ここからは「5質問法」を使いながら実際に波形を判読していってみようと思います。
今回取り扱う頻脈の波形は
・心房細動(Af)
・心房粗動(AFL)
・発作性上室頻拍(PSVT)
・心室頻拍(VT)
・洞性頻脈
の5つです。
心臓の刺激伝導系は洞結節→心房→房室結節→His束→右脚・左脚→Purukinje線維の順となっています。
正常では洞結節(ペースメーカー細胞)の興奮が心房を伝わり房室結節に到達します。
続いてHis束、右脚・左脚、Purukinje線維を経て心室筋に興奮が伝わります。
正常では洞結節がペースメーカーとなり正常な心拍のリズムを形成します。
不整脈は刺激伝導系から心房筋、心室筋への興奮伝導の異常や興奮発生の異常などによって発生してきます。
まずは5質問法で見ていくと
心拍数 | 100/min以上 |
リズム | 不整 |
P波 | f波(フィブ波) |
QRS波 | narrow |
P-Q関係 | 不明 |
となります。
心房細動は心房が不規則・無秩序に興奮し、ときおり心室へと興奮が伝わる状態です。
小さいP波(f波:フィブ波、細動波)のあとにnarrow QRS波が見られ、P-QRS関係は不明で脈は不整となっています。
RR間隔はまったく不規則というのもポイントの一つです。
(350〜700/minにも達する心房興奮(f波)の大部分は房室結節でブロックされ、数回に一回の割合で心室に伝わる。ランダムに伝わるため心室の興奮は不規則となりRR間隔は不整となります。)
5質問法で見てみると
心拍数 | 100/min以上 |
リズム | 整 |
P波 | F波(鋸歯状波) |
QRS波 | narrow |
P-Q関係 | F波とQRS波の関係は一定。3:1や4:1など |
心房細動と異なり、比較的に心房が規則的に興奮するが頻回であるため、時折しか心室に興奮が伝わりません。
F-QRS波の関係は一定であることが多く、3:1や4:1などになります。RR間隔は規則的になります。
心房粗動では刺激が心房内をぐるぐると回るリエントリーが生じている状態となっています。
心房は実際に収縮していますが、心房興奮のすべてが心室に伝導されず2:1や4:1など規則的な比率で心房興奮が伝導されています。
心拍数 | 100/min以上 |
リズム | 整 |
P波 | あるが不明のことも |
QRS波 | narrow |
P-Q関係 | リズムは整 |
心房内を興奮がぐるぐる回るリエントリーが原因となることが多いです。P波は存在しますが、QRS波に隠れて見えないこともあります。
心房内および房室結節付近にできたリエントリー回路が原因となります。1分間で150〜250程度の頻繁な興奮が発生し、心臓全体がそのリズムに従って異常に速く拍動している状態です。
心拍数 | 100/min以上 |
リズム | 整 |
P波 | 不明 |
QRS波 | wide |
P-Q関係 | 不明 |
心室に興奮が発生し規則的・頻回に心臓が動いている状態であり、致命的な心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(puksekess VT)に移行することもあります。
心室に発生した異所性興奮が旋回すること(リエントリー)や心筋細胞の自動能が亢進することで発生します。心房は自分のリズムを刻んでいるため原則P波は存在しますが、変形したQRS波に埋もれてしまいほとんどの場合確認できません。
心拍数 | 100/min以上 |
リズム | 整 |
P波 | ある |
QRS波 | narrow |
P-Q関係 | 関係は一定。リズムは整 |
洞性頻脈は洞結節からの放電により発生するもので、刺激伝導系としては正常な流れを示します。波形も心拍数が多い以外は正常となります。
洞性頻脈の原因は心臓以外が原因であることが多く、発熱、貧血、出血、運動などの全身症状である。原疾患の除去が重要となります。