以上、4つのまちづくりの成功例について概観してきましたが、如何でしたでしょうか?
どの自治体も、細かい背景事情は異なっているとはいえ、かつての危機を巧みなアイデアや実行力で克服してきました。
今後、地方のますますの疲弊が予想されるなかで、こうしたまちづくりの必要性は否応にも高まっていくことでしょう。
*
そこで、こうした成功事例から私たちは何を学びとれるのか、まちづくりの成功に必要な要素とは何か、少し考えてみましょう。
まずはじめに見えてくるのが、程度の差こそあれ、成功事例では住民・行政・NPO・企業など様々な主体がまちづくりという目標に向けて協力し合っているということです。
それぞれの主体には得手不得手があります。安心院の事例において、法律の壁を乗り越えるべく行政が活躍したことなどは良い例でしょう。
多様な主体の協働がまちづくりの成功には欠かせません。
そのほかに見えてくる共通点はないでしょうか?
ひとつ思い当たるのが、「キーパーソン」の存在です。まちづくりの成功の裏には、巧みなアイデアや類稀なる実行力を備えた特定の個人の姿が見え隠れします。
羽咋市神子原地区の事例などは、その典型と言っていいでしょう。ここでは、市の公務員である高野さんが縦横無尽の大活躍を果たしました。
*
こうしたまちづくりにおけるキーパーソンの担い手として、よく使われる言い回しがあります。
それは、「よそ者、わか者、ばか者」というフレーズです。
よそ者は、地域のしがらみにとらわれず、また地域の中にいてはわからない地域の魅力を発見することができます。
わか者は、バイタリティにあふれ、地域の住民を先導していく存在です。
最後のばか者は、これはもちろん「いい意味での馬鹿」ということで、常にポジティブに、明るく元気に周囲を引っ張っていくリーダー像です。
こうしたキーパーソンと、キーパーソンを支える周囲の支援という環境が、まちづくりには欠かせません。
ひとあっての組織、ひとあってのまちづくりなのです。
ここで紹介した事例は、全国各地で行われているまちづくりの事例のほんの一握りです。
独創的で興味深い事例はこれらの他にもたくさんあります。自分のまちの取り組みを調べてみるのも面白いかもしれません。
*
将来、公務員として、あるいはNPO職員や企業の社員として、まちづくりに携わっていく人もいるかと思います。
また直接的に関わることはなくとも、皆さんもどこかのまちの住民である以上、地域のまちづくりに無縁である人はいません。
そうした皆さんが、このガイドを読んで、まちづくりに多少なりとも興味を持っていただけたら幸いです。