ここは少しアドバンスの知識です。まずは右の分類をしっかり押さえてから見てみて下さい^^
実際の臨床では代謝性の変化のみだけでは無く、他の酸塩基平衡異常が合併していることもある。
この二つを見分けるために”代償性変化の予測範囲の計算式”というものがある。
呼吸性アシドーシス:
△[HCO3-]=0.35×△PaCO2±3
(急性期変化はこの1/2)
呼吸性アルカローシス:
△[HCO3-]=0.40×△PaCO2±3
(急性期変化はこの1/2)
代謝性アシドーシス:
△PaCO2=1.2×△[HCO3-]±5
代謝性アルカローシス:
△PaCO2=0.7×△[HCO3-]±5
△は正常値との差を示しており、計算で求めた予測値を正常値に加えた範囲に実測値がおさまっていれば、代償性の変化であり、おさまれなければ酸塩基平衡の異常が合併していることとなる。
タンパク質代謝により生じた不揮発性酸は、腎臓において塩基(HCO3-)の再吸収、および酸(H+)の排泄を通じて処理されています。
これらの機構に乱れが生じると、代謝性アシドーシス、代謝性アルカローシスをきたします。
呼吸性アシドーシスはCO2の排泄が十分ではなく体内に蓄積された結果、炭酸、したがってH+が増加することによっておこります。
これは呼吸が低下し、肺胞のガス交換が完全に行われない場合、あるいは肺のガス交換が十分でないのに組織内のCO2産生が促進、またはCO2吸入が行われる場合に認められます。
原因としては
①呼吸中枢の障害…薬剤、慢性高CO2血症におけるO2吸入、脳神経障害、心停止
②呼吸筋と胸郭の異常(拘束性肺胞低換気)…重症筋無力症、ポリオ、周期性四肢麻痺、胸郭脊椎変形、極度の肥満
③肺におけるガス交換の障害(閉塞性低換気)…肺水腫、肺炎、呼吸窮迫症候群
④人工的CO2吸入
などがあげられます。
検査値上、呼吸性アシドーシスでは、一次性のPaCO2の増加によりpHが下がり、代償性にHCO3-が増加し正常pHに戻ろうとします。
そのため呼吸性アシドーシスでは
PH ↓ PaCO2 ↑ HCO3- ↑ となります。
呼吸性アルカローシスは肺におけるガス交換が病的に促進した過呼吸の場合に認められる。体液中のCO2が必要以上に排泄される結果PaCO2の減少、炭酸の減少、したがってH+が減少することになります。
原因としては
①低酸素血症…A-Cブロック症候群、無気肺、肺塞栓、高地生活、高山病、うっ血性心不全、先天性心疾患(左右シャント)
②心因性過呼吸
③中枢神経障害…くも膜下出血、呼吸中枢障害
④代謝亢進…発熱、甲状腺機能亢進症、貧血
⑤肝硬変
⑥グラム陰性桿菌敗血症
⑦サリチル酸中毒
⑧運動
などがあげられます。
検査値では、呼吸性アルカローシスでは、一次性のPaCO2の減少によりpHが上がり、代償性にHCO3-が減少し正常pHに戻ろうとします。
そのため呼吸性アルカローシスでは
PH ↑ PaCO2 ↓ HCO3- ↓ となります。
代謝性アシドーシスのは不揮発性酸が増加し、塩基が不足した状態です。
原因としては
①外からの酸の投与…薬物中毒により代謝過程で酸を生じる
②不揮発性酸の過剰産生…ケトアシドーシス(糖尿病性、アルコール性、飢餓)、乳酸アシドーシス
③酸(H+)の排泄障害…Ⅰ型尿細管性アシドーシス、Ⅳ型尿細管性アシドーシス、腎不全
④塩基(HCO3-)の再吸収障害…Ⅱ型尿細管性アシドーシス、アセタゾラミドの服用
⑤消化管からの塩基の消失…下痢
などが挙げられます。
検査値では、代謝性アシドーシスでは、一次性のHCO3-の減少によりpHが下がり、代償性にPaCO2が減少し正常pHに戻ろうとします。
そのため代謝性アシドーシスでは
PH ↓ PaCO2 ↓ HCO3- ↓ となります。
代謝性アルカローシスは不揮発性酸が減少し、塩基が過剰となった状態です。
通常、過剰な塩基は容易に尿中へ排泄されるため、代謝性アルカローシスになりにくいが、塩基の再吸収が亢進、または塩基の分泌が低下した状態では塩基が体内に保持されてしまうため代謝性アルカローシスが維持されます。
代謝性アルカローシスの原因としては
①塩基の投与…重炭酸ナトリウム投与、輸血(クエン酸塩)、胃薬・下剤
②塩基の再吸収亢進…体液量の減少、低K血症
③塩基の分泌低下…Cl-欠乏、腎機能低下
④腎以外からの酸の喪失…低K血症による細胞内へのH+のシフト、嘔吐、胃液ドレナージによる胃酸HClの喪失
⑤酸の排泄過剰…利尿薬、アルドステロン過剰
検査値では、代謝性アルカローシスでは、一次性のHCO3-の増加によりpHが上がり、代償性にPaCO2が増加し正常pHに戻ろうとします。
そのため代謝性アルカローシスでは
PH ↑ PaCO2 ↑ HCO3- ↑ となります。