ここからは「5質問法」を使いながら実際に波形を判読していってみようと思います。
今回取り扱う徐脈の波形は
・1度房室ブロック
・2度房室ブロック(Wenckebach型)
・2度房室ブロック(MobitzⅡ型)
・3度房室ブロック(完全房室ブロック)
の4つです。
心臓の刺激伝導系は洞結節→心房→房室結節→His束→右脚・左脚→Purukinje線維の順となっています。
正常では洞結節(ペースメーカー細胞)の興奮が心房を伝わり房室結節に到達します。
続いてHis束、右脚・左脚、Purukinje線維を経て心室筋に興奮が伝わります。
正常では洞結節がペースメーカーとなり正常な心拍のリズムを形成します。
不整脈は刺激伝導系から心房筋、心室筋への興奮伝導の異常や興奮発生の異常などによって発生してきます。
心拍数 | 60/min未満 |
リズム | 整 |
P波 | ある |
QRS波 | narrow |
P-Q関係 | PQ間隔延長 |
房室結節の異常により心房から心室への興奮が遷延しており、PQ間隔(>0.20sec)の延長が見られます。
心房から心室への興奮自体は伝わっており、P波とQRS波は1:1で出現しています。
心拍数 | 60/min未満 |
リズム | 不整 |
P波 | ある |
QRS波 | narrow |
P-Q関係 | 徐々に延長し、QRS波脱落 |
房室結節の異常によりPQ間隔が徐々に延長し、その後1回QRS波が脱落します。1心拍脱落後は、またQRS波が出現し、PQ間隔も正常化します。
その後また徐々にPQ延長がおき、QRS波が脱落する、というように繰り返しとなります。
たまに心房の興奮が心室に伝わらない時があり、P波とQRS波は1:1対応していません。
心拍数 | 60/min未満 |
リズム | 不整 |
P波 | ある |
QRS波 | narrow/nide |
P-Q関係 | PQ間隔は正常。QRS波は突然脱落 |
障害部位はHis束以下であることが多く、心房から心室への興奮伝導が突然途絶えています。
波形上ではWenchebachと比べてPQ間隔は正常ですが、突然QRS波が脱落します。
2回以上QRS波が脱落するものを高度房室ブロックといいます。
また高度房室ブロックへ移行する可能性は高く、突然死を起こすこともあるため治療としてペースメーカーの植え込みを行うことが多いです。
心拍数 | 60/min未満 |
リズム | PP間隔、RR間隔はそれぞれ整 |
P波 | ある |
QRS波 | narrow/wide |
P-Q関係 | それぞれが独立して出現 |
刺激伝導路の異常により、心房から心室に全く刺激が伝わらない状態で、それを代償するために心室の自動能が働いています。
波形上では心房の興奮を表すP波の後に、心室興奮のQRS波が続かず、補充調律としてのQRS波が独立して見られます。
(P波とQRS波がそれぞれのリズムで出現します。)
Adams-Stokes発作や心停止、突然死をする可能性があり、ペースメーカーの植え込みを行うことが多いです。