついますね、これはクォークが"カラー"という自由度を持つことを反映しています。

この自由度で分割して最小構成単位とすることはないので注意が必要です。

次にレプトン、レプトンには、エレクトロン(電子のことです)ミューオンタウオン電子ニュートリノミューニュートリノタウニュートリノの6種類があります。

エレクトロン、ミューオン、タウオンは-1の電荷をもっていますが、ニュートリノは電荷0です。また、ニュートリノは質量を持たない素粒子です[注2]。

 

次にゲージ粒子です。

ゲージという名前はこの粒子の振る舞いがゲージ理論というフレームワークによって記述される事に由来しています。

ゲージ粒子は力を伝える粒子で、フォトン(光子のことです)は電磁気力を、グルーオンは強い力を、ウィークボソン(Zボソン、Wボソンの総称です)は弱い力を伝えます[注3]。

ちなみに標準模型の中に重力を伝えるゲージ粒子は登場しません。これについては後述したいと思います。

 

標準模型に登場する粒子たちを見ると、クォーク・レプトンが縦3列にⅠ・Ⅱ・Ⅲと別れていることがわかります。

これは「世代」といわれるもので、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲはそれぞれ第一世代・第二世代・第三世代と呼ばれています。

この世代構造の起源は明らかでなく、現在も精力的に研究が進められています。

[注1]重力を除く電磁気力、弱い力、強い力を包括的に記述します。ほとんどの実験結果を良く説明し、現代素粒子物理学において最も成功を収めている理論の一つです。

[注2]1998年東京大学の梶田先生らによって、ニュートリノは実は質量を持っていることが実験的に証明されました。これを標準模型で説明することはできず、それを超える物理の必要性を示唆しています。

[注3]物理学ではすべての力は四つの基本的な力、「重力」「弱い力」「電磁気力」「強い力」に還元できると考えられています。強い、弱いなんてついていますが、れっきとした正式名称です。